ひよりの音楽自己満足

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Outer Limits

2007-12-19 21:13:45 | Outer Limits
 日本最大とも言えるプログレ・レーベルの<Made In Japan Records>。そこのプロデューサーのUeno氏。そのUeno氏が発掘し育てた、と言っても過言ではないくらいに互いに発展していったバンドが今回紹介させていただくプログレバンド<Outer Limits>です。このバンドの大本はキーボードの<塚本周成さん>と、ドラムスの<桜井信行さん>と、当時ベースの<藤井暢之さん>の3人による高校生バンドです。そしてメンバーがそれぞれ進学し、そして塚本さんがM音大でヴォーカル&ベースの<杉本正さん>と、ヴァイオリンの<川口貴さん>と出会い、意気投合して<Outer Limits>が結成されました。1979年、まだ始めたばかりのバンドは池袋の某デパートの小さいステージで演奏したそうなのですが、そのステージを当時まだ学生だったUeno氏が見て衝撃を受けたそうです。演奏自体はまだそこそこだったものの、その個性溢れるオリジナル曲に惹かれたとか。当時Uenoさんは下北沢の某レコード店のレコード・コンサートでDJを務めていたもので<Outer Limits>にゲスト出演してほしいと思い、塚本さんの自宅を訪ねたそうです。ちなみに「ちょっと待ってて」といわれて6時間も待たされたとか。将来の恩人なのにねぇ・・・そして話が進みUenoさんは<Outer Limits>のマネージャーとなって奔走したそうです。ただ・・・80年ころはちょうどプログレの低迷期。世界のプログレバンドもポップ化したり沈黙したりしてたもんねぇ。がんばってはみたもののどこのレコード会社も門前払いで相手にされず、ライブもほとんど客が集まらず、対バンも異ジャンルのバンドばかりでしだいに立ち消えしていって・・・それでもUeno氏はこのままではいかん!と、レコード店の店頭に立って売り込みをしたそうです。
 しばらく冷めた期間がすぎて・・・Ueno氏はどうしても<Outer Limits>の素晴らしい楽曲が忘れられず、2年ぶりに塚本さんに連絡をとり、「もう一回やろう!」と気乗りしない塚本さんを説得したそうです。そして、「客が50人以上」を条件に1984年にバンド活動を再開。しかし藤井さんがやめてしまっていたので、当時M音大に入学したばかりのUeno氏の実弟の<上野知己さん>をヴォーカルにすえてライブ活動をスタートさせたそうです。85年5月。そのころには関西で<スターレス>や<ページェント>などプログレ・ムーヴメントが徐々にもりあがってきて、東京で関西関東バンド合同のイベント<Progressive Battle Live>が開催され、これがバンドの転機となりました。
 そしていよいよデビューアルバムが。楽曲の構想は84年の時点ですでにアルバム3枚分あったそうなのですが、まず1stアルバムはこれまでのライブで受けがよかった曲を中心に選曲することに。ここでまたトラブル発生!杉本さんが突然バンドを脱退してしまいます。しかしいまさらスケジュールをキャンセルするわけにもいかず、急遽<Outer Limits>のライブをちょくちょく見にきてくれていて、バンドの曲をよく知っているギタリストの<荒牧隆さん>に頼み込んでベースを弾いてもらうことに。もっとも荒牧さんはベースをやったことがなくてレコーディング前の2週間に猛練習したとか。 いよいよレコーディングに入りますが、予算の関係でスタジオは3日間しか借りられないので、ベーシックトラック1日、ダビング1日、トラックダウン1日という強行軍で完成させたそうです。そして85年の秋に1stアルバム「Misty Moon」が発売されました。初回プレス1000枚を出荷したところ即完売!なんと発売日にもう再プレスを始めたそうです。ここからバンドとともにUeno氏の<Made In Japan Records>も進撃を開始します。
 アルバム「Misty Moon」は、川口さんのヴァイオリンを大フューチャーした素晴らしいシンフォニック・ロック・アルバムです。1曲目の「Prelude」は「カルミナ・ブラーナ」というクラシックの合唱曲を元にしたストリングスが美しいインスト曲です。2曲目のタイトル曲「Misty Moon」はバンドの代表曲で時代ごとに様々なアレンジで演奏されたそうですが、アルバムではクラシカルに演奏されています。4曲目の「すべては風の中に」は唯一ヴァイオリンが入っていない曲ですが、川口さんのギターによる美しいフレーズが堪能できます。
