わにの日々-中西部編

在米30年大阪産の普通のおばさんが、アメリカ中西部の街に暮らす日記

Widows/妻たちの落とし前

2019-02-17 | 映画・ドラマ・本
 日本では4月公開だそうです。また何とも安っぽい邦題を付けたものですが… 確かに、内容を反映しているといえないこともないですが、原題は「未亡人達」で、これだけでもカッコいいような気もするけどな。



 お話はタイトル通り、ヤマに失敗して警察に追い詰められ、逃走車もろごと爆発炎上しちゃった銀行襲撃集団の未亡人たちが、死んだ夫の盗んだ2億ドルを返せと脅され、襲撃団リーダーの残したノートをもとに、5億ドルの強奪を企むが、その背景に、議事選をめぐる陰謀やら、親子間の確執やら、人種問題や階級格差やら、DVやら、夫婦関係やら、汚職やら、まぁ、よくもこれだけ盛り込んだものだと感心するほどに、複雑に絡み合った事情があります。

 その中でも、今作のテーマといえるのは、女性のエンパワーメントでしょうか?昨年、一昨年には、#MeToo運動によって生まれた、女性の強さを強調する作品が、ブロックバスターから、インディペンデント作品に至るまで、ゴロゴロ公開されましたが、ピンからキリきりどころか大型ドリル級まで公開された、そんな作品群の中でも飛びぬけていると評されているのが、この作品で、私が興味を持って観てみたたのも、それが理由でした。あと、予告に出てたわんこが可愛い。

 いきなり、中年夫婦の激しいキスシーンから始まるので、おっさんとおばはんの濡場見たいか~と、辟易する間もなく、いきなり場面は、銃撃戦へ。奥さんは本当に、この後すぐ死んでしまう旦那のことを思っていたのね、と、切ない。シャワーを浴びるご主人(おっさんのシャワーシーン、見たいか~)に、スキットルでお酒を届ける奥さんとの無言のやり取りが、これが大仕事の前なんだと匂わせます。禊のような?で、今まで一度もヘマをしたことのない、この襲撃団のボス、ハリー(おやっさんアクションといえば、この人!な、リアム・ニーソン)が、今回は失敗しちゃった、と。

 ほかの3人のうち、一人は奥さんが目の周り黒くしてるし、もう一人はギャンブル狂いの旦那が、経営してるブティックのお金をむりやり持っていく(そのうえ、お店を担保にして、債権者に全部持っていかれちゃう羽目に)と、苦労しています。なんで、そんな男と別れない!?なのですが、精神的に依存しちゃってるんだろうな…って、とこに、旦那全滅。まずは途方に暮れる女性たちですが、議員選挙に参戦中の冷酷なギャングリーダーは、金返せ!って迫ってくるし、生活の糧はないしで、これは大きなヤマを当てるしかない!と、決意。4人の未亡人のうち、一人は危険を冒したくないと降りますが、一度、決意した女は強い!

 浮気、DV、ギャンブル狂いの犯罪者たちという、最低夫でも、頼って生きていた妻たちが、落とし前をつけるために一致団結。リッチなリーダーの奥様、ヴェロニカ(ヴァイオラ・デイビス 品と迫力があってぴったり)、ミシェル・ロドリゲス姐さん(重い札束を担いで走るの「無理~」とか言ってて笑った。普段のアンタなら、一人で、100キロの札束担いで100m11秒レベルで駆け抜けて逃走するくらい朝飯前だろw)。

 エリザベス・デビッキは、美人で若く魅力的なのに、暴力亭主から離れられず、夫が死んだあと、母親に勧められて(!)エスコートサービスを始めますが、クライアントを利用して情報を入手するなど「誰にも私のやっていることを馬鹿にはさせない!」と言い切れるほど強くなり、自分の体を自分の意志でどうこうするのはいいのよ!って、#MeToo以後の変化が見られます。尊厳の新しい社会規範といいますか… 逆に言えば、自分の意志に反して男性が何かするのは、絶対許さないよ!なのでしょう。

 #MeTooの普及しなかった日本でも、先日、「どろろ」6話で、戦の陣内で働いて孤児たちを養う美少女、みおが、どろろに、その仕事とは「おいらの母ちゃんが絶対にしなかった仕事(=売春)」だったと知られても、「(これによって子供たちを養っていけるから)私は恥じてない」と言ったと同じで、時代が変わりつつあるのを感じます。

 さて、強奪メンバーの4人のうち、3人は未亡人ですが、仲間になるシングルマザーのベル(シンシア・エリヴォ)は、初めから強い。昼間、美容師として働く他にも、ベビーシッターとして働いています。娘の面倒を見ていた母に「この子はずっと、あなたの帰りを待っていたのに」と言われても、「でも、1時間12ドルになるのよ!」と、バスに間に合うために走る。小柄だけど筋肉ムキムキで、美貌を武器とする、むっちゃ背が高くスリムなエリザベス・デビッキと対照的。ベルさんは、隠れ家にあるパンチバッグをバシバシ殴ってました。「未亡人たち」との対照としての、頼る男のいないシングルマザーが培った強さを見せたのかな?

 映画は、途中であっと驚く展開に。いや、こう言うお話にはよくあるパターンなんだけど、私は映画やドラマは、あんまり物事考えずに見てるせいか、全く予想してなくて、画面に向かって、「えーっ!?」でした。わんこの存在意義が、ここにあったのか、と、感心しました。襲撃前に、わんこを預ける場面では、もしも帰ってこれなかった時のために準備してるのかも、と、自分も犬を飼ってる私は胸につまされました。

このわんこはオリビアちゃん。
いろんな映画ラドラマに出ているスターらしい


 監督は『それでも夜は明ける』でアカデミー作品賞を受賞した『それでも夜は明ける』などで知られるスティーヴ・マックイーン、共同脚本は、『ゴーン・ガール』原作者で、映画化作品の脚本を執筆したギリアン・フリンのコンビ。執念で奴隷の身分から逃れた主人公を描く作品と、ひたすら「女は怖い」な作品を生んだ二人なだけに、なんだか凄く納得した。

 人生いろいろ、この後の未亡人たちと、その子供たちに幸大きことを… でも、最後のヴェロニカの行動は、唐突だったなぁ。彼女の職業から鑑みると不思議じゃないけど、何か伏線あったっけ?

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2 コメント

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はじめまして (ippei)
2019-02-18 23:28:57
はじめまして
ブログランキングから来ました。
リアム・ニーソン、結構好きなんですよね。
4月公開ですね。楽しみです。
Unknown (わに)
2019-02-20 08:59:54
ippeiさん、はじめまして。
読んでくださってありがとうございます。

リアム・ニーソンにピッタリの役で、私には他の人は考えられません。他にも、コリン・ファースやロバート・デュバル、ウォーキング・デッドに出てた人(←酷いけど、名前がわからない~)と、癖のある役者さんが脇を固め、見ごたえのある映画でした!

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