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朝昼晩、時間を問わず飲んで喰って面白おかしく過ごす人生を歩みたいです。※旧名「日が沈む前に飲む酒はウマい」

いつでも戻ってきてください 飯田橋『びぜん亭』

2023年03月10日 | ラーメン、つけ麺など
年頭に三鷹の『みたか』さんを訪問したとき(→詳細はこちら)、
【接客のいい店ラーメン店】として、飯田橋の『びぜん亭』と、門前仲町の『こうかいぼう』を挙げた。
あくまで私個人の価値観であり、両店の接客が気に入らない方もいるかもしれないが、
長年支持を集めているこの2店が、本当に気に入らないとしたら、そいつは相当なひねくれ者だと断言できる。

ブログで店名を出したこともあり、最近の様子はどうかな…とネットで検索してみたところ、
驚いたことに、びぜん亭さんは3月末で閉店することが判明。
理由は不明だが、とにかく、びぜん亭さんのラーメンを久々に味わうべく、飯田橋に向かった。

訪問したのは二月某日。こちらが入口写真。ノレンの向こう側には店主の姿も見える。


入口ドアの脇には、閉店を知らせる貼紙が。わかってはいたけど、やはりさみしい。


夕方だったので並ばず入店できたが、その後も途切れることなく客がやってくる。
1階カウンター席は常に満席で、何人かは2階に案内される。私のように、閉店を知って駆けつけた客も多いようだ。
相変わらず、清掃もしっかりされており、厨房も客席も、店内はいつも清潔。
空いていたカウンター席に座らせていただくと、すぐに店主が「いらっしゃい」と挨拶し、笑顔を見せてくれる。
この店主の存在と笑顔こそが、びぜん亭最大の魅力である、と私は考える。

ハナシは逸れるが、相撲を廃業した天龍源一郎が、プロレス転向を決意した理由は、
全日本プロレスの社長・ジャイアント馬場が、初対面時に見せた笑顔だったそうだ。
初訪問時、店主が見せてくれた笑顔に、私も天龍と同様、「ああ、この方は信頼できる方だ」と思い、
その第一印象だけで、【びぜん亭店主の対応は素晴らしい】という評価が定着してしまった。

昔と変わらぬ笑顔に感激しながら、食べたことのなかった「わかめそば」850円と、「水餃子」550円を注文。
卓上にメニュー表などはなく、席の後ろ側の壁に、お品書きの札が掲げてある。
基本の「支那そば」など数種の麺類に、「餃子」や「ビール」に「日本酒」と、メニューは少数精鋭。
今「昔と変わらぬ」と書いたが、店主は現在70歳。逆算すると、私の初訪問時は50代だったことになるが、外観は変わっていない気がする。
無論、店主が老けていたのではなく、その温厚な雰囲気や、落ち着いた振る舞いから、もっと年長者だと勝手に勘違いしていたのだ。
店主は応対だけでなく、調理作業も丁寧で、完成したら、笑顔で再び「お待ちどうさま、○○(商品名)です」と提供。
会計を終えて店を出ていくまで、笑顔を絶やさない店主に、私も思わず、最敬礼せずにはいられなかった。

店主の人柄に魅了され、「あの御方のように、いつも笑顔で誰からも好かれる人間になるよう努力しよう」と決意…はせず、
「びぜん亭店主と比べると、頭にタオル巻いて腕組んで睨んでいるラーメン屋って、本当にバカだよな」と、
なぜか負の方向に感情が向いてしまう、私自身も大バカである。
ただ、そんなラーメン店も含め、雰囲気の悪い飲食店を拒むようになったのは、びぜん亭さんの影響があるかもしれない。

さて、この日頼んだメニューを紹介しよう。まずは味噌テイストのわかめそばが登場。


支那そばは醤油味だが、わかめが味噌味で、「ねぎ」は塩味、と最近知った。
お品書き札に「唐からし入り味噌」と記されているが、スープはそれほど辛くはない。


具材はわかめ、メンマ、チャーシュー、ネギ、画像では見えないけど、ひき肉も入っている。
細縮れ麺に塩分控えめの味噌スープが絡み、スルスルとお腹に収まっていく。
しばらくすると、丼に入った水餃子も完成。550円の割にはボリューミーであった。


以前食べた、焼き「餃子」500円と同じ、ニンニクが効いた野菜主体の餃子。水分を吸ったのか、以前より大きく感じる。
スープはたぶん、ラーメンと同じもの。タレなどで味付けされていないので、取り皿に分け、ラー油や胡椒を加えてみた。


味噌スープにも入れて食べてみたが、これも悪くはなかった。


そういえば、わかめそばのチャーシューがウマくて驚く。以前より味が濃くなったような?


