上越・町家暮らし

主に新潟県・上越市の自然、文化、風土、そして町家暮らしについて書いていきます

夏・樽本峠  妙高市

2011-06-19 16:03:37 | 瞽女街道を行く

6月中ごろから7月一杯、高田瞽女達は暑い新潟を避けるかのように幾多の峠を越え、長野県に遊芸に出たのだという。命がけといってもいいほど危険な、瞽女達が越えた峠は、現在、信越トレイルと名づけられた、県境上の山並みに今も色濃く残っている。標高900m~1200m、西北に伸びた80kmにも及ぶ尾根上には、代表的な峠として西から小谷峠(小谷は信越トレイルではない)、樽本峠、富倉峠、関田峠、牧峠、宇津俣峠、伏野峠などがある。そのほか中小の峠があり、県境での交流で生活を支えていたと思われる。それら峠道も、今のように整備されているわけでなく、荒れた山道が延々と続いていた。それが脆い沢沿いの道だったり、尾根の急斜面をけづった九十九折だったりと、非常に危なげな山道ではあったが、古来から地元の有志達によって生活道路や交易の道として作られ、管理されてきた。そんな山村部から時代の変遷とともに若者が消え、高齢化して過疎化して、人力で支えられてきた、瞽女道も又、消えていったのである。

 昭和40年代、画家、斉藤真一は高田瞽女の親方、杉本キクイの話に基づいて、瞽女と同じように15kg近い荷を背負い、これら代表的な峠を自らの足で歩いたと書いている。都会に育った斉藤には大変な行動だったらしく、道に迷い、遭難しかけたこともと、回想している。

 

 小谷峠から東には海川,早川,能生.名立,桑取谷と河川が走っているがいずれの川筋からの国境越えは不可能である.妙高山,火打,焼山など2500mを数える山並みが長野県境との境に成っている為である.高田から長野に抜ける街道は瞽女宿伝いにいくなら現在の国道292号線から最短で,斑尾に抜けた樽本峠である.現在は県道となっていて,冬でも斑尾に行けるとのことだった.斉藤が書いているが昭和40年代,廃道と化したこの山道をたどった斉藤は,この峠道で遭難しかけ,這々の体で,大川に着いたと邂逅している

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  樽本への県道は狭く,スノーシェードが多い 。                                 R292の除戸で県道97と右折してしばらくいくと大鹿集落を超えるとスノーシェードの多い,狭い道となる.無雪期の今は冬に痛んだ道筋の工事で交通規制が多い道だ.下樽本には谷に沿った道から山側の急な斜面をぐいぐい上っていく.下樽本には2軒の瞽女宿が記されている.「孫えむさ」と「こえむさ」である,集落に入り畑に鍬を入れているおばちゃんにきいてみた.「孫えむさ」はとうに上越に出てしまったが,「こえむさ」はまだ住んでいるという.主人は90才になるがしっかりしているから,話は聞けるだろうと,尋ねてみると,昼間から酒盛りのようで,息子さんに,尋ねると60才になるという息子さんは分からないという.90才の主人もわからないとのこと.どうやら,宿をやっていたのは大正の頃らしい.というのは「孫えむさ」はこの「こえむさ」が宿をできなくなり,昭和に入った頃には「こうむさ」は瞽女宿をやっていなかった,というのが本当らしい.先ほど道を尋ねたこの集落生まれだという農作業のおばちゃんに再度,話をうかがって話が飲み込めたのだ.

 

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 下樽本集落                                            

中樽本は2軒ほどの家屋があるが,無住となっている.この中樽本の台地に以前は小中学校があったのだと,上樽本で知り合った,小出さんに教えていただいた.上樽本はヘアピンカーブを曲がると集落である.そのカーブの脇に鉱泉ではあるが,上樽本温泉とあった.その手前の空き地に車を停め,坂道を歩く.道路の両側には朽ちた民家や,朽ち果てた民家は数多い

 

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上樽本集落の最上部まで歩いて,全体像が分かり坂道を下ってくると,下から材木を2枚持って歩いてくる方がいる.「地元の方ですか」と尋ねるとそうだという.このかたが小出儀典さんだ.高田在住だが実家は上樽本で85歳の母親が住んでいて,大震災後良く実家にきているのだという.急速な勢いで過疎化していくふるさとをなんとか活性化できないものかと,これからこの地に尻を据えて,見守っていきたいのだと熱い思いを話てくれました.初対面の私に周辺を車で案内していただき,地元ならではの情報をたくさん頂いての取材でした.

Dsc_5144                                                         お世話になった小出さん

 

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斉藤が迷ったのも無理もない,薮道である  

                              Dsc_5044                                                                                                     Dsc_3353                                                   

  新潟.妙高市は水田.   長野.飯山市に抜けると畑が多い