ぱんくず日記

日々の記録と自己分析。

徘徊の一日

2015-09-23 20:37:53 | 日常
今朝も秋晴れ、寒い。
ここ数日引き籠っていたので散歩に行く。
今日一日を全部散歩に費やす事にした。
ヘンリ・ナウエン著『放蕩息子の帰郷』を持参し、
読みながらバスで移動する。


海!






競争率の高い老村のわかめおにぎりは
今日も完売で手に入らず、いくらおにぎりで妥協。
おかず、たこザンギ。



うまー。


今さっきでいた市内がここから一望できる。




後で、あの盛り上がった崖の辺りにも行くよ。




腹ごなしに砂の上を歩く。
足元に二枚貝の片割れ。




少し歩いたら、市内に引き返すバスではなく、
あっちの方角の隣町に向かうバスに乗って隣町のJR駅に行く。




連休に行く所も無いのか
家族連れが波打ち際に集まっている。




オオセグロカモメが砂を掘って何か探している。
波は荒いけど散々荒れた後で時間も経っているのか
あまりウマそうなものも落ちていない。




波を見る。
無数の光の粒の氾濫。
















小さい巻き貝。




隣町へ行くバスが10分遅れでやっと到着。
JR駅で降りて次の改札を見ると15分ほど時間あり。
少し歩くと空色の朝顔を咲かせた家があった。




陸橋から線路を見下すと貨物車が足の下を通過した。






そろそろ改札。
古い駅舎。




ローカル線。




走り出した車窓の眺め。
乗客はまばら。
窓を開け子供のようにへばりついているのは私だけだ。


さっきまでいた砂浜につながる海岸線。



















河口を渡る。
間もなく終点。




JRで市内に戻り、
路線バスで滅多に行かない寂れた海沿いの地区に向かう。
昔、この一帯は貧しい漁村と遊郭が隣接していた。






元は商店や昭和の長屋や工場であった廃屋と
今も人の住む民家とが
崖と海岸の間の細長い僅かな空間に
混然と密集し吹き溜まるようにして鄙びた町を作っている。








何年も前に初めてここを歩いた時、
民家のうちの一軒から年配の主婦の方が
ボウルと生の魚を持って出て来て、
人が歩いているのが珍しいのか話しかけられた事があった。
この海沿いの線路沿いに行くと浜から海岸に出られるか尋ねると
人懐っこく笑って教えてくれた。

「行ける行ける、いつも私ら散歩しに歩いてるよ。
 ああ、車はダメだよ車じゃ行けない。
 車は線路の上を行けないからね。」

線路の上を歩く?

「線路の上をずっと歩いて行くのさ。
 そしたら浜に出て、その先に海岸が見えて来る。
 ずっと線路の上を歩いて行けば間違いない。」

あれ、でも石炭運ぶ貨物車が来るでしょう?

「ああ、石炭積んだ汽車、来るねぇ。
 何も、いいっしょ。
 汽車が来たらちょっと脇に避ければいいから。」

線路の左手は崖、右手は海だけど…。


あの時の会話を憶えている。
この辺りの住民は試験採炭の貨車の通る線路の上を歩いて
海岸線を散歩したり、30分も歩くと線路の行き先にある
商店や飲食店のある地区に行くらしい。


今日は秋分の日で試験採炭の貨車は動かないだろう。
この海岸から浜、崖下、今はコンクリで固められた海岸、
湖と採炭場まで、海岸沿いを線路伝いにフルコース歩くなら
休日の今日がチャンスだ。


では、線路の上を歩き始める。




黒猫が日向ぼっこをしていたので挨拶をしたら疎んじられた。




絶景。











線路の切り替え地点。




右手は砂浜だったのが岩場に変わった。
荒い波に砂が削り取られるのだ。




















いつも散歩の最後に海岸を見下ろしている崖の下を、
線路伝いに弧を描いて東に向かって進んでいる。
ここまで来ると右手には岩場すら無く線路の右下は海の水、
落ちたら終わり。






いつも二番目に立ち寄る浜が見えて来た。
線路は直線に変わった。




眼下の波、荒くうねっている。




チンチンチンチンチン・・・

!?

離れた所から踏切の警告音が鳴り響いて来た。


正面から石炭を積んだ貨物車が来た!
休日なのに試験採炭やってたのか!?
貨車は稼働してた!

