鮎川俊介の「幕末・明治の日本を歩く」

渡辺崋山や中江兆民を中心に、幕末・明治の日本を旅行記や古写真、研究書などをもとにして歩き、その取材旅行の報告を行います。

崋山の「松岸より銚子ヲ見る図」 その2

2011-11-25 05:49:52 | Weblog
崋山の「松岸より銚子ヲ見る図」や「波崎ヨリ銚子を見る図」を見ていると、これはパノラマ写真と同じではないかと思われてきます。たとえばフェリーチェ・ベアトの幕末日本写真集の中に、横浜や長崎を写したパノラマ写真がありますが、あれと同じものを見ている感覚。左右へと長く延び、そして同時に奥行きのある、せいせいとするような広々とした空間を、横長の和紙の上に再現しようとしています。パノラマ写真であると、風景を横に順に写し、それをつなげていくわけですが、絵の場合は巻物のような横長の紙に一気に描いていきます。2枚の絵とも、船上や茶屋などから眺めた利根川と銚子湊の景観ですが、わずかな時間で、ここまで克明に描けるはずはない。素描程度であったものを、あとで時間をかけて仕上げたものではないか。家の一軒一軒、利根川高瀬船の碇泊情景、お寺の屋根、漁船や荷船の密集する岸辺の様子、背後の下総台地の起伏の様子などの描き方を見てみると、崋山は相当な力を込めて、この銚子の湊町や利根川の様子を描いているのがわかります。 . . . 本文を読む