上越・町家暮らし

主に新潟県・上越市の自然、文化、風土、そして町家暮らしについて書いていきます

春の旅,西頸城へ

2012-04-30 18:53:34 | 瞽女街道を行く

 しつこかった今年の寒気団も,4月も半ばになると流石に離れていったようだ.この時期の瞽女達は、直江津から糸魚川方面へ,また、日本海沿いの集落や,雪が少ないようであれば,桑取谷やその他の谷筋を奥の方に入っていったようだ.日差しも暖かく,桜が今にも咲きそうな,いや咲いてもよさそうな陽気の中,次々と咲き誇る花々の香しい中,ようやく迎えた春の宴の中,山村部に足を運んだのだろう.

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          あたたかな日差し、夕暮れの漁村

 

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      筒石漁港の段々畑、桜と海を見ながら作業を終え帰る

 谷の奥にはまだまだ多くの残雪が残り,名立の観音堂をしばらく振りで訪れると,今年初めて来たという,この集落の女性にあった.かっては7,8軒あった家も半分になり,この観音堂の上部にある墓守も年をとり大変だが,つい先日まで雪で墓の周りの片付けができなかったが,と春を待った顔があった.「この観音堂の近くの大木が何度も倒れたのにも関わらず,決して,観音堂に倒れなかったのは不思議なことだと」語ってくれた.

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           自宅の墓守にきた女性

 

 

 

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 雪がまだまだ残るが、あっという間に,夏が来るであろう.名立谷最奥集落,東飛山


春,山から里へ (雪原の悲劇)

2012-04-15 10:28:31 | 瞽女街道を行く

 春は深山から里に,急激にやって来る.
先日まで灰色の風景の中に色を添えるものなどなに一つもなかったのに,音をたてて流れる小さな用水にフキノトウがこっそり顔を覗かせる.木々は冬の間エネルギーを蓄え,元気になった太陽に向かってその手を伸ばす.しかもこの冬のように,雪雪の多い過酷な冬は,ことさらに春の日に迎えられ喜びも一塩だろう.だが,春の陽光の中に衰退した体を横たえる動物のなんと,多いことか.透かした雑木林から息も絶え絶えに這い出てくる,狸を数多見るのはこの季節,珍しくはないのである.

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              糸魚川市,早川谷,権現岳

 この季節,美しいまでの形態を見せていた雪の風景が長く続くほど,野山に生きるものにとっては,生きながらえる術を奪われかねない,代物なのだ.

 

 

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              能生谷,西飛山の菅笠干し

 その狸は葉の落ちた雑木林をおぼつかない足取りで抜け,除雪されて間もない道路脇の2mほどの山を越え県道を渡る.再び除雪された2mの山を越え,雪田と化した水田の上を宛てもなく歩く.その状況を電信柱から冷めた目で見ていた3羽のからすが,狸を取り囲む.おぼつかない足取りで再び逃げる狸.だがからす達は」執拗に追っていく.やがて力尽き倒れる狸.第一の血だまり,そしてふたたび歩き出すが,からすの鋭いくちばしが血に染まる.第2の血だまり.逃げ惑う狸,だがやがてその狸の足は二度と動くことはなかった.
 そんなシーンが想われる情景が,この雪原で繰り広げられたのだろうか.

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              上越市,中郷区