A:この日本人の名前は、何て読むんだ?
B:さあ、漢字の読み方は難しいんです。
A:何?お前、日本滞在が長いのに、名前の読み方も分からないのか?
これは実際に、日本に長期滞在している外国人の方が、日本に出張で来た外国人の方との間で交わされた会話です。出張者の方からすれば、日本滞在が長い人から「分からない」という言葉を聞くのは、少なからず不思議な感じがしたのではないかと思います。あるいは、その長期滞在者のことを「日本語を勉強していない不真面目な人」と思われたかもしれません。
しかし、日本人の私たちは、その長期滞在者の方が、大変よく日本語を知っている人かもしれないことを理解できるのではないかと思います。
私自身、その場に居合わせつつ、たしかに複数通りに読める、その日本人の名前を見ながら、それが非常に「適切な答え」であると思いました。むしろ、複数通りの読み方があるにもかかわらず、あるひとつの読み方が全てであるかの如く答えてしまう人の方が、「それしか知らない」くせに、「知っているフリ」をするという意味で、日本語を勉強していない不真面目な人であると言えるでしょう。
そして、こうした「よく知る者の振舞い」は、あらゆることに通じるように思えてなりません。
-真に武術を知る者は、むやみに剣を振るわない-
※「抜かせてはならぬ最強の剣」参照
-真に科学を知る者は、むやみに可能性を否定しない-
※「仮説と検証のすすめ」参照
-真に教育を知る者は、むやみに知ったかぶりをしない-
※「教育は共育なり」参照
そして、真に人間の本質を知り、また真に人間たらんとする者は・・・。
そういうことなのだろうと思います(「分からないことは言わない」、「他人は自分の鏡」等参照)。