思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『敦煌』 莫高窟に埋まった経典のお話し

2024-06-25 13:34:19 | 日記
『敦煌』
井上靖

映画も有名な井上靖の西域小説。
1959年初出だそうです。
時代を感じるなあ…。

世界遺産として有名な敦煌・莫高窟から出土した
「敦煌文書」が如何にして埋められたか。
を描いた時代小説。

舞台は11世紀、宋(北宋)の時代。
チベット系のタングートが「西夏」を起こした頃。

主人公の趙行徳(ちょうぎょうとく、読みやすい)は
宋の首都開封で科挙の試験に昼寝して落ちる。
どんまい。
そして流れ流れて(この主人公、流れすぎである。
林檎ちゃん並みにころころ転がっていく。親が泣くぞ)
気がついたら宋と敵対する西夏の漢人部隊で参謀みたいになってる。
おい。

とはいえ、意志薄弱というわけでもないし
(兵士にぶん殴られても言いたいことを言う)
自分の意思で行動を選んでいるし、
好感が持てるような、でもダメ男のような…。
不思議な人物である。

そしてラストは敦煌で勝ち目のない戦となり、
莫高窟に経典を埋めるために奔走します。
おお、こんな感じで埋められたのかあ、というワクワク感。

もうちょっと西夏、沙州、吐蕃あたりのことを
体系立てて知りたいな。
なにか良い本はないものか…。
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『日本の建築』 隈研吾の建築論と、「ぼく」話し

2024-06-21 10:41:33 | 日記
『日本の建築』隈研吾

超絶有名建築家の最近の本ですね。
岩波新書、2023年初版。
執筆8年だそうなので、
61歳から69歳にかけての建築論となります。

タイトルのイメージから、古代とか中世あたりから
話しが始まるかと思ったけど、近代建築史の本だった。
初期モダニズム建築リーダーのブルーノ・タウト来日から
始まります(1933年)。

建築学科を出た人間にとっては、
タウトと言えば桂離宮。
桂離宮と言えばタウト。
(そういえば観に行ったことないな…)

ちなみにタウトはモダニズム建築代表の
ミースとコルビュジェのことを
フォルマリズム(形態主義)と言って批判していた人。
フォルム(建築のカタチ)優先で
場所と建築を「繋ぐ」ことをおろそかにしている、という批判。
モダニズムは「切断主義」だとも言っている。

確かに、サヴォワ邸やバルセロナパヴィリオンは
「庭付き一戸建て」じゃないよな。住みたくない。
どこにでもポコっと移築できそうだし。

あとは、建築って何かと二項対立するよね、という話しが
とてもおもしろい。

タウトの、桂離宮(雅!)vs日光東照宮(キッチュ!)。
これは王朝文化vs武家社会でもある。
関西vs関東とか、ヨーロッパ的なるものvs日本的なるものとか。
他に、縄文vs弥生論争とかあるんだけど、
私的にはどっちがどっちやねん、です笑
藤森照信先生の縄文建築ファンではあるけれど、
こういう二項対立の話しではなかった気がするので
私も「縄文派」とは言いたくないな。
建築の思想的な話し、なにかと「どっち?」って選ばせるムーブ、
やめた方がいい。

とはいえ、二項対立あるあるで言ったら、
私は猫派でありたけのこ派である(断言)。

学生時代はあまり流派とか建築スタイルとかよくわからなくて
(今もよくわかってない)、
でもなんとなく伊藤忠太と藤井厚二(聴竹居)は好きだったので
二人が師弟だったという話しは良かった。

あと清家清の「私の家」が好きなんですが。

そういえば、この本の後半ではレーモンド自邸の複製
(パトロンである井上房一郎邸)が紹介されています。
小さな家が二棟に分かれていて、真ん中にパティオがある。
屋根はあるけど、壁はない。
風通しの良いほぼ「外」空間。
ビビッときた。
この空間が好きだ。

私は多分、半外空間が好きなんだな。
バルコニーは違うんだ。どちらかというと土間の方が近い。
「私の家」の土間も良いけど、移動畳が最高に良い。
実家の縁側も好きだった(猫もいたし)。
良い歳にして自分の好みがようやく理解できたぜ。
マンション暮らしだけど。

あ、あと団地も好きなんだ。
51Cはほんと、好き。
田の字プランも好き。
都営団地に住んでみたい(風呂はベランダにつくる)。

という感じで、戦前戦後を通じての日本の近代建築史を
概観したあと、隈先生は「ぼく」の建築話しで本をまとめます。
めっちゃ有名な建築家だと思っていたけれど
大型建築の発注がない10年間(90年代)とかあったんだなあ。
と、いきなり等身大の話しにしみじみする。
うまいこと本を畳んだなっとも思ったけれど。

