Sightsong

自縄自縛日記

大前チズル『Royal Folks』

2019-09-02 22:28:02 | アヴァンギャルド・ジャズ

大前チズル『Royal Folks』(mille Grues Records、2017-18年)を聴く。

Chizuru Ohmae A Piece of JAZZ quartet: 
Chizuru Ohmae 大前チズル (p)
Tsutomu Takei 武井努 (sax)
Norihide Nakajima 中島のりひで (b)
Takehiro Shimizu 清水勇博 (Drums)
Guests:
TeN (vo)
Yasuhiro Yoshigaki 芳垣安洋 (ds)
Taisei Aoki 青木タイセイ (keyboard harmonica)

もうずいぶん前に、関西の友人から、大前チズルさんが東京で演奏するから観てと推してきたことがあった。そのときは行けなかったし、どんな編成だったかもまるで覚えていない。その友人とも連絡していない。最近大前さんのCD(初リーダー作)が出ると聞いて思い出した。

そんなわけで予感があってこれを買ってみた。なるほど、下から突き上げるようにグルーヴしていて、オシャレでもあって、生音の響きが大切にされていて、とても良い。ステキとはこのようなことを言う。青木タイセイさんのピアニカも気持ちいい。

ああ、関東でのレコ発ライヴは終わったばかり。観たい。


纐纈雅代+松丸契+落合康介+林頼我@荻窪ベルベットサン

2019-09-02 00:51:11 | アヴァンギャルド・ジャズ

荻窪のベルベットサン(2019/9/1)。

Masayo Koketsu 纐纈雅代 (as)
Kei Matsumaru 松丸契 (as)
Kosuke Ochiai 落合康介 (b)
Raiga Hayashi 林頼我 (ds)

この腹の座った面々はどうだろう。纐纈さんと松丸さんとは初顔合わせだそうである。

冒頭はポール・モチアンの「Last Call」。ふたりのアルトが和音とずれとを生じさせ、いきなり周囲の空間と融合する。ここで驚かせるように介入する林さんのブラシには確かにモチアン的なものがあった(が、すぐに林頼我自身となる)。落合さんのベースは最初だからか軽くスピードに乗っている。続いて松丸さんのオリジナル「Kassam Pass, EHP」(って何?)。ベースとドラムスとが可変速のリズムを創り、ここにM-Baseと共通する松丸さんのアルト。それに対して纐纈さんのアルトは対照的に野性であり、最初は獲物に向かって首を突き出している按配が、ノリを得て走った。3曲目の纐纈さんのオリジナル「天岩戸」では、艶っぽく揺れる本人のアルト、松丸さんは伴奏するふりをしながら伴奏になっていない異常な音を吹く。

そしてオーネット・コールマンの「Round Trip」はせーの、と全員で始めた。松丸さんのアルトは余裕で完璧なコントロールがなされている。リフの繰り返し、ときには「Salt Peanuts」みたいな変わったフレーズ、によって、オーネットらしさが出ているように思えた。残響を活かした落合さんのソロに続き、纐纈さんのアルトが暴力的とも言えるほどゴリっと自分自身のノリで入ってくる。途中におもむろに悦楽が飛び出してくるところが纐纈雅代だ。

セカンドセットは、各人が思い思いの曲を演奏するというコンセプトであったらしい(あとで告白タイムがあった)。松丸「Body & Soul」、落合「Tea for Two」、林「Lil' Darlin」、纐纈「Lonely Woman」。特に纐纈さんのブルージーな音、林さんの空間を横に移動してゆくような音が印象的。続いて松丸さんのオリジナル(曲名不明)。アルトのユニゾンが気持ちよく、素早く刻むベースと駆動するブラシに押されて、松丸さんが軽くスピードに乗った。これが纐纈さんになると、林さんはスティックに持ち替えてアルトとともに力強く演奏した。この、ブラシとスティックがこの曲でのふたりのアルトの違いのようで面白かった。火の中の歓びのような纐纈さんのアルトが素晴らしい。

ここで落合さんの面白い曲「Nicholstropy」。明らかに、セロニアス・モンクの「Epistrophy」のハービー・ニコルス版である。周りが演奏しては2小節か3小節くらいドラムスに与える構造がニコルスっぽい。作曲者本人も構造的に入り、纐纈さんのソロのときに目立つラインを弾いた。松丸さんは低い倍音を効かせて、鼓膜を直撃した。

続く纐纈さんの「卑弥呼」では、全員が前に転びそうなほど疾走した。纐纈さんは泡立つような直接的なエネルギーで自身の曲を吹き、対照的に、松丸さんは執拗なフレーズの発展で構造を創り上げた。執念と自信が垣間見えた。ナタで斬るような迫力のドラムス。最後にはアンコールに応えて「All The Things You Are」。ベースソロが見事だった。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●纐纈雅代
秘湯感@新宿ピットイン(2019年)
原田依幸+纐纈雅代@なってるハウス(2019年)
The Music of Anthony Braxton ~ アンソニー・ブラクストン勉強会&ライヴ@KAKULULU、公園通りクラシックス(JazzTokyo)(2019年)
【日米先鋭音楽家座談】ピーター・エヴァンスと東京ジャズミュージシャンズ(JazzTokyo)(2018年)
纐纈雅代@Bar Isshee(2018年)
纐纈雅代トリオ@新宿ピットイン(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年)
纐纈雅代@Bar Isshee(2016年)
板橋文夫+纐纈雅代+レオナ@Lady Jane(2016年)
纐纈雅代『Band of Eden』(2015年)
鈴木勲セッション@新宿ピットイン(2014年)

渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2014年)
纐纈雅代 Band of Eden @新宿ピットイン(2013年)
秘宝感とblacksheep@新宿ピットイン(2012年)
『秘宝感』(2010年)
鈴木勲 フィーチャリング 纐纈雅代『Solitude』(2008年)

●松丸契
m°Fe-y@中野Sweet Rain(2019年)
SMTK@下北沢Apollo(2019年)

●落合康介
m°Fe-y@中野Sweet Rain(2019年)
クリス・ヴィーゼンダンガー+かみむら泰一+落合康介+則武諒@中野Sweet Rain(2019年)
レイモンド・マクモーリン@本八幡cooljojo(2019年)
永武幹子トリオ@本八幡cooljojo(2017年)
立花秀輝トリオ@東中野セロニアス(2017年)
永武幹子@本八幡cooljojo(2017年) 

●林頼我
WaoiL@下北沢Apollo(2019年)
永武幹子+加藤一平+瀬尾高志+林ライガ@セロニアス(2018年)
林ライガ vs. のなか悟空@なってるハウス(2017年)
森順治+高橋佑成+瀬尾高志+林ライガ@下北沢APOLLO(2016年)