人の不幸は、なんと美味たることか。嘘に惑わされた人間の行動は、なんとちんけなものか。流石、ただの土から生まれた汚らわしい生き物がする事は、想像の範囲を超えるほど愚かしい。
地に足を着け、愚行を繰り返すような者共が、神のお声など聴けるものか!あの神父、簡単に騙すことができたのだ。よほど、神に酔狂しているのだろう。神の名を出せば、無意味な殺生を起こすことに繋がる言葉を、平気で迷える子羊に言い渡してしまったのだ。身震いするほどの馬鹿だ。まあ、その馬鹿のおかげで、人の不幸にありつく事ができるのだが。
不幸を食べた後、腕で口元を拭っている最中、後ろからとても懐かしい気配を感じた。後頭部に耐えがたい痛みが走る。悲鳴も虚しく視界は暗んでいった。再び目を開けると、また暗闇だった。その中に、薄っすらと形作っている誰かがいる。
小さな机の上、ポツンと置かれたろうそくに火が灯った。
「迷える子羊の背中を押すのも、天使の役目だと思ってね。兄さんが告げたあの言葉を信じきれていなかった彼に、もう一押し声をかけてみたんだ。まさか、ここまで作戦が上手く行くとは思わなかったよ。」
あぁ、あぁ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…