GOVAP便り

プノンペンからモンドルキリに、その前はTAY NINH省--AN GING省--HCM市GO VAP

インフレ

2008-07-08 05:16:11 | 社会
アジア通貨危機再来の可能性を指摘した「ファイナンシャル・タイムス」の記事が日経ONlineに掲載されていました。アジア各国のインフレの中でも特にベトナムの物価上昇率25.2%はずば抜けた数値でグラフの枠をはみ出しています。昨年のベトナム株ブームから一転して2008年は「ベトナム発通貨危機」が語られるほどの状況に直面。特に6月は非公式のベトナム援助国中期CGミーティングのサパで開催や、訪米したズン首相がグリーンスパン前FRB議長と会談したことが報道され、経済情勢に鈍感な自分にも「ひょっとすると・・・」と感じさせるものがありました。

6月の統計が発表され、貿易入超額が5月の28.5億ドルから1.3億ドルに減少し、物価上昇率は5月3.91%から2.2%となるなど抑制政策の効果が語られるようになり、心理的には6月下旬からはこうしたマクロ経済の危機感は薄らいだかの印象があります。その間、幾つかの公共プロジェクトの中止が発表され、6月から発行予定だったプラスチック製運転免許証への切り替えも費用が調達できずに延期となりました。

しかし個別企業の資金不足は、そのお陰で苦しくなる一方の状況が続きます。輸出入企業へのExinBankによるドル貸付(利率8.4%)が発表されたり、水産加工会社への農業銀行による貸付が報じられたりもしていますが、政府の公共プロジェクト抑制は国内的要因のインフレには効果があるとしても輸入原料の値上がりには抗することはできず、家畜飼料価格は今年に入って9回目の値上げ。

食品価格が更に値上がりして消費者の生活を圧迫するのか、あるいは農家が経営を破綻させるのかの何れか迫ることになりそうです。

農業省は2日、上半期の農林水産業の出荷額が931,000億ドン(約5.820億円)(対前年比+4.6%)で「大きな勝利」と発表しました。寒冷化による北部冬春米の不足にも拘らず昨年より100万トン多い収穫ですから、それはそう表現することも間違いではないのかも知れませんが、軽々しく「勝利」を口にする左翼体質というか、日本の政治家が選挙に勝って無邪気に万歳を叫ぶ姿なども連想させられてがっくりしました。

農産物をはじめ、輸出貿易の急成長に依拠した経済建設の今日のあり方が農業国でありながら国際価格の変動に翻弄され農村の疲弊を招いているばかりかインフレによる危機的状況を招いてしまっていることは確かです。かつて一度は計画経済を志向した経験があるとは思えぬ無計画性の氾濫は数多く、市場原理に突き動かされて右往左往。

成長のスピードを落としてインフレを抑制する。調整されるべきことはそれだけなのでしょうか。農業省はベトナム農業の未来についてどのようなビジョンを画いているのでしょう。