わにの日々-中西部編

在米30年大阪産の普通のおばさんが、アメリカ中西部の街に暮らす日記

社長さんは大変!「空飛ぶタイヤ」

2019-01-23 | 映画・ドラマ・本
池井戸潤氏の「空飛ぶタイヤ」が発表されたのは、2015年でした。この本のことは、ずっと気になっていたのですが、一昨年前にやっと、図書館から借りて読むことが出来ました。それまで、タイトルから勝手に、飛行機でタイヤやその材料であるゴムを輸出入するお話かと思っていましたが、本当に大きなトラックのタイヤがびょーん!って飛ぶ話だった。

 この本を読んだ感想はひたすら、「社長さんって大変だなぁ」だった。社員とその家族の生活を両肩に背負って、難しい決断をどんどん下していかなきゃならない。親の代から運輸会社を引き継いだ、主人公の二代目オーナー社長も、自社トラックが人身事故を起こして、会社のみならず、家庭もが窮地に陥りながらも、自社社員を信じて巨大企業に挑みます。ちなみに、池井戸作品の映画化は、今作が初めてなんだって。ちょっと意外。

 長いお話を二時間ちょっとにまとめるために、映画では簡略化されたエピソードが多くて、ラストに向けてなし崩し的に問題が解決しちゃうので、池井戸作品の醍醐味、一発逆転勧善懲悪!のカタルシスも弱かったような。特に、子供へのイジメや、PTA会長も務める主人公への弾劾といった、同時進行の家庭の問題は、ちょっと触れられただけ。纏めちゃうなら、夫を信じて、明るく励ます赤松社長の奥さんを見せるだけで良かったような。本当に理想的な奥様ですよね。深田恭子さん、綺麗だし。

 なのに、長男が「お前のとーちゃん、人殺し」と、インターネットで悪口を書かれて、このお母ちゃんが犯人を突き止めるために、同じクラスの子供の家に一軒一軒、「これ書いたの、誰よ!?」って聞いて回ったってのは、原作で描かれた背景無しだと、結構、ドン引き。奥さんの行動力を見せたかったのかもしれないけど、これだけポンと出すくらいなら、いっそ、子供へのいじめの件を持ち出さなくともよかったのに、って思いました。

 映画では、主人公の赤松社長(この苗字がいかにも熱血!って感じでいいねぇ)役は、TOKIOの長瀬 智也さん。本のイメージより、強面で押しが強い感じ。本のイメージでは、街の運送屋さんの大将らしく、もっと朴訥として、腰も低い感じだったから、なんだかシュッとしすぎて、庶民性が感じられなかったなぁ。ポスターの表情なんて、ヤンキーだし。素敵