GOVAP便り

プノンペンからモンドルキリに、その前はTAY NINH省--AN GING省--HCM市GO VAP

ビンユン陶器

2006-10-14 12:15:13 | 仕事
卒業試験で休んでいたNがきょうから仕事に復帰し、ほっと一息でした。今更卒業証書があっても大した役には立たないだろうに、と思うのですが、両親がこだわっているようです。日本の政治家の学歴詐称問題などを見ると日本も学歴社会なんだ、と思いますが、こちらでは学歴偽造問題が多発してますから、それ以上の学歴社会のようです。「科挙」の歴史を持つ国だから、ということでは日本には科挙はなかったわけで説得力ある説明とも思えません。それにしても家族の学歴へのこだわりに逆らわないところが日本とは少々異なる感じです。親から精神的に自立できないということなのか、それとも家族の絆が強いということなのでしょうか。何れにしてもこの学歴社会が教育ビジネスに好都合なことは確かです。NはTOEICのランゲージセンターに通い始めたようですし、新人の子も日本語センターに通っているそうです。センターに通いさえすれば何かが身に付くような幻想の雲はとても厚いものがあります。それでもベトナム語のセンターにも通わずにいる同居人のDさんやT君よりはマシかも知れませんが。試験を終えても晴れ晴れとした表情でもないNに「日本に留学でもすれば良いじゃん」と無責任に声を掛けると、「no money」と定番回答。「カネの問題じゃないだろ」とは思いつつ。

納品も溜まっていたので、早速出掛けることにしました。バイクに積める量でもなく、かといってタクシーを使えば足が出る距離です。それに雨に降られたら目も当てられないので行きだけタクシーを使うことにしました。ビンユン省の工業団地の立ち並ぶ一角です。北部ではハノイ郊外のバッチャン村のバッチャン焼きが有名ですが、南部ではビンユン省の陶器が伝統産業のようです。もっともビンユン(Binh Duong)という地名は新しいようで、以前はソンベと呼ばれていたので、ソンベ焼きと言うのかも知れません。今では「ソンベ」と言う名を聞くことは少なくなりましたが、以前、知り合いの日本人が空港に行こうとしてタクシーの運転手にSAN BAYと告げ、居眠りして目が覚めたら見知らぬ田舎に着き「お客さんSONG BEに着きましたぜ」と言われたそうですから発音には要注意。ビンユン省は東西の省境をサイゴン川とドンナイ川に挟まれた地ですから、ソンベのソン(song)は川という意味で、この川砂が焼き物に適していたのでしょうか。この地場産業の焼き物は海外への輸出も多く、また今では日本やヨーロッパ資本の工場もあります。

ベトナム人がこの地に南下して来てからせいぜい300年ですから、伝統産業と呼ぶに相応しいかどうかは別にして、それでも焼き物の技術的な問題で日本人が指導することは何もないそうです。手作業の仕事ですが、工場の敷地の広さに比べ従事する人数はさほど多いようには見えませんでした。観葉植物用の大きな植木鉢が並んでいました。輸出先の国のマンションやオフィスで使われる都会的な色と形です。ホームセンターに並ぶこの鉢を見て、それを何処で誰が作ったかを考える人が居るとも思えません。そう考えると何か得をしたような気になりました。ガス釜の設備は昔とは大違いでしょうけど、作業する人々の気持ちには昔と変らないものがあるに違いありません。ベトナム人がこの地で焼き物を始める前にも、たぶん先住民族がこの地の砂を利用して焼いていたような気もしてきました。