鮎川俊介の「幕末・明治の日本を歩く」

渡辺崋山や中江兆民を中心に、幕末・明治の日本を旅行記や古写真、研究書などをもとにして歩き、その取材旅行の報告を行います。

「企画展 渡辺崋山・椿椿山が描く 花・鳥・動物の美」について その4

2013-10-28 05:35:05 | Weblog

 田原市博物館には開館と同時に入りました。

 展示会場は、「Ⅰ 外国へのあこがれ 洋風画家たちの写実表現」、「Ⅱ 富貴花 牡丹は花の王様」、「Ⅲ 写実を極める 見えるがままに描く-スケッチや縮図」、「Ⅳ 絵の広がり 絵の中にメッセージ」、「Ⅴ 崋椿系への流れ」と、5つに分かれていました。

 東京で行われる展示会とは違って(たとえばサントリー美術館の「谷文晁」展など)、展示会場は開館間もないということもあって混雑もなく、ゆっくりと一つ一つの作品を鑑賞し、解説文も丁寧に読むことができました。

 「Ⅰ 外国へのあこがれ 洋風画家たちの写実表現」で出てくる画家は、宋紫石や秋田蘭画の小田野直武、金子金陵、レーゼル(「昆虫書」)など。

 宋紫石(そうしせき・1715~1786)は、中国人かと思ったら実は日本人。

 「作家・作品解説」によれば、江戸で生まれ、本名は楠本幸八郎。

 「宋紫石」の名は宝暦8年(1758年)に来日した中国人画家「宋紫岩」にちなむという。

 長崎で沈南蘋(しんなんぴん)派の熊斐や宋紫岩に絵を学び、江戸で広めた人物。

 秋田蘭画の小田野直武にも影響を与えた、という。

 崋山の旧蔵書には平賀源内(1728~1779)がまとめた本草書である『物類品隲』があり、その六巻の内、五巻に宋紫石が挿絵を提供していることから、崋山が宋紫石の絵をみていることは確実です。

 小田野直武(1749~1780)は、秋田藩内角館城下の武士。江戸へ出た直武は、平賀源内のもとで西洋画の理論・技法を学んでいます。

 代表作は「不忍池図」。

 その「鷺図」などをみると、洋画の影響が見られるし、何よりも左下隅に小さく描かれる池の遠景により空間の広がりを感じることができます。

 「視覚的な遠近感」が強調されているのです。

 金子金陵(生年不詳~1817)は、旗本寄合席大森勇三郎の家臣。通称平太夫。

 画を谷文晁(1763~1840)に学んだといわれ、沈南蘋(しんなんぴん)風の花鳥画を得意としたという。

 崋山・椿山・滝沢琴嶺(馬琴の長男・1798~1835)の絵の師として知られる。

 この金子金陵の一連の花鳥画の風合いをみてみると、その風合いは崋山や椿山にも共通するものが感じられ、崋山や椿山は、文晁の花鳥画だけでなく、この金陵の花鳥画にも強く影響を受けていたのでは、と思われました。

 

 続く

 

〇参考文献

・展示図録『渡辺崋山・椿椿山が描く 花・鳥・動物の美』(田原市博物館)



最新の画像もっと見る

コメントを投稿