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朝昼晩、時間を問わず飲んで喰って面白おかしく過ごす人生を歩みたいです。※旧名「日が沈む前に飲む酒はウマい」

時空を超える中華食堂 所沢『栄華』

2022年04月04日 | 中華食堂
似非レトロではなく、本当に懐かしい雰囲気のお店に心惹かれるわたくし。
今回紹介する『栄華』さんは、私が知る限り、もっとも「古き良き日本」を感じさせるお店である。
場所は所沢駅を出て、プロぺ通りを突っ切り、ちょっと進んだファルマン通りにある。
なお、プロぺはプロペラ、ファルマンは日本で初めて飛んだ飛行機の名称とのこと。
日本で初めて飛行場を開設した、航空発祥の地・所沢市らしいネーミングである。

ファルマン通りに到着した私は、いつの間にか飛行機ではなく、タイムマシンに乗せられていた模様。
近くにはタワーマンションも見えるのに、目の前にはなぜか、昭和の食堂が建っている。


初訪問時は、その、あまりにもオールドファッションすぎる外観(←言葉選んでるよ)に、
同行した友人と思わず顔を見合わせ、「どうする?」「…やめておこうか」と、入店することなく退散し、
近所の老舗中華食堂『早池峰亭』に行った記憶がある。

それから数年後、ネット記事や他人のブログなどで栄華さんの情報を入手し、
所沢在住の友人(さっきの友人とは別人)と、昼間の明るい時間に再訪してみることに。
ファルマン通りから入る脇道に、下記のサビついた看板があり、下部分の矢印に従い数歩進めば、


最初に紹介した、真っ赤なファザードの店舗がある。時刻は13時頃。意を決して入店。
女将さんに「お好きなお席にどうぞ」と声をかけられ、入口近くのテーブル席に座らせていただく。
昼酒を楽しんでいる先客がいたので、我々も遠慮なく、「ビール」(大瓶)700円と「レモンサワー」400円を注文。
ドリンクと一緒に、冷奴のお通しが出てきた。


料理の注文をする前に、店内壁に掲示してあるメニューを紹介。
まずは、我々のテーブルのすぐ横にある、ご飯ものや定食など。右端の「ライス」は250円。


こちらは、先客の退店後に撮影した、麺類や一品料理。「ラーメン」400円は格安だが、近年まで350円だったとか。
 ※毎度のことながらピンボケ失礼

まずは「野菜いため」400円と、「餃子」250円×2を注文。
しばらくすると、焼き上がった餃子が、市販のタレと一緒に提供され、


その数分後、野菜炒めもやってきた。お皿に謎の粉末が付着しているが、気にしない。


こんがり焼かれた餃子は、中身がほぼ野菜でニンニクもちゃんと効いている。
野菜炒めは、シャキッとした歯応えが残っている。家庭では出せない、強火で仕上げる中華食堂ならではの味わいだ。
こりゃイケる、と酒が進み、友人はレモンサワーを、私はウーロンハイ400円を追加注文。
目の前のTVでは、選抜高校野球を放映していた。野球を観ながら飲むビールは格別だね。


あと、TVの周辺に置いてある、旧式のラジカセが泣かせる。ウチにも昔、こういうのがあったなあ。
しばらくすると、調理を終えた旦那さんが、厨房から出てきて、我々と一緒に高校野球を観戦。
中継中の試合の状況や、地元埼玉勢の勝ち上がりなどを質問されたので、応じていたところ、
「オレも昔は、野球やっていたんだ」と言い残し、店内の奥に引き返すと、
下記のメダルを持ってきてくれた。「大宮の草野球チームで試合したときにもらった」とのこと。


メダルには「1961」と印字。今から61年前(昭和36年)だ。旦那さんの現在の年齢を聞いたら…ビックリ!
あの御歳で、鍋振りなどの調理をこなし、バイクで出前にも出かけるとは…。
旦那さんはさらに、当時使っていたという木製バットも見せてくれた。普通の袋に無造作に入れてあったので、
友人が「ちゃんとした箱とかで保管した方がいいのでは…」と告げる。申しわけないが、私もそう思った。

※袋からバットを取り出し、周囲のお客にも披露する旦那さん

「こちらのお店は、なんかの映画の撮影にも使われたんですよね」と私が質問すると、
旦那さんは「よく聞いてくれた!」とばかりに、下記の看板を持ってきてくれた。


暗くてわかりづらいが「検察側の罪人」という作品で、二宮和也や吉高由里子が来店したらしい。
さらに、テレビ東京「モヤモヤさまぁ~ず」ロケ時の記念撮影と、サイン色紙も見せてくれた。


その裏には、放映後にテレ東から送られてきた、「取材の御礼」の手紙もあった。
文の内容については明かさないが、テレ東のスタッフは誠実である。これからも「アド街」とか観るよ!

