語る、シェフ

小さなレストランのオーナーが、日々の出来事を語ります。

  スゥイートポテトのお話

2008-10-30 01:35:54 | スウィートポテトのお話
そもそも人生20年も生きていると、だいたいその人の傾向というものがある。たとえば、人の世話をするのが好きな人は、結局のところ一生人のごたごたに巻き込まれて生きていく。異性に縁のない人は、よほどうまくチャンスをつかまないと一生縁のないままに終わる。しかし、人というのは不思議なもので、「僕の人生はそんなもんだ。」と思い込み始めると、たいして腹もたたない。妙に納得してしまうものだ。人とは、つまるところ、どんな傾向を持った人でも、その傾向のもとに、苦しみ、そして楽しみ、それなりに納得して生きていけるものだ。

そんな事を、1K、家賃7万円の部屋で、半分自分への慰めのつもりで煙草をふかしながら考えていると、ドアが2回ノックされた。
僕は新聞か何かの勧誘だと思って答えなかった。
すると、「コン、コン」と、またドアがノックされたので、しかたなくキッチンを通りドアの前に立ち、
「どちらさまですか?」
と、ていねいに尋ねた。すると、しばらく間を置いて・・・
「スゥイートポテトですが・・・。」
と、申し訳なさそうに答える声が聞こえた。

もちろん僕には、スウィートポテトの知り合いはいなかったので、どうしようかなと思ったけど、
悪いスゥイートポテトなんて聞いた事が無かったので、鍵をはずし、ドアを開けた。すると信じられない事だけど、身長130cmぐらいのスゥイートポテトが、もじもじしながらそこに、立っていた。
そして彼は(スゥイートポテトに男女の区別があるかどうかは、わからないが・・・)
やはりもじもじしながら言った。「こんにちは。わさびさんですね。私はこういうものです。」と、名刺を差し出した。そこには、
「スゥイートポテト傾向対策委員会 営業主任 スウィートポテト」
と、記してあった。
僕は名詞と彼を交互に見ながら事態がうまく呑み込めなかった。彼は、相変わらずもじもじしながら、こう言った。

「あなたも傾向について研究なさっていると聞きまして、是非、お話を伺いたいと思いお尋ねしました。よろしいでしょうか?」

  では、また明日。

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