ロサンゼルスのMOCA(The Museum of Contemporary Art)はふたつ建物があって、ひとつが本館のGrand、もうひとつが分館のGeffen。今回Geffenにはじめて足を運んだ。
■ MOCA Geffen
本館とはやや雰囲気が異なる贅沢な空間。いくつか惹かれる作品があった。
映画作家のケネス・アンガー(『ルシファー・ライジング』など)による紙の作品「Puce Women」。どうしても強い執着を見出してしまう。
河原温の「I Got Up At...」。かれの多くの作品と同様に、定期的な記録である。昔はまるでピンと来なかった河原の作品が、いまとなっては、あまりにも切実な生存証明の意志として迫ってくる。
ブルース・ナウマンの「Four Corner Piece」。狭い通路の四隅にモニターが置かれ、角を曲がったらそのもうひとつ先の角にあるモニターに自分の後ろ姿が見える。もっと見ようと歩くとそれは消える。作為がシンプルに過ぎるがそれゆえ面白い。
■ MOCA Grand
再訪。抽象表現主義の名作が多く、中でもマーク・ロスコの作品が集められた部屋は圧巻だ。半年ぶりに足を踏み入れたがはじめて観るような新鮮さを持っている。
それ以外のものも面白い。ジョージ・ハームスの「California Landscaping」は土地に根をおろした人間の匂いを放っている。
ノア・デイヴィスは1983年生まれの若いアーティスト(シアトル生まれ、ロス在住)。「All Those Lost to Oh Well」は地に結びついたスピリチュアルなものへの妄想がいちど浄化されたように思えた。
ジョン・ケージによる「River Rocks and Smoke」。アパラチアでのワークショップにおいて、ケージは61の作品を作った。人間の意志よりも偶然性を重視し、水彩画を焚火の上にかざして煙の色を付けたものである。自然とアートとのかかわりのなかにケージの存在が置かれている。
ジャン=ミシェル・バスキアによる「Six Crimee」。囚人たちのゲームを題材にしつつ、固いシステムの中に囚われてしまう人への視線が形になっているように思える。