鮎川俊介の「幕末・明治の日本を歩く」

渡辺崋山や中江兆民を中心に、幕末・明治の日本を旅行記や古写真、研究書などをもとにして歩き、その取材旅行の報告を行います。

2010.8月取材旅行「九段下~大手門~皇居東御苑」 その1

2010-08-17 06:06:52 | Weblog
 東京メトロ東西線の「九段下」4番出口を出たのは、8:30ちょっと過ぎ。いきなり油蝉の暑苦しい鳴き声が聞こえてきました。

 出たところは、ちょうど昭和館の前で、その昭和館の周囲の木々の樹上で油蝉が鳴いているのです。

 その昭和館の右手に九段下の交番がありますが、その左手に「蕃書調所跡」の標柱と案内板が立っています。この交番や昭和館のある敷地一帯が、かつては蕃書調所で、ハリスやヒュースケンが滞在したところであり、また眞下専之丞や樋口大吉(樋口一葉の父)が働いていたところ。またここには多くの錚々たる洋学者が外国書(蕃書)の翻訳などのために働いていました。

 この案内板に目を通して、8:39に蕃書調所前を出発。九段下交番の前を、それを右に見て右折します。

 昭和館の特別企画は、「銃後の人々と、その戦後~出征遺家族の資料を中心として~」というもので興味をひきましたが、開館が10:00ということで、そのまま前を通り過ぎました。

 歩いている通りは「内堀通り」。ここは今まで何度か歩いている道です。右手に九段会館や旧千代田区役所(現在は「千代田会館」)を見て進みます。この「千代田会館」は、春、麹町を歩いた時に北の丸公園から竹橋を渡って、この前に来た際、観桜会が開かれていて、「牛ヶ淵」が見える堀際へと入って桜茶を無料でもてなされたことがあります。「牛ヶ淵」の向こうの石垣の上に桜が爛漫と咲き誇り、その上に武道館の屋根が見えていたことを思い出します。

 その「千代田会館」の左隣に、日本道路交通情報センター(JARTIC)や中部日本放送の入っているビルがありますが、その左側の奥にあるのが「清水門」になります。

 ビルの壁にはめ込まれている案内板によると、この「清水門」は、中世にこの地にあった清水寺にその名を由来するといわれているとのこと。それが江戸時代になると江戸城の一画に取り込まれ、北の丸への出入り口として利用されるようになったという。

 この「清水門」も、あの「桜田門」などと同じく、外桝形門(そとますがたもん)という構造で、高麗門と渡櫓門があり、その間に桝形が設けられています。

 隣接する田安門とともに、重要文化財(建造物)に指定されています。

 門内の北の丸は、明治から昭和戦前まで、近衛歩兵連隊の駐屯地となっていました。

 この「清水門」のところからビルは途切れて、内堀(清水濠)が右手に見えて来ます。石垣の上には鬱蒼と木々が茂っています。濠の水面はエメラルドグリーン。歩道には風にそよぐ柳の木が並んでいて、なかなか風情がありますが、幕末に、柳の木が植わっていたかどうかはわからない。

 内堀をまたぐ首都高速の高架の下は、「清水濠まちかど庭園」になっていますが、その高架の下を潜ると、間もなく「竹橋」の前の交差点に出ます。この「竹橋交差点」を、右に竹橋、左に毎日新聞本社が入るパレスサイドビルディングを見て渡り、渡ったところで左折(8:53)し、すぐに右折。堀沿いに進んでいきます。

 このあたりになると、内堀通りを時計の反対向きにジョギングをしている人たちの姿が多くなる。いつもながらの光景ですが、その人たちは、竹橋を渡って北の丸公園へと入っていきます。外国人ランナーも多く、走っている人たちの1割前後は外国人のようです。

 右手前方、堀越しに門が見えてきますが、これが「平川門」。堀に面した右手の広場では、樹陰で休憩をとっているランナーの姿が見られます。

 間もなく大きな石碑が現れますが、これは「江戸城築城五五十年」を記念したもの。江戸城が初めて築城されたのは長禄元年(1457年)のことだという。

 「平川門」の前に来たところ、前にここに来た時には開いていた橋の手前の鉄柵が閉まっていました。近くには、外国人観光客が7,8人たむろしています。鉄柵が閉まっているということは、皇居東御苑はこの時期、事情があって中には入れないようになっているのかと思って落胆していたところ、平川門の方から警護の警官が鉄柵に近づいてきたので、その警官に、「東御苑にはいつまで入れないのですか」と聞いたところ、「今から開けますよ」といって、鉄柵を開きました。

 時刻はちょうど9:00。開門時刻が9:00だったのです。

 鉄柵が開くと、先ほどたむろしていた外国人観光客が、早速、橋を渡って「平川門」を潜っていきました。

 皇居東御苑は通常通り入ることができることを確認して、私は、そのまま「平川門」前を通過して、「大手門」へと向かいました。


 続く


○参考文献
・『ヒュースケン日本日記』青木枝朗訳(岩波文庫/岩波書店)
・『江戸城を歩く』黒田涼(祥伝社新書/祥伝社)


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