按曾氏云、天下非一統者、本可各自一國編集。又恐初學讀者、迷其時代之先後。今但以一國源流相接者爲提頭、而附同時之國於其。而曾氏而仍陳壽之舊、以魏稱帝、而附漢・呉。剡既遵朱子綱目義例、而改正少微通鑑矣。今復正此書、以漢接統云。
按(あん)ずるに曽氏の云(いわ)く、「天下一統に非ざる者は、本(もと)各自一国に編集すべし。又、初学の読者、その時代の先後に迷わんことを恐る。今但だ一国源流相接する者を以って提頭となして、同時の国をその間に附す」と。而して曽氏は陳寿の旧に仍(よ)り、魏を以って帝と称して、漢と呉を附せり。剡(えん)既に朱子の綱目の義例に遵(したが)って、少微通鑑(しょうびつがん)を改正せり。今復た此の書を正し、漢を以って統を接がしむと云う。
曽氏 曹先之、十八史略の編者。 提頭 先頭にかかげる。 陳寿 西晋の史家「三国志」を撰す。 剡 劉剡 この序文の著者。 綱目 通鑑綱目、司馬光の資治通鑑を宋の朱子が撰した書。 義例 体裁。 少微通鑑 宋の江贄の通鑑節要。
思うに、曹先之は「天下が統一されていないときは、それぞれの国ごとに編集するのが本来ではあるが、一方初学の読者がその時代の前後関係に迷うことになりかねない。そこでここでは一国の本源とつながっているものをまず先に掲げ、同時代の国を間に付け加えることとした」と述べている。そして曹先之は陳寿の旧例に倣って、魏を正統と見做し漢と呉をとを付け加えている。
すでに、私劉剡は朱子の通鑑綱目の体裁に従って、少微通鑑を改めたことがあるが、今またこの曹先之の旧本を正して、蜀漢が正統を継ぐものとすることとした。