鮎川俊介の「幕末・明治の日本を歩く」

渡辺崋山や中江兆民を中心に、幕末・明治の日本を旅行記や古写真、研究書などをもとにして歩き、その取材旅行の報告を行います。

2010.12月取材旅行「新川~江戸川~浦安」その1

2010-12-05 10:51:36 | Weblog
中川船番所資料館に入る前に、旧中川に架かる中川大橋を渡って右折し、なだらかなスロープを上がって都立大島(おおじま)公園の小松川南地区(風の広場)に入りました。

 広場はところどころに木々が繁る芝生広場となっており、その芝生広場を東に進んで荒川の見えるところに出ました。川幅の広い荒川の向こうには、荒川に沿って首都高速(中央環状線)が走っており、その向こうには小名木川からは見えなかった高層ビルが建っているのも見える。

 新川は、この公園の下を流れ、現在は荒川が流れるところを突っ切り、荒川の対岸へと流れていたことになります。

 階段を下り、道路を横切って荒川の堤防に出て、新川のかつての流れがあったあたりを確認した後に船堀橋の手前まで上流へと歩いた後、そこから中川船番所資料館へと戻って図書閲覧コーナーの図書を数冊閲覧。

 その後、外で昼食を摂ってから、旧中川と荒川そして新中川に架かる船堀橋を渡りました。

 新中川を越えたところで橋の右手の階段を下り、新中川の高い堤防を右手に見て下流へと道を進んでいきました。左手は高層住宅が建ち並び、「船堀一丁目児童公園」や「しらさぎ児童公園」、また名前のわからない小さな神社の鎮座する「船堀西児童公園」などがある。

 都営地下鉄新宿線の高架を潜ってしばらく進み、左手に「江戸川区船堀保育園」を見てまもなく、行く手に黒い櫓(やぐら)が見えてきました。

 この櫓の立っているところが、「新川」が新中川から始まるところであり、その奥に水門もありました。櫓の入口は、新川の遊歩道側にあって関所の門のようなものがあり、その門と石垣の下を潜っていくと広場があって、その広場に櫓は聳え立っています。高さは10mほど。

 まだ開放時間であり、櫓の中に入れるということで、ひのきの香りがする急な螺旋階段を上へと上がって行きました。まだ新しい施設のようで、もともとこのような建物がここにあったわけではなく、展望台として最近造られたものであるようです。

 展望台(物見台)へ上がると、窓板を上げた間から展望が開けました。西側には中川(新中川)と首都高速、そして荒川を隔てた向こうにビルの建ち並ぶ江東区以西の都心部が見え、東側には真っ直ぐに延びる新川の流れの両側に江戸川区の街並みが広がっています。

 もう一度西側を見てみると、荒川の向こうに都立大島公園(風の広場)の緑が横に広がり、その左手に水色の平成橋が見え、また緑の右手に東京スカイツリーが姿を見せています。

 平成橋は旧中川の、中川大橋からやや下流部に架かっているから、小名木川はその平成橋のやや右手の緑の向こうにあることになる。そのあたりとこの櫓とを結ぶ線が、かつての新川の流路ということになります。

 広重の「中川口」で言えば、左上の新川の雲に隠れた部分あたりから小名木川方面(中川船番所方面)を眺めると、現在においてはこのような光景が広がるということです。

 展望台で話を交わしていた年輩の女性が2人おり、眺めを堪能した後、

 「ここから船堀駅は近いですか」

 とお聞きすると、船堀駅までの道筋を丁寧に教えてくれました。

 「ここはまだ新しい施設ですね」

 「まだ新しいですよ。この下に見える新川は江戸川までつながっています」

 「あの遊歩道は、江戸川までずっと続いてるんですか」
 
 「途中で終わっているけど、江戸川まで川沿いに行けますよ」

 「どれぐらい時間がかかりますか」

 「1時間ちょっとで行けると思うけどね」

 この2人のおばちゃんは、ウォーキングの途中であるらしく、

 「40分ほど毎日歩いているよ。歩くのは体にいいからね」

 新川では「はぜ」が釣れるらしく、「旦那も釣っているけれど食べることはしない」。

 「千本桜の植樹が行われて、比較的育った桜の木を植えたから、春にはきれい咲きますよ。でも植えた木の間隔が狭いから、大きくなると虫がついて近所の家が迷惑するかも知れないね」

 などといったことも教えてくれました。

 お礼を言って階段を下っていくと、小学生らしい子供たちが数人はしゃぎながら上がってきました。

 櫓を出て、中川と新川の間にある水門の右横の堤防の上まで上がってみました。ここから新川の流れを背後に確認して、中川船番所方向を眺め、中川口からの新川の流路をふたたび確認。

 そこから、おばちゃんに教えられた通り、新川沿いの遊歩道を宇喜田橋まで歩き、そこで左折して船堀駅へ。

 新川遊歩道は欄干のあるまだ新しい木造橋(人道橋)が何ヶ所か架かっていて、それがそれなりの江戸情緒を醸(かも)し出す効果を見せていました。

 夕刻や夜にはこの川筋はどのような景色になるのか、特に桜の咲いた頃の夜景はどのようなものなのか。一度その時分にそぞろ歩いてみたいものだと思いました。


 続く


○参考文献
・『広重「名所江戸百景」の世界』(川崎市市民ミュージアム)


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