Sightsong

自縄自縛日記

TRY ANGLE/原田依幸+井野信義+山崎比呂志@なってるハウス

2019-09-29 09:47:24 | アヴァンギャルド・ジャズ

入谷のなってるハウス(2019/9/28)。

Yoriyuki Harada 原田依幸 (p)
Nobuyoshi Ino 井野信義 (b)
Hiroshi Yamazaki 山崎比呂志 (ds)

「TRY ANGLE」とは、山崎比呂志とレイモンド・マクモーリンとのデュオに井野信義が加わったトリオ(2019年7月)を契機として、山崎・井野のふたりと誰かが組むトリオのシリーズになったようである。いまのところ纐纈雅代(8月)、そして今回の原田依幸、来月は林栄一。

このメンバーならば「こんな感じ」というものは事前にわかっている。しかし実際に目の当たりにすると圧倒的な「こんな感じ」。つまり静的ではなく動的な生きた様式美。

山崎さんのドラムスはとてもカラフルであり力強い。かといって手元での音は非常に繊細でもある。これほどまでに確信とともに出される音は経験のなせるわざだろう。井野さんのコントラバスが受けとめる音は幅広く、その都度、思考してはすばやくアクションに移すプロセスが露わにされている。弓で攻めるか、あるいはピチカートに移行するか、そのあたりの悩みと結果としての音とが興奮させる。そして今回のゲスト原田さんは、ヤバいほどの慣性と覚悟とを持って音領域全体を中から力技で右へ左へと動かす。普段とは違って唯我独尊でピアノを弾き終えるのではなく、着地点を目指して鍵盤を叩いたり収束させたりするのも面白かった。

この3人が協力してどどどどどと地響きを立てて走るなんて、日本のフリージャズの究極的到達点ではないのか(大袈裟?)。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4

●原田依幸
原田依幸+纐纈雅代@なってるハウス(2019年)
原田依幸+宅Shoomy朱美@なってるハウス(2018年)
原田依幸@アケタの店(2018年)
原田依幸+川下直広『東京挽歌』(2017年)
原田依幸+後藤篤@なってるハウス(2017年)
生活向上委員会2016+ドン・モイエ@座・高円寺2(2016年)
一噌幸弘『幽玄実行』『物狂 モノグルイ』(JazzTokyo)(2011年)
「KAIBUTSU LIVEs!」をエルマリート90mmで撮る(2)(2010年)
原田依幸+鈴木勲『六日のあやめ』、『一刀両断』(1995、2009年)
くにおんジャズ(2008年)
「KAIBUTSU LIVEs!」をエルマリート90mmで撮る(2007年)
生活向上委員会大管弦楽団『This Is Music Is This?』(1979年)
『生活向上委員会ニューヨーク支部』(1975年) 

●井野信義
山崎比呂志+レイモンド・マクモーリン+井野信義@なってるハウス(2019年)
藤原大輔『Comala』(2018年)
Poem of a Cell Sound / Film Installation & Concert in Tokyo@ドイツ文化センター(2018年)
ニュージャズホールって何だ?@新宿ピットイン(2018年)
安田芙充央『Forest』(2015-16年)
峰厚介『Plays Standards』(2008年)
アクセル・ドゥナー + 今井和雄 + 井野信義 + 田中徳崇 『rostbeständige Zeit』
(2008年)
井野信義『干反る音』(2005年)
沖至+井野信義+崔善培『KAMI FUSEN』(1996年)
高瀬アキ『Oriental Express』(1994年)
内田修ジャズコレクション『高柳昌行』(1981-91年)
内田修ジャズコレクション『宮沢昭』(1976-87年)
日野元彦『Flash』(1977年) 

●山崎比呂志
山崎比呂志+レイモンド・マクモーリン+井野信義@なってるハウス(2019年)
ニュージャズホールって何だ?@新宿ピットイン(2018年)
レイモンド・マクモーリン+山崎比呂志@なってるハウス(2017年)
レイモンド・マクモーリン+山崎比呂志@なってるハウス(2017年)
山崎比呂志 4 Spirits@新宿ピットイン(2017年)
阿部薫+山崎弘『Jazz Bed』(1971年)


松丸契『THINKKAISM』

2019-09-29 09:27:24 | アヴァンギャルド・ジャズ

松丸契『THINKKAISM』(Somethin'Cool、2019年)を聴く。

Kei Matsumaru 松丸契 (as, ss)
Hideaki Kanazawa 金澤英明 (b)
Akira Ishii 石井彰 (p, rhodes)
Shun Ishiwaka 石若駿 (ds, kalimba, perc)
Naoki Takahashi 高橋直希 (ds)

コルトレーンの「Welcome」のカリンバに続く濁らせたサックスにまず耳を捉えられる。「Ichiro」においてはピアノとのユニゾンから次第に発展する面白さがある。タイトル曲ではツインドラムスがどしゃめしゃに叩き、ピアノとベースが別の時間スケールで暴れる上でのアルトが勇猛に飛翔し素晴らしい。

「Sail」では鈴とピアノの和音、これに静かに整合させるようにローンチするアルト。輝くピアノと並走する金澤さんの粘るベースも存在感がある。「April Fools」は変わった曲だが、ゆったりと進むアルトと絡むピアノ、ここにおもむろに入って疾走するドラムスに動悸がする。一転して「Dad Milkman」はドラムスが主導し、カリプソ風かと思いきや奇妙なコードでサックスがうねる。キーボードが楽園的で濁ってもいてとてもいい。「Parsley Sparsely」ではリズムを壊すアルト、曲の中の権力構造がひっくり返っている。ここに遊ぶように共演者が策動を仕掛ける。パセリを散らした創作料理風。

ゆったりしたコントラバスから始まる「View Figure 1a」、ソプラノでの関わり方が面白く、急に音風景が変わる。へんな時間の進行だが、その間隙をピアノとドラムスが突いてきて時間進行を奪おうとするようだ。そうか、コードとメロディとが別々のスケールなのか(ライナーノーツ)。

「Star Field」ではキーボードがエネルギーの底を持ち上げ(カッコいい)、ドラムスが断続的にそれを跳躍させる。ソプラノは哄笑するように遊泳する。最後の「A Thousand Blushes」における尋常でないブラシは水をこぼすと一瞬で蒸発する鉄板のようで、その上でゆっくりと懐かしい物語をうたうソプラノ、ピアノ、ベース。

聴けば聴くほどユニークであり、それが現代ジャズのまん中に降りてきた感がある。

●松丸契
纐纈雅代+松丸契+落合康介+林頼我@荻窪ベルベットサン(2019年)
m°Fe-y@中野Sweet Rain(2019年)
SMTK@下北沢Apollo(2019年)