うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

天狗風~霊験お初捕物控(二)~

2012年05月18日 | 宮部みゆき
 1997年11月発行

 お初の霊験と、目明かしの兄六蔵の捕物が事件を解決するホラー・ミステリー。霊験お初シリーズ第2弾は、一陣の風が吹いた時、娘が次々と神隠しに…。


第一章 かどわかし
第二章 消える人々
第三章 お初と鉄
第四章  武家娘
第五章 対決

 嫁入りを目前にしたおあきが、突然姿を消した。父親の政吉は、おあき殺しを認めて命を絶つ。
 お初と右京之介は、肥前守の命を受け、この神隠し事に乗り出すのだった。
 そして次に、八百屋長野屋娘であるお律が勾引される。お律もおあきと同じく、真っ赤な朝焼けの中、突風にさらわれるかのようにかき消えたのだった。
 そしてまたひとり…。
 人に見えないものを見る事の出来るお初は、お初にしか聞き取れない、人の言葉をしゃべり、化ける事も出来る、さながら化け猫の鉄が姉妹屋に加わり、お初の霊験が一層冴え渡る。
 霊験お初シリーズ第2弾としたが、これは独立した書籍として、2冊目という事であり、実はお初物は「かまいたち」の中に、「迷い鳩」、「騒ぐ刀」の2編が収録されている。
 最も、この時は、どちらかと言えば主人公は兄の六蔵であり、市井の捕り物劇にお初の霊験が加わったという形だった。
 その折りには、六蔵とお初の間の次兄の直次が、大活躍していたのだが、独立した物語となってからは、すっかり出番が回って来ないようだ。
 やはり右京之介とのコンビで、少しずつ深まる恋心も搦めながら話は進む。
 また、今回から新規加入の子猫の鉄。これだけのミステリー物の中に、化け猫も必要か? と思わなくもないが、鉄の人を喰ったような気質と、腹の中の声など、笑いの要素として受け止めれば、大変にユニークである。
 実は最近知ったのだが、人気時代小説は、コミック化されているらしく、コミック「天狗風」では、イケメンの直次が人気らしい。また、コミックの読者層を考えると、鉄の存在も大きいのだろう。
 確かに、推理サスペンス、ミステリー、ホラーを江戸を背景に織り込んだお初物は読み応えあるが、個人的には、六蔵の人情捕り物帳でも十分満足である。
 そうか、それでも茂七親分と被ってしまうからか? もしそうであれば、こういったひと捻りも素晴らしいアイディアだろう。
 
主要登場人物
 お初...日本橋通町一膳飯屋姉妹屋の妹
 およし...六蔵の妻、お初の義姉
 六蔵...通町の目明かし、お初の長兄
 根岸肥前守鎮衛...南町奉行
 古沢右京之介...算学の道場通い
 加吉...姉妹屋の板前
 文吉...六蔵の手下
 鉄...子猫
 和尚...老猫
 倉田主水...北町奉行所吟味方与力
 柏木十三...南町奉行所高積改役下役同心
 辰三...三間町の目明かし
 捨吉...山本町下駄屋政吉の弟子
 ※正徳2年(1712年)目明かし廃止令発布以前の為。



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