ここで女将さんも会話に加わる。旦那さんも自分も福岡県の出身で、同じ中学校で、お見合い結婚で…と、
初入店の我々に対しても、いろいろと語ってくれた。女将さん自身も野球好きのようで、
地元の西武ライオンズや、親類が通っていた日大二高の試合も、よく生観戦しているらしい。
「日大二は数年前、決勝まで行ったんだけどねえ…」という女将さんに、「2009年ですね」と即答する私。
「あら、よく覚えてるわねえ」と驚かれたが、私もその試合を球場で観ていたので。
ちなみに、結果はこちら。まあ、OBが優秀だからねえ…ムフフフ。

しばらくして、友人がツマミの追加を提案し、「麻婆豆腐をください」と、女将さんにお願いしたところ、
旦那さんに聞こえないよう小声で「あまりおススメできない」と教えてくれた(笑)。これ、書いたらマズいかな。
忠告に従い、「うまに」750円に変更。八宝菜というか、中華丼のアタマ部分、といった料理だ。


さっき頼んだ、野菜炒めと重なる具も多いが、妙に歯応えのいい食材が入っている。
くわいかと思ったら、なんと山芋であった。中華の食材に使われるのは珍しいよね。


お話し好きの女将さんに、「ラーメンも餃子もなぜこんなに安いんですか?」と質問をしてみた。
「あの人(旦那)が値段上げないって言うもんだから…もう何年も前から変わっていない」だって。
事実、これは壁に貼ってある、雑誌に紹介された記事のコピーだが、


「昭和40年からの営業で、お店は当時のまま」と文頭で説明し、最後にメニューを紹介しているが、
ラーメン350円、餃子(6個)250円、チャーハン550円、他と、先述したようにラーメンだけ50円値上げ。
旅行雑誌「じゃらん」に掲載された記事のようだが、発行は1999年!


消費税率や物価が上昇する中、23年間値上げしていないのである!
女将さん曰く「チャーハンはサラダを付けるようになったから、むしろ値下げ」と補足。
そういえば、別の壁メニューには「御飯物には生野菜(サラダ)が付いてきます。」との説明があった。


栄華の旦那さんも女将さんもおそらく、客が野菜不足にならないよう気遣ってくれているのだ。
そもそも昔の飲食店は、客と店員の関係が、今よりも親密であった。
愛想の良し悪しはともかく、学生や若者客には「しっかり勉強しなさいよ」「野菜残すんじゃないよ」などと、
叱咤激励してくれるおばちゃんや、厨房から声掛けしてくれるオヤジさんがいたものである。
チェーン店が増え、飲食店では注文や会計など、最低限の会話しかなくなった現在において、
こちらのご夫婦のように、コミュニケーションを取ってくれる方がいるお店は貴重である。
栄華さんは、店舗内外の見た目や料理の価格たけでなく、お客との距離感も昭和のままであった。

おふたりとの会話で酒が進んだが、その後、電話を受けた旦那さんが「急用ができた」とのことで、突然の店じまい。
2時間ほど滞在し、結構酔っぱらっていたので、ちょうどよかった。「また来ますね」とご夫婦に告げて退散。
その後『百味』で飲み、カラオケで歌い、私も友人もベロベロになり解散。
酔った友人が、私に有り金を預けやがったので、数日後、返金するため再び所沢へ。待ち合わせ場所は当然、栄華さんだ。
再度タイムマシンに乗り、昭和40年から変わらぬたたずまいのお店へ。

「前回はゴメンなさいね」と謝る女将さんに、気にしないでくださいと返答し、ふたりともさっそくウーロンハイを注文。
おつまみとして、私は「ワンタン」400円、友人は「焼肉定食のオカズ単品」を注文。
ワンタンは、想像どおりのビジュアル。具材はワンタン、チャーシュー、メンマ、ナルト、小松菜にネギ。


