わにの日々-中西部編

在米30年大阪産の普通のおばさんが、アメリカ中西部の街に暮らす日記

バスターのバラード

2018-11-23 | 映画・ドラマ・本
 なかなか名前の覚えられない私が、監督の名前で見ようと決めるのは、どよ~んとした作風が特徴のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督(ブレードランナー2049メッセージ複製された男等)、想像力にいつもぶっとばされるギレルモ・デル・トロ監督と、ジョエルとイーサンのコーエン兄弟です。その最新作、「バスターのバラード(原題は、The Ballad of Buster Scruggs)」は、Netflixでの独占配信と聞いて、DVD化されて図書館に入るまで、暫くはお預けかなと思っていましたが、ネットには何でも落ちているもので… ありがたや、ありがたや。

 西部開拓時代を舞台にした、6つの短編のオムニバス。作品説明のウィキペディアはここですが、ネタバレなので注意。タイトルの「The Ballad of Buster Scruggs」は、第一章のタイトルで、バスター・スクラグは主人公の名前です。えらいテンション高くて、派手な格好のチャラい男は、実は凄腕のガンマン。歌いながら、アホみたいなパフォーマンスでボカスカ人を殺していきますが、ハーモニカ吹きの男と決闘して、あっさり殺されます。昇天しながらも陽気に歌っているバスター。いきなり、コーエン兄弟らしいユニークなお話でした。

 私が一番、好きなのは第4章の「金の谷」です。主人公のジッ様が魅力的なのと、「で、なんだったんだぁ~?」と、呆気にとられるお話(←褒めてます)の中で、これは観終わった時に「にしし…」と、笑える。金脈を探して地面を掘り返し続ける老人、ある日、遂に、ミスター・ポケットと彼が呼ぶ、金脈を掘り当てますが… 全編に飄々とした雰囲気が流れ、ちょっとしたどんでん返しもある。牧歌的風景の中で、殺し、殺され、生と死は紙一重。緑の谷、透き通った川、蝶の飛び交う野原と、本当に美しい。

 ポスターの絵は、6つの別方向に向かっていますが、むしろ、登場人物が向かうのは、第6章の馬車が向かっている「死」です。監督も、テーマは「死」だと言っていますが、見せたかったのは、様々な人生が唐突な終りを迎える直前の、その表情ではなかったかと思います。

 胸糞悪い話もあり、これをコーエン兄弟らしいトンデモなトール・テールとして楽しめるかどうかで評価が分かれそうです。でも、それを現実にこんな事もあったに違いない、現代でも形を変えて頻繁にある、と、サタイヤとしても取れるのかも?でも、深く考えずとも、面白いものは面白い。コーエン兄弟の作る映画は、やっぱ面白いわ~


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