平成30年7月24日(火)
視察二日目はベトナム南部の経済中心地である、ホーチミン市で二箇所を視察しました。日本を代表する木材製品製造企業と日本貿易振興協会(JETRO)ホーチミン事務所です。
住友林業の現地法人であるVina Eco boardは、2012年に設立されたベトナムで家具向けなどのパーティクルボードを製造販売する企業で、視察目的はベトナムにおける木材・建材流通の現状と木材製品のニーズなどについて調査しました。
(玄関前で記念撮影)
(工場の入り口)
(小舟で運河を使い木材が運ばれてくる)
(山積みされた木材)
(プラントの前で)
(配付された資料)
(記念品の授受)
(パーティクルボードの原料)
(パーティクルボード)
メコンデルタ地帯は豊富な森林資源がありますが、木造建物で使うような構造材とには適していません。植林された木だけを対象とし、効率よく育てるために小径のうちに伐採して細かく粉砕した木片を圧縮し接着して板のようにしたパーティクルボードを製造しています。用途は家具などに使われており私達の生活の中で欠かすことはできません。
樹種は5年ほどで成長する、アカシア、ゴム、コショウ、メラルーカなどがあります。そのほか、廃材なども有効活用されています。
会社の周囲には水路が敷かれ、小型船でメコンデルタ各地から伐採された木材が運ばれ、会社の岸壁から陸揚げし加工に回されます。この施設はベトナム国内では最大の設備で、シェアは50%ほどということでした。
続いて、JETROでは、その設立目的が貿易・投資促進と開発途上国研究などを通じて、日本の経済・社会の更なる発展に寄与することから、本県内企業の進出状況やベトナムの産業の現状などについての調査を目的として訪問したもので、特に森林・林業・木材産業の情報収集を行いました。
(JETRO入り口にて)
(JETROホーチミン事務所長と訪問団長)
(所長からベトナム経済の概要を聞く)
説明者は、JETROホーチミン事務所長の滝本浩司氏です。最初に、ベトナムおよびホーチミン市について様々なデータを用いて報告がありました。国内各地の工業生産額比や米生産量比、水産生産量比などではいずれもメコンデルタ地域(南部のホーチミン市周辺)が大きな成果を上げています。
マクロ経済においては、昨年度のベトナム全体の平均一人あたりGDPは、2,385USドルに対し、ホーチミン地域は5,492USドルと倍以上の開きがあります。年間3,000USドルを超えると、地域経済が大きく変わる転換点といわれ、所得が増えることでサービス業や小売りに業界に大きな変化があるといいます。ホーチミン市ではこれらの経済状況を背景に、日本からは小売り・ショッピングセンター、在留邦人やベトナム富裕層サービス、不動産業界の進出がめまぐるしいということでした。
ホーチミン周辺は90年代において土地が安く企業進出が進み、経済対策が先行してきたことが今日の繁栄の根拠となっています。
「チャイナ+1」といわれるように中国のリスクによる周辺国への分散が叫ばれる中、ベトナムはその対象国のひとつでした。製造業は中国からベトナムへ施設を移転してきましたが、ベトナム国内の経済力が高まると人件費などや設備投資費も高騰し、ハノイやホーチミンでは製造業に進出が鈍っているといいます。しかし、地方ではまだコストが低いことから、進出企業の可能性はあるということでした。
また、ベトナムの大学卒新人の所得は月あたり600ドルで、経理などの知識があればさらに高く、一方で平均的な労働者の所得は月あたり300ドルということです。ホーチミン市では日本のODAによる地下鉄の整備が進んでいます。そのほか、周辺地域では工業団地に整備や新都市整備が進み、裕福になり始めていることから、サービス産業や教育産業などが伸びています。
ベトナムにおける森林・林業・林産業の状況については、ベトナムでは小径木が多く、ほとんどは木材チップ産業で消費される。このため、家具などの加工業は輸入材に依存し木材の輸入量は年々増えている。しかし、メコンデルタ地域の国々からの輸入が多いものの、日本からはない。木材の輸入元は、中国、アメリカ、カンボジアが多く、輸出はアメリカ、中国、日本の順になっている。木材の取引は国際認証を受けた森林から供給される木材が基本であるが、カンボジアなど陸続きの国境は取り締まりが甘く、調査した以上の木材が不正に輸入されているのではという話もありました。
そのほか、ベトナム国内で活躍する林業関連の企業情報を説明していただきました。
質疑応答では、ベトナム全体について、日本食ブームにおける米の生産についてや工業団地における電力供給の安定性、港湾設備の整備状況、日本の中小企業のホーチミン進出について、サービス業の進出における課題についてなど意見交換が行われました。
林業関連では、ベトナム国内における日本産材の活用についてや内装材としての木材利用について意見交換などが行われました。
日本産材の活用については、PR不足のほか、多くの課題が生じていることが報告されました。今回の調査を元に、県内林業の活性化について積極的に取り組んでいきたいと思います。
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