・・・・・

取り敢えず線路から下りたけど、
あの主婦が言ってたように
「汽車が来たらちょっと脇に避ければ」ったって
こんな場所、立つのがやっと。







背中すれすれを貨車が通過した。


はーびっくりした。
休日だから貨車も休みだとばかり思っていたよ。








貨車が引き返して来ないうちに浜に出よう。
いつも来る浜の踏切まで来た。




貨車はすぐに引き返して来て採炭場に戻って行った。
向こう側の一帯は海岸が波でもっと削られて、
線路脇に足場がない。
線路伝いの散歩は半分で断念した。




ここの浜にも家族連れが来ている。




波打ち際。
しばし水の動きを眺める。














歩いて来た線路を上から眺めに、坂を上る。
いつもの崖の上の見晴らし。






さっき歩いた線路と海岸線が見える。






イヌタデが咲いている。




坂を下りてバス停に行くと次の便まで10分ほど時間あり
『放蕩息子の帰郷』の続きを読む。
喉が渇いて自販機でコーラを買った。
500ml全部飲んでしまった。


バス停は古い大きな仏寺の前にある。
80歳くらいの年頃の老女達が寺から出て来た。

「いやーあんた元気だねぇ」

「何言ってんのもう80過ぎたんだよ」

「年なんか関係ないんだわ」

「うちの近所の婆ちゃんは90過ぎてるけど
 何でも出来るから一人でちゃんと暮らしてるよ」

「いやでもほれ、
 ちゃんとこうやってお洒落して、ねぇ。」

「何も、お洒落ったって眉毛書いただけだから私は。」

「眉毛書くだけいいっしょ私なんか何もしないよ」

「近所の奥さんが今朝、
 "あら、おめかししてどちらにお出かけ?"って言うから
 娘の所に行ってきますって言っといたわ娘死んだけど(笑)」

「娘が亡くなったからお寺さんにお参りに行って来るって
 言えばいいのに」

「知らないんでしょ」

「いや、知ってるんだ。
 死んだ時知らせたからね。
 それで眉毛書いておめかしして出かけて来たのさ。(笑)」


退屈しない。
彼女らの日常には「退屈」が無い。
ずっと聞いていたい長閑な会話である。


バスが来た。
婆さん達と私を乗せたバスは市内に戻った。


岸壁の茶屋で日没の時刻まで本の続きを読む。


・・・・・


間もなく日が暮れる。






橋の上に人が集まり始めた。
ていうか、何でいつもあなたはそこにいるの。




川面が揺れる。
鈍い銅の色。




秋分の日だとちょっとまだ数日早いんだな。
港の真ん中に太陽が落ちるにはあと数日、時間が要る。




















太陽が西に沈むと言うだけの
ごく当たり前の自然現象を地元住民はこういうもんだと
何とも思わず横目に見て生活しているが、
わざわざ立派なカメラを担いで橋の欄干にぴたりと貼り付いて
立て続けにシャッターを切り続ける人々が大勢いる。
橋の上の観光客に混じって眺めていたら目がチカチカする。


上弦を過ぎて太り出した月。




日が落ちると一気に冷えて来た。
ちょうどバスが来たので早々に帰宅。
今日一日で12615歩。
朝から日暮れまで歩き回った。

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6 コメント

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すごいな (みつこ)
2015-09-25 21:52:34
線路の上を歩いた?
そしたら貨車が来た?
よけたら海に落ちそうな場所・・・
映画みたいだ。
線路 (井上)
2015-09-25 23:54:07
>みつこ様

  市の炭鉱が昔閉山して、
  その後は試験採炭をずっとやっているのです。
  一日に数回、採炭場からこの浜の端に貨車で運んで来ます。
  あの廃屋の密集した一帯に住む人達は、
  毎日の散歩でこの線路伝いに採炭場の手前の地区の
  大型商業施設やスーパー銭湯や飲食店に行くのだそうです。
  しかし祭日にまで稼働しているとは思いませんでした。
  稼働していない日で、天気の良い日に
  本当に採炭場の手前まで行ってみたいです。
写真 (みつこ)
2015-09-26 10:12:44
井上さんの写真はどれもとても静けさを持ってると思っていたのですが、
今回珍しく「よその家族連れ」が写っていて
「ああそうか、人がいないから静かなんだな」と思いました。
意図してフレームに入れてないのでしょうけど。
でも線路のあたり、誰も本当にいないのだろうなと思いました。
そういや、余市によく行ってた頃、私は徒歩で歩き回りましたが、道に迷ったときに人に聞こうにも
そもそも歩いてる人がいなくてね。
皆車で移動するんですね。


人、いないです (井上)
2015-09-26 12:14:34
>みつこ様

  海岸の波打ち際に家族連れの観光客がちらほらいるくらいですね。
  線路には私以外誰もいませんでてした。
  こちらでは皆ちょっとした距離でも車で移動します。
  人が画面に入らないようにはしていますが、
  波打ち際とバス停以外、実際人とは遭遇しませんでした。
  だから写真には全く人がいないのが殆どです。
静寂 (mondlicht 7of9)
2015-09-28 13:27:18
私もいつも感じていました。
静かなお写真だなと・・・

ただ、波打ち際のお写真を眺めていると、
ここ数年遠ざかっている波の音と、
海の匂いを感じていました。

静かな写真 (井上)
2015-09-28 18:17:55
>mondlicht 7of9様

 撮っていると海は波の音がします。
 川の写真を撮っている時は大勢の観光客達の会話で
 実は結構賑やかな状態で撮ってるんですよ。

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