鮎川俊介の「幕末・明治の日本を歩く」

渡辺崋山や中江兆民を中心に、幕末・明治の日本を旅行記や古写真、研究書などをもとにして歩き、その取材旅行の報告を行います。

2011.12月取材旅行「成田および佐倉」 その2

2011-12-12 06:15:03 | Weblog
 「うなぎ」がこの成田新勝寺参道の名物であるらしい。

 この「表参道」というのが、かつての「成田道」。

 白壁の二階部分に、「助六」の浮世絵風の大きな絵が掲げられているのも、この成田新勝寺が歌舞伎と深いつながりがあることを示しています。

 あと目に付いたのは、歩道際に置かれている干支(えと)の動物を彫った石造物。これは比較的最近に造られ置かれたものであるようです。

 大理石製の休憩用の椅子や腰掛けなども、表参道のあちこちに置かれています。

 蛇がとぐろを巻いている石造物の、参道隔てた向こう側には、「成田銘酒 長命泉」と書かれた額の掛かる蔵元の建物があり、その左脇へと入る道筋には、醸造工場と思われる黒板壁の建物が続いています。

 店先には「成田表参道 唯一 酒造直売」の横断幕。

 ここで表参道は左へと大きくカーブし、両側にはさまざまな商店や飲食店、土産物店などが並んでいます。

 左手にあった「上町商店街振興組合案内図」を見ると、この表参道は、「表参道開運通り」という名前が付いており、一方通行となっているのがわかります。その通りの先で、道は二股に分かれ、右手の道の先が「至成田山」となっています。

 その「案内図」のある駐車場の先、やはり左手にあった大きな和菓子の店が「米分本店」で、中に入ってみると、「御礼参り贔屓(ひいき)船之図」という浮世絵が掲げられていました。
  
 解説によると、江戸から船での成田詣では、江戸川をさかのぼり、関宿から利根川を下って、木下(きおろし)、安食河岸に出て、そこから成田へ向かったという。この図は、大願成就の御礼のために、大絵馬を奉納する歌舞伎役者の一行を描いたもので、後方に描かれた山は筑波山であろうか、とも記されています。

 江戸→江戸川→利根川→安食河岸→成田新勝寺という成田詣のルートもあったということだろうか。

 しかし「成田山奉納額面」と歌舞伎役者一行が乗っている手前の船は、利根川高瀬船ではなく、「木下(きおろし)茶船」であるように思われます。またその向こうの、船頭が長い櫓を操る船も、帆船ではあるけれども、実際の利根川高瀬船とは似ても似つかない船。

 ほかにも利根川を航行する、乗客多数の船が描かれていますが、これも「木下茶船」であるように思われます。

「應需豊国画」とあるから、作者は「歌川豊国」。「應需」とは「もとめに応じて」ということであるから、誰かの求めに応じて歌川豊国が描いたもの。何代目の豊国かはわからない。版元は「東都本郷四丁目丹波屋半治郎」となっています。

 表参道開運通りの突き当り、二股に分かれているところの左手に「薬師堂」バス停(千葉交通バス)があり、その通り隔てた向かい側に「三橋屋鷹女(みつはしやたかじょ)の像」というのがありました。大正から昭和に至る女性俳人で、成田町成田(現在の成田市田町)に生まれたとのこと。

 先に「天ぷら うなぎ 三はし」というえんじ色の暖簾(?)を見掛けましたが、「三はし」は「三橋」で、「みつはし」と読むようです。

 この二股になったところの正面に「滝沢酒店」という二階建ての古い商家風の建物があり、その右手からやや下り坂になっている道が延びていて、それが成田山新勝寺へと続く道であり、かつてのいわゆる「成田道」。

 この坂へと入る手前までは、前に一度、歩いたことがありますが、ここから先は初めて歩く道。

 そのやや幅が狭くなった下り道に入ってみると、その坂道の両側には参詣客相手の、木造二階建てのさまざまな店が軒を並べており、門前町参道としての雰囲気を濃厚に醸し出していました。

 それは多くの参詣客を集めてきた成田山新勝寺の参道としての、古来よりの歴史を感じさせる風格をも漂わせていました。

 中には三階建ての旅館や、屋根の上に望楼のようなものを持つ大屋根の建物(旅館)なども混じっており、いわゆる「歴史的景観」が眼前に展開します。

 そして坂道の向こうには、新勝寺の境内らしき丘陵があり、そこに伽藍の一部らしきものが見える。

 坂道に入るまでは、予想もしていなかったことなので、この景観には強い感動を覚えました。

 この坂道は、丘陵上部から丘陵の下へと下りていく道(かつての「成田道」であり、新勝寺への参道)。その坂道の両側に参詣客相手の商店が軒を並べていることになります。

 この坂道の高低差とゆるやかなカーブが、独特の景観を造りだしている一つの要素になっているように思われました。


 続く


○参考文献
・『渡辺崋山集 第1巻』(日本図書センター)





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