でも良い勉強になる本。
名建築巡りにでかけたくなりました。
(そういえば隈研吾設計の富山のガラス美術館は
吹き抜けから見る断面が良かった。
構造に関係ないルーバー(固定)は意味が気になった)
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『ハワイの歴史と文化: 悲劇と誇りのモザイクの中で』

2024-06-17 15:54:59 | 日記
『ハワイの歴史と文化: 悲劇と誇りのモザイクの中で』
矢口祐人

そういえば「ハワイ=楽園」以外の印象とか
歴史とか、考えたことなかったな…。

と、突然気付かされるタイトル。
思わず読んでしまった。
空前絶後の円高なのに。(だからか?)

アメリカ文化研究が専門の先生による、
ハワイ文化入門書です。
4部構成ですが、まずは「移民」から現代に向かい、
最後に「ネイティブハワイアン」の歴史へ戻る。
あえて時系列ではない構成、珍しいなと思いつつ、
これがなかなか読みやすかったです。

日系移民の話しは完全なる他人事でもないというか
導入としてやはり強いですよね。
ピクチャーブライドという単語は知らなかったけれど、
写真だけでお見合いして異国に嫁いだら全然違うじゃん、って
中世貴族が絵画交換してお見合いしてた頃と
変わってない。

官約移民の悲劇だと、小説『ワイルド・ソウル』を思い出す。
こちらはブラジルだけれど。

あと、元々は自生していた白檀をアメリカが
中国に輸出していたというのは知らなかった。
採り尽くしちゃった後に、サトウキビを移植したそうです。
元々サトウキビが生えていたわけではないんだな。

戦争中の日系人や韓国系の人々の辛い立ち位置も
改めて読むと考えさせられる。
日本人ではあるけれど日本国民ではない、という意識は
なるほどなあと。
いろんな国の歴史をこつこつ学んでいけると良いなと思います。
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『読んでいない本について堂々と語る方法』

2024-06-14 15:50:19 | 日記
『読んでいない本について堂々と語る方法』
ピエール・バイヤール
大浦康介:訳

パリ大学教授による、
「本を読んでなくても会話できるよ」本。
なんだそれ。

中身としては、
古今東西の書評・小説・映画から
「本を媒介としたコミュニケーション」を例に挙げて、
様々な“読んでない”人とそのふるまいを分析している
やや心理学や哲学的な内容。
とはいえ、ちょっとふざけた感じの文体で
ライトに読めます。

あれだ。
森見登美彦の京大詭弁論学部だ。
様々な人間臭い「読んだふり」に対して、
よくまあこんなに深く考察できるものだなあ、という感じだ。
(ちゃんと感心しています)

ちなみに、有名(だけど読んでない人多いよね)本が多数取り上げられていて。
薔薇の名前』『第三の男』『ハムレット』『吾輩は猫である』...
これらを「読んだふり」できる手法が書かれているのかなあ、
お得!!と期待すると、それは微妙に間違いです。

これらの参照本は、どれも「読んでない本について語る」シーンがあって、
(「猫」の迷亭くんは架空の本の話で苦沙味先生をおちょくっている)
その周辺の登場人物の振る舞いを分析している、
という構成なのです。
決して、ポール・ヴァレリーの作風を
ひとことで言い表す便利なコトバが載っているわけではない。
ちぇ。

それはそれとして。
ポイントなのは、
誰かと会話する際に、議題である「本」を
読んでいる必要はない、ということです。

決して
「本を読むことそのものが必要ない」
と言ってるわけじゃないのです。
個人としての読書時間は大事。

あと、この作者、なんだかんだで結構読んでる。
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『興亡の世界史 シルクロードと唐帝国』 なんか怒ってるんだけど

2024-06-10 08:45:11 | 日記
『興亡の世界史 シルクロードと唐帝国』
森安孝夫

<興亡の世界史>シリーズなので
うっかり手にとったのですが。

序文の思想が強火すぎる〜。
先生、なんでそんなに怒ってんの?
そしてなんでそんなに序文長いの?

なんとか読み進めて本文へと辿り着いたぜ。
と思ったら、めちゃくちゃ文章がわかりにくい。
難易度高めの情報を怒りながら投げつけてくる感じです。

序文で「歴史の教師にこそ読ませたい!」と言っていたし、
私はお呼びではないんだな、、、

ということで140ページほどでギブです。

シルクロードやソグド人の歴史は知りたいので、
何か良い本はないだろうか。
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