鮎川俊介の「幕末・明治の日本を歩く」

渡辺崋山や中江兆民を中心に、幕末・明治の日本を旅行記や古写真、研究書などをもとにして歩き、その取材旅行の報告を行います。

2012.3月取材旅行 「宮原~上尾~桶川~鴻巣」 その4

2012-03-22 06:31:54 | Weblog
 「中山道 上尾宿 彩の国平成の道標」と刻まれた標柱は、「埼玉県大宮土木事務所」が建てたもの。そこには瓦屋根付きの立派な案内板があって、「上尾宿の歴史」の文章や「木曽街道上尾宿加茂之宮」(渓斎英泉作)という浮世絵、「五街道中細見記」の上尾宿付近の絵図、「鶴亀の松」の古写真、「鍾馗様」の写真などが掲載されています。

 よく見ると、その案内板の上の瓦屋根の上には、瓦製の「鍾馗様」が乗っかっています。小さな区画にある「標柱」と案内板ですが、これがあるのとないのとでは、「みちあるき」をするものにとっては大きな違いです。すっかりかつての景観とは変貌してしまっているものの、これを手がかりに過去の「歴史の記憶」を手繰り寄せることができるからです。

 上尾市域から桶川市域へ入ったのが11:32。

 「富士見通り」交差点を過ぎてまもなく、「桶川宿」と書かれた縦長の簡単な案内マップが歩道脇に立っていました。それを見ると、しばらく行くと右手に「木戸跡(下)」があり、同じく右手に「藤倉家の鍾馗様」があり、左手には「武村旅館」、「浄念寺」などがあります。「桶川宿本陣遺構」は右手にあり、「中山道宿場館・観光協会」や「市神社跡」などは左手にあることがわかります。そして右手に「木戸跡(上)」があり、ここで桶川宿が終わっている(鴻巣方面から来れば、始まっている)ことになります。

 簡単なマップですが、最近「桶川市」によって設けられたようで、まだ真新しいもの。これも「みちあるき」「まちあるき」をするものにとってはありがたい設備です。

 そこから2分ほど歩くと、道端に小さなお堂があり、その中に四角い石に彫られた地蔵立像がありました。花瓶に入れられて盛りだくさんに供えられている真新しい花が印象的でした。

 沿道に瓦屋根木造2階建ての重厚な商家がちらほら見られるになってきました。この沿道の商店街は「たちばな商店会」というらしく、街灯から垂れて風に揺れている旗に、「たちばな商店会 中山道六十九次 ここは桶川宿」と記されています。

 左手に重厚な木造2階建ての建物が現れ、それには2階に「旅館」と看板があって、1階の玄関付近に「武村旅館」とありました。そして玄関に「中山道 旅籠」という案内板があって、それによれば、桶川宿には、本陣・脇本陣のほかに多数の旅籠があり、その数は天保年間には36軒を数えたという。

 この「武村旅館」は、宿場町当時の旅籠の姿を今にとどめる貴重な建物であり、皇女和宮(かずのみや)が中山道を下向した文久元年(1861年)には、ここで「紙屋半次郎」なるものが旅籠を営んでおり、現在の間取りはほぼ当時のまま引き継がれているとのこと。

 その1階間取りというのは、中山道から入って土間から廊下に上がれば、両側に六畳や八丈の部屋が横並びに続くというもの。廊下の突き当りを右に曲がれば「小便所」があり、また廊下突き当りの「板の間」から「湯殿」へ行くことができます。多くの旅籠はこのようなものであったのでしょう。1階には6部屋ほどあり、2階もおそらくそれぐらいの部屋数であったでしょう。現在もしっかり営業しているようです。

 左手に「桶川名物 べに花まんじゅう」と看板が掛かるお店がありますが、その商店もその右隣の家も、瓦葺2階建ての木造建築です。

 左手駐車場の奥にあったお寺は「浄念寺」(浄土宗)。朱塗りの「仁王門」(山門)の上には梵鐘が懸かっており、その鐘の美しい音色は桶川宿の隅々にまで鳴り響いたという。このお寺は「足立新秩父観音霊場」の札所でもあったらしい。

 その境内には、「絵師 狩野法眼伊白の碑」や「日本廻国供養塔」、「板石塔婆」などがありました。

 さらに「桶川宿」を進むと、「鮮魚 稲葉屋本店」や「御茶処」という看板が掛かったお茶屋さん(島村茶舗)や、「小林木材工業株式会社」など、瓦葺木造2階建ての重厚な建物が、両側のビルに挟まれるように建っています。「武村旅館」と同じように現在でもしっかりと開店営業しているのがうれしい。

 さらに左手には、土蔵造りと思われる2階建て漆喰塗りの商店もありました。これは1階のガラス戸にはカーテンが掛かっており営業はしていないようですが、側面を見ると奥に漆喰壁の土蔵のようなものが2つ並んでおり、相当な財力を持っていたと思われるような商店の構えでした。特に2階の上の屋根部分は分厚く頑丈で、また2階の通りに面したところの窓も観音開きの分厚いものであり、その窓(3つ)には金属製と思われる格子がはめ込んでありました。


 続く


○参考文献
・『渡辺崋山集 第2巻』(日本図書センター)


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