今の世の中、社会のシステムをうまく利用する連中の勝ち。
ヨガで一緒の友人の隣人夫婦は、二人とも四十台になったばかり。夫の方は、離婚した前妻との間に高校生の子供がいる。ヨットを二艘も所持し、夫の趣味のバイクや車が車庫やドライブに数台並び、夏はキャンピングカーでしょっちゅうあちこち出かけている。大きな家に住んでローンも高いだろうに、なんとも豪勢な暮らしである。
いったいどんな仕事をしているのだろうと興味があったので、友人に尋ねてみたところ「あの夫婦は二人とも、Stress Leaveで休職中なのよ」
なんでも夫のほうは、数年前に6週間の長期出張に出たが家族と離れて住む寂しさで睡眠障害が出て、帰宅してからも仕事に身が入らないので「ストレスにより精神的、さらには身体的なダメージを受けた」という医師の診断をもらい、職場でそれが受理されて以来三年間、病気休職中だとか。休職中は減額ながらも給料は出る。それにくわえて療養保障も出るため、普通に働いているより結果的に稼ぎが良い。
妻のほうは妻のほうで、別のアメリカ資本の店舗勤務だった。一昨年、別の州に住む両親がたずねてくることになり、上司に二週間の休暇願いを出した。が、すでに彼女はその時年休をすっかり使い果たしていたため、上司は断った。そこで彼女は「自分の親と一緒に十分な時間を過ごせないストレスから首の痛みが出て、職場で仕事が続けられない」という医師の診断をもらい、それからずっと休職中。やはり減額ながら給料はもらっている。精神カウンセラーにかかっているが、その費用も保険から出ている。
どうりで、二人ともいつも遊び歩いているわけだ。
私は友人に「そんな虫のいい話が通るの?」と聞いた。
六十台の彼女は、「私の若いころには、Stress Leaveなんて聞いたことなかったわよ」と言う。
この夫婦のもっかの悩みは、「早期退職を実現したいのだが、書類がなかなか通らない」ことだそうだ。
この夫は、仕事にからむストレスで仕事ができなくなったことを理由に労災申請をした。労災が認められて病気を理由に退職すれば、退職金が定年まで勤めた分出るし、すぐに恩給も出る。このあと一生困らないだけのお金が、働かなくても毎月振り込まれるのだ。あの若さで、毎日が日曜日。しかし、さすがに労災認定は何度も書類落ちしているらしい。
「労災が認められないストレスで、日常生活がうまくおくれない」という理由で、この男は今、精神カウンセラーに通っているという。キャンプだ、バイク乗りだ、海遊びだと忙しい合間をぬって。
マジメに生きてるのがバカバカしくなるような話だ。
が、今の時代、「アリとキリギリス」の寓話のおしまいは書き換えられないといけない。最後に笑うのは、キリギリスなのだ。
ヨガで一緒の友人の隣人夫婦は、二人とも四十台になったばかり。夫の方は、離婚した前妻との間に高校生の子供がいる。ヨットを二艘も所持し、夫の趣味のバイクや車が車庫やドライブに数台並び、夏はキャンピングカーでしょっちゅうあちこち出かけている。大きな家に住んでローンも高いだろうに、なんとも豪勢な暮らしである。
いったいどんな仕事をしているのだろうと興味があったので、友人に尋ねてみたところ「あの夫婦は二人とも、Stress Leaveで休職中なのよ」
なんでも夫のほうは、数年前に6週間の長期出張に出たが家族と離れて住む寂しさで睡眠障害が出て、帰宅してからも仕事に身が入らないので「ストレスにより精神的、さらには身体的なダメージを受けた」という医師の診断をもらい、職場でそれが受理されて以来三年間、病気休職中だとか。休職中は減額ながらも給料は出る。それにくわえて療養保障も出るため、普通に働いているより結果的に稼ぎが良い。
妻のほうは妻のほうで、別のアメリカ資本の店舗勤務だった。一昨年、別の州に住む両親がたずねてくることになり、上司に二週間の休暇願いを出した。が、すでに彼女はその時年休をすっかり使い果たしていたため、上司は断った。そこで彼女は「自分の親と一緒に十分な時間を過ごせないストレスから首の痛みが出て、職場で仕事が続けられない」という医師の診断をもらい、それからずっと休職中。やはり減額ながら給料はもらっている。精神カウンセラーにかかっているが、その費用も保険から出ている。
どうりで、二人ともいつも遊び歩いているわけだ。
私は友人に「そんな虫のいい話が通るの?」と聞いた。
六十台の彼女は、「私の若いころには、Stress Leaveなんて聞いたことなかったわよ」と言う。
この夫婦のもっかの悩みは、「早期退職を実現したいのだが、書類がなかなか通らない」ことだそうだ。
この夫は、仕事にからむストレスで仕事ができなくなったことを理由に労災申請をした。労災が認められて病気を理由に退職すれば、退職金が定年まで勤めた分出るし、すぐに恩給も出る。このあと一生困らないだけのお金が、働かなくても毎月振り込まれるのだ。あの若さで、毎日が日曜日。しかし、さすがに労災認定は何度も書類落ちしているらしい。
「労災が認められないストレスで、日常生活がうまくおくれない」という理由で、この男は今、精神カウンセラーに通っているという。キャンプだ、バイク乗りだ、海遊びだと忙しい合間をぬって。
マジメに生きてるのがバカバカしくなるような話だ。
が、今の時代、「アリとキリギリス」の寓話のおしまいは書き換えられないといけない。最後に笑うのは、キリギリスなのだ。