俳優の宍戸錠さんが亡くなった。
最近お顔を見ないなあと思っていたら
ご自宅でひっそりと亡くなっておられたと言う。
ひっそりと言うのがいささか寂しいが
映画界きっての「悪役」にふさわしい潔い最後ではなかろうか。
日活のニューフェース第一号として入社以来
当時、全盛期だった日活アクション映画の屋台骨を支え
敵役(ヒール)としして大活躍してこられた。
ファンは親しみを込めて「エースのジョー」と呼んだ。
宍戸さんと言えば頬にシリコンを埋めた独特の風貌が有名だが
悪役として売れんがためインパクトを与えんがための手術だったと言う。
昔、東映に「ピラニア軍団」という悪役俳優たちがいて
志賀勝という役者さんは凄みを出すためにわざわざ眉毛を剃ったと言う。
志賀さんが眉毛を剃る「マイナス」の美学なら
宍戸さんは頬を膨らますという「プラス」の美学で売れた。
悪役俳優ならではの気概だろうか。
小林旭主演の「渡り鳥シリーズ」などでは惚れ惚れとする
憎たらしいほどの悪役ぶりだった。
ちなみに実弟の郷鍈治(宍戸鍈治)さんが
歌手のちあきなおみさんのご夫君であることは余り知られていない。
苦み走ったなかなかの二枚目俳優だったが
そのご主人亡き後、ちあきさんがプッツリと歌わなくなったのは
愛情の証ではないのかと思うのだが・・・
宍戸錠、その見事な悪役人生に拍手を送りたい。
享年86歳であった。