焼肉単品は、お店推奨の「生野菜」がたっぷり。なお、定食だと800円だが、単品の価格は不明。


ひと口もらった焼肉は、生姜の風味と甘じょっばいタレが相まって、めちゃくちゃウマかった。肉だけお替わりしたい!
一方、私が頼んだワンタンも、なかなかの絶品。醤油味のスープは、油は少なく臭みもなく、
けれども味に物足りなさはない、余計なモノを抜き去った、徹底した引き算のスープだ。
このスープ、炒飯とかご飯もののお供に最適だと思う。同額の「ラーメン」も、絶対ウマいだろうね。
主役のワンタンは計10個も入っており、昭和らしい、中身のひき肉が不在のモノ(笑)もあったが、


それはそれで、うどんのようで美味しく食べられた。400円という安価ながら、大満足である。
追加オーダーとして、前回から気になっていた、「麻婆豆腐」をお願い。
女将さんに「他とはちょっと違うけど…いいの?」と再確認されたが、「構いません!」と応える。
しばらくして、お肉とシメジが入った、栄華風麻婆豆腐が登場。単品価格はこれまた不明。


会計時、焼肉と麻婆の合計が1300円と判明したので、どちらも定食800円・単品650円かと予想される。
肝心の味の方は…トマトケチャップ由来のためか、辛くはなく甘酸っぱいテイスト。
女将さんが忠告したとおり、明らかに一般的な麻婆豆腐とは異なるテイストであった。

今回も女将さんと会話し、所沢市長がよく来店すること、最近、扇風機をやめて冷房を設置したこと(夏場は大変だった様子)、
たまに娘夫婦が手伝いに来てくれるが、彼女たちにも本業があるので、後継ぎはいないこと、なども教えてもらった。
後継者問題は、どのお店も抱えている悩みである。廉価チェーンがはびこり人件費も高騰する時代において、
労働時間が長く、薄利多売(特に栄華さんは)で儲けが少なく、しかも夏場はクソ暑い、
街中華を引き継ぎ、心身ともに健康な生活をしていくのは、相当大変なはずだから。
栄華さんの営業が、一日でも長く続くことを願いながら、我々はウーロンハイをお替わりしまくった。
時間はどんどん過ぎていき、22時を超えた。食べログでは22時閉店と記載されていたが…。
旦那さんに閉店時間を聞いてみたところ、「お客さんがいる間は閉めない」だって。
これぞ昭和の飲食店! と感激したものの、さすがに申しわけないのでお会計。
常連らしき客が残っていたし、店主が許してくれるとはいえ、あんまり長居するのも悪いしね。

店を出ると、プロぺ通りにはいつものように、バカそうな呼び込みが跋扈している。
時空を超えて現世に戻ってきたことを、イヤでも再認識させられる瞬間である。嘆かわしいねえ…。



栄華
埼玉県所沢市御幸町2-15
西武線所沢駅から徒歩約8分
営業時間 11時~22時くらい
定休日 不定休
※繰り返しになるけど、ご夫妻のためにも、極端な長居は避けてください
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2 コメント

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Unknown (hobohobo)
2022-04-07 09:04:25
相変わらず鋭く切り込んでますねー。
いろいろなメニュー情報、参考になります。

麻婆豆腐はそう来ましたか。
昔、ケチャップ味の担々麺というのを食べたことがあって、ビミョー… というのを覚えてます。

斜向かい「奈美喜だんご屋」のご主人が志村けんさんのお兄さんと大学の同級生で、毎年“ところざわまつり”の夜に「栄華」に集まって飲むのが恒例だったと、奥さんがおっしゃってました。
3年連続中止となっているお祭りですが、今年はどうなんでしょう…。
返信する
Unknown (日が沈む~(略))
2022-04-07 12:48:21
hobohobo様、
コメントありがとうございます。
東大和市駅の南側にある『傑作』というお店でも、
似たような味の麻婆豆腐が食べられるはずです(笑)。
当時は、天津飯のタレと間違えたのかな…なんて思いましたが。

団子屋さんには気づきませんでしたが、
栄華さんの手前のとんかつ屋さんは、いいお店のようですね。
所沢も、駅から少し歩くと、良店がたくさんあるようで、
面白い街ですね。
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