 86年夏、2ndアルバム「少年の不思議な角笛/Magical Bugle Horn」が発表されます。このアルバムはコンセプトアルバムで、当時ワーグナーのオペラにハマっていた桜井さんが86年の2月ころから構想を練り上げ、書き上げた壮大なスケールの冒険ファンタジーが元になっています。 ・・・夢の中に現れた“さすらい人”に「平和をつかさどる力をもつ」という角笛を託された少年ユリウスが、親友のハーバーエーガーと“悪のザムザ”から世界を救う旅に出る・・・というアドベンチャーストーリーです。不気味な音色とともにスリリングに展開していき、美しくも悲しいクライマックスを迎え、最後は壮大なハッピーエンド。アルバムは3枚見開きで美しいイラストが描かれ、ライナーにはストーリーが記載されています。レコーディングには実際にオペラのソプラノを勉強中の方を器用、そして弦楽四重奏団と一緒に一発録りしたそうです。またその際、クリックではダメなので本物の指揮者にタクトを振ってもらったとか。このアルバムを最高傑作と称える人も多く、シンフォニック・ロックの頂点ともいえる素晴らしい作品です。 9月にはアルバム発売記念ライブをページェントとともに行いますが、前売チケットが発売2時間で完売というすさまじい人気を誇ったそうです。
 87年にベーシストの<石川正さん>が加入し、それまで兼任だった荒牧さんがギター専業となります。そして4月に初期の曲を現メンバーでリ・レコーディングした3rdアルバム「ペール・ブルーの情景/The Scene of Pale Blue」を発表。バンド絶頂期のアツい演奏が楽しめます。曲自体は初期の作品なので、クリムゾンやPFMなどの影響が色濃くでていて、これまでのアルバムのなかでは一番プログレしています。特に20分にも及ぶ大作「ペール・ブルーの情景」は起承転結整ったドラマチックな展開で、美しく凄まじい演奏に圧倒されちゃいます。
 7月にはシングル「Marionette’s Lament」を発表し、このまま快進撃を続けていく・・・はずだったのですが・・・8月になんと<Outer Limits>サウンドの最も重要な核であるヴァイオリンの川口さんが「オーケストラに専念したい。」とのことで脱退してしまいます。また塚本さんも新たに結成したプログレバンド<VIENNA>の活動に本腰を入れるようになり、翌88年にはヴォーカルの上野さんが桜庭統さん率いるプログレバンド<DEJA-VU>に加入するために脱退。すっかり崩壊してしまったバンドは89年5月のライブを最後に活動停止してしまいます。 ヴァイオリンの艶やかで美しいメロディとファンタジックな楽曲で、オリジナリティ溢れる展開を繰り広げジャパン・プログレ・シーンを席捲した<Outer Limits>。その功績は多大なるものがありました。
 活動停止後、87年4月15日にラジオ放送のためにスタジオでライブ演奏を行ったときの音源がリリースされます。タイトルは「The Silver Apples On The Moon」です。バンドの代表曲が収録されたこのアルバム、スタジオ録音とはいえ、絶頂期のアツい演奏が楽しめます。
各メンバーはその後、それぞれに音楽シーンで活躍。そして活動停止から10年後の1999年に活動を再開!メンバーは塚本さん・川口さん・荒牧さん・桜井さん・杉本さん。この5人で不定期にライブ活動を始め、そして今年2007年。ついにニューアルバムが発表されました。スタジオアルバムとしては実に20年ぶりのアルバム、タイトルは「Stromatolite」です。 80年代のファンタジックな色合いは薄れるも、川口さんのヴァイオリンが奏でる美しいフレーズと、塚本さんのシンフォニックなキーボードサウンドは健在で、円熟味を帯びたクラシカルなプログレサウンドが楽しめます。もちろん荒牧さんのギターも桜井さんのドラムも杉本さんのベース&ヴォーカルも十二分に楽しめます。計算しつくされた絶妙なアレンジの壮大なスケールで描かれる楽曲群、それらを圧倒的な演奏力で聴かせてくれる<Outer Limits>。今後の活躍も楽しみです。ぜひともライブを見てみたいっす。

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