わにの日々-中西部編

在米30年大阪産の普通のおばさんが、アメリカ中西部の街に暮らす日記

The Favourite / 女王陛下のお気に入り

2019-02-22 | 映画・ドラマ・本
 18世紀初頭の英国宮廷を舞台とする、ゴージャスかつグロテスクにアン女王を巡る侍女同士の覇権争いを描いた映画。史実を基にしているというのが驚きです。「The Favourite(お気に入り)」になることが、政治的実権を握ること。彼女たちが争うのは、今どきの#MeTooやらガールパワーなんて生易しいもんじゃありません。一国のみならず。周辺諸国の命運を決める究極の権力です。

 本当は映画館で観たかったけど、寒いし、引っ越してから映画館が遠くなって出かけるの面倒臭いので、図書館で借りたDVDで鑑賞。正直、下働きの女性の台詞とか、聞き取れなかったろうから、DVDで字幕付きで観られて良かった。お上品な言葉使いに、現代風の4文字言葉が混じってる面白さも、字幕なしじゃキャッチできなかったと思う。そういや、ダンスもやけにアバンギャルドでしたね。


初めは成程、女王が二人にいいように利用されてるのかと思ったけど


 監督は「ロブスター」(観てないけど、あらすじだけで無理)や「聖なる鹿殺し」(物凄く後味悪くて観て後悔)の、ヨルゴス・ランティモスなので、いや~な映画だろうなとは予想がついたのですが、エマ・ストーンとレイチェル・ワイズという、お気に入りの女優さんが出てて、豪勢なお城にドレス、合間に可愛いウサギがはねている。これだけ好物を揃えられては、避けて通れない。

 クイーン・アン様式って、建築スタイルや家具があるように、装飾的で優美でありながら、ゴシックほどにはごてごてしていないのが特徴。本物のお城で撮影されたのだそうで、建物、お庭、そして豪華な内装は目の保養。特に壁に所狭しとかけられたタペストリーときたら、もう目眩しそうw

 そして、ドレスの豪華さ!とはいえ、アン女王は未亡人だからかもしれません、彼女に使える二人のドレスもモノトーンで、それとは対称的に男性軍はカツラに厚化粧、つけボクロ。「男はPrettyでなくっちゃ」という台詞がありましたが、その分、男装のレイチェル・ワイズがかっこいい~!この女優さん、「ハムナプトラ」でのチャーミングなエヴェリン役ですっかり好きになったのですが、あの映画も、もう20年も前の作品なのね。この映画じゃ、立派なお局様であられます。

 Wiki先生によりますと、サラは1660年生まれで1744年に亡くなっており、アビゲイルは1670年生まれ1734年死去と、サラより10年後に生まれ、10年早くに亡くなっています。そしてアン女王は 1665年生まれの1714年死去で、49歳で亡くなっています。映画では、もっと高齢に見えましたが、ちょうどサラとアビゲイルの間の年齢。女優さんたちの本当の年齢も、同じ順番で、女王役のオリヴィア・コールマンのほうがレイチェル・ワイズより若いのね。歯に衣着せぬ凛々しい美貌の年上の幼馴染、戦争推進派でホイッグ党を支持するサラと、自分を褒めちぎって尽くしてくれる可憐で優しい年下、トーリー党と親しいアビゲイルの間で揺れ動く女王と同時に、国家も一緒に振り回される。


可憐で繊細に見えて、実はふてぶてしくしたたかなアビゲイル


 女王は、映画の中でも痛風に苦しみ、車椅子を使っていましたが、実際に極度の肥満で、崩御後の棺桶は正方形に近いものだったとか。一体どんだけ?現在では、17人の子どもたちが皆、流産、死産か早世なのも、免疫性疾患を患っていたからではないと言われています。死んだ17人の子供の代わりに、17羽のウサギを子供たちと呼んで可愛がる女王の孤独に、いわばつけ込んで権力を得た二人ですが、作中何度も「女王は私よ!」の台詞があるように、最後のシーンが示すのは、所詮ふたりとも、女王の胸先三寸で運命の変わる存在に過ぎず、女王の愛するうさぎたち以下の存在なのかも… 最後のアビゲイルの表情が、それに気付いてしまったようかに思われます。

 追放を知らせに来る一団を見ながら、この国は飽きたから他所へ行きましょうというサラ。「あたかも勝ち誇ったような良い草ね」と言ったサラに、アビゲイルは「勝ったのよ」と言い放ちますが、権力は失っても、愛する夫と後生を過ごし、その子孫には、英国の命運を握ったウィンストン・チャーチルや、ダイアナ・スペンサーがいる。お家断絶になったアビゲイルと、本当の勝者はどちらだったのでしょうか?
 

結局、お人形はどっちだったのか?


 話題通り、3人の女優さんの演技は素晴らしい!アビゲイルの台詞はいちいち洒落てるし、後味の良いお話ではないけど、見応え充分、満足の一作でした、でも、エンドテーマがエルトン・ジョンなのは判らなかった。なぜ?

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