何人かの客は会計時、「閉店するって聞いて食べに来ました」「学生の頃、よく通ってました」などと声をかけ、
店主も嬉しそうに応じている。びぜん亭さんが、大勢のファンに愛されていたことがよくわかる。
私もなにか告げようかと思ったが、後日再訪する予定だったので「ごちそうさまです」だけにしておいた。

ここまで、お店及び店主をべた褒めしているが、私がこちらに来たのは14年ぶり。
間隔が空いてしまった理由は、1.数年前の昼間にも来たけど、行列があり断念。
当時、飯田橋で日雇いの仕事をしていたのだが、休憩時間が1時間しかなく、待てなかった。

2.ラーメンの魅力に気づかなかった。
びぜん亭さんという屋号のとおり、店主は岡山出身だが、提供しているのは東京風のラーメンである。
荻窪『春木家本店』の「中華そば」を食べたときと同様、当時は派手で濃い味に慣れていた私には、
ケレン味のない醤油スープのラーメンを、やや物足りなく感じてしまったのだ。

3.常連客が不快だった。
繰り返しになるが、店主は常に笑顔を絶やさぬ好人物なのだが、そんな彼の温厚さに甘えているのか、
飲み客たちが、「おいオヤジ」などと上から目線で語りかけているのが、店主のファンとして腹が立った。
常連だかなんだか知らないが、年長者(先述したように、これは私の勘違い)に対し、そんな物言いはないだろう。
イヤ、年齢の上下に関係なく、店員さんに命令口調で語りかけるのは、迷惑かつ無礼だ。
以前も書いたが、私は飲食店で憎たらしい態度をとる客を許せず、しょっちゅうトラブルを起こす。
びぜん亭さんでもそのうち、「お前らその口調はなんだ」などと、ケンカを売りかねないなので、訪問を避けるようになった。
ちなみに、わかめそばを食べた日も、そのような口調の常連らしい酩酊客がいたが、店主もガンガン言い返していた(笑)。
そもそも、店主が客を許しているのだから、部外者の私が怒るのも妙だしね。

思い違いもあり、びぜん亭さんから足が遠のいたことを後悔しつつ、最後にもう一杯だけ食べておこうと、
つい先日、今年2度目の訪問。閉店まで1ヶ月を切り、さらに客足が増しており、
店主も「最近疲れちゃって」と嘆きつつも、普段と変わらぬ笑顔を見せてくれる。
注文したのはやはり、お店の看板メニューである支那そば650円に、「味付け玉子」100円を追加。
丼に醤油タレを注ぎ、野菜などを煮込んだスープを注ぎ、茹で上がった細縮れ麺を投入し、最後に具材を盛りつける。
いつもどおり、店主が愛情をこめて作成した、支那そば+味玉が完成。


チャーシュー、メンマ、青菜、ノリ、ネギに玉子。まさに正統派の醤油ラーメンだ。
まずはレンゲでスープを啜る。以前と変わらぬ、店主の人柄を表すような、優しい味わい。
小ぶりで柔らかなチャーシューは、今回もやはり、濃厚な醤油風味で絶品。
何度でも書くけど、チャーシューはピンク色の低温調理より、醤油で炊いた方が絶対ウマい!
味玉はこれまた、昔ながらの完熟仕様。おでんの玉子みたいで美味しい。


46年の歴史を誇るラーメンを、最後の一滴まで残さずじっくり味わった。


いろいろ考えたけれど、私の口から出たのは、いつもと同じ「ごちそうさまでした」であった。
店主は「はぁいどうも」と返答し、「またよろしくお願いします」と続ける。

近年、私以上にびぜん亭の味と店主に惚れ込んだ方たちが、お店に密着しドキュメント映画を作成。
作品のタイトルは、退店時の店主の掛け声「またいらっしゃい」から「COME BACK ANYTIME」に。
カムバックエニィタイムは、丁寧な言い方だと「いつでも戻ってきてください」になる。
映画のポスターが店内にも貼られており、私の隣席にいた、常連らしい女性客がそれを見ながら、
「タイトルみたいに、いつでも戻って、お店をやってくださいよ」とお願いしていて、さすがの店主も苦笑い。

おそらく、店主の意志は固く、びぜん亭はまもなく閉店するだろうが、
私も女性客と同じく、再開にわずかな望みを託し、今回のタイトルにさせていただいた。
退店後、お店の入口を再度撮影。店頭のライトが灯るのは、今月限りとなる。


最後に、映画のHPに掲載されている予告編の画像をスクショさせていただき、
店主の気さくな笑顔を掲載し、本稿の締めにする。


店主・植田さんとご家族や関係者の皆様、
長年にわたるびぜん亭の営業、ありがとうございます。いつまでもお元気で!



びぜん亭
東京都千代田区富士見1-7-10
JR飯田橋駅から徒歩約3分、地下鉄飯田橋駅からは徒歩約4分、九段下駅も徒歩圏内
営業時間 11時半~20時 
定休日 土、日、祝、不定休あるかも
※3月31日で閉店です。残り3週間、混雑が予想されるので、売り切れ早じまいに注意
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