うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

つくもがみ貸します

2012年06月04日 | 畠中恵
 2007年9月発行

 古道具屋兼損料屋の出雲屋には、付喪神となり話したり動き出したりする古道具たちがいる。だが、主の清次とお紅とは決して言葉を交わさず、単に仲間同士で噂話に花を咲かせるのだった。
 ちょっぴり不思議なファンタジー小説。

利休鼠
裏葉柳
秘色
似せ紫
蘇芳 計5編の連作

利休鼠
 婿入りが決まった武士から、跡取りの証しである鼠の根付けが逃げ出したので、捕まえて欲しいと頼まれた清次。その下手人は意外なところにいた。

裏葉柳
 新たに料理屋鶴屋が開店する。だがそこは、幽霊騒ぎで有名な見世だった。店の品を収めに行った清次は、昼日中から幽霊を目撃してしまう。

秘色
 蘇芳という名に敏感な清次とお紅。それはお紅の良く知る男の俳号であり、蘇芳の香炉共々、男も姿を消していたのだ。
 
似せ紫
 火事で焼け出される前は、日本橋の古道具屋小玉屋の娘だったお紅。その頃、お紅を好いた男がいたが、その母親は得心せず、お紅に商いの才覚を示せと難題を持ち掛ける。

蘇芳
 お紅の待ち人である飯田屋佐太郎が4年振りに江戸に戻った。だが、その佐太郎が、4日もしないうちにまた行方知れずとなり、清次は探しに向かう。

 表題の付喪神が、リレー方式に語り手を務めている。「しゃばけ」シリーズ同様、付喪神が出てくるが、こちらの付喪神は、人との接触を嫌う。それでいて、どこか優しい。
 付喪神と清次、お紅との信頼関係が嬉しい一作。この作品に関しては完結して良いと思う。続編で下手にいじらない方が良いだろう。

主要登場人物
 清次...深川古道具屋兼損料屋出雲屋の主
 お紅...出雲屋を切り盛りする清次の姉
 野鉄...蝙蝠の根付けの付喪神
 月見夜...掛け軸のの付喪神
 うさぎ...櫛のの付喪神
 猫神...猫の根付けのの付喪神
 利休鼠...鼠の根付けの付喪神
 裏葉柳...青磁の香炉に身を代えた男
 五位...煙管の付喪神
 黄君...琥珀の帯留の付喪神
 お姫...姫様人形の付喪神
 唐草...金唐革の紙入れの付喪神
 青海波...守り袋の付喪神
 佐太郎...日本橋唐物屋飯田屋の総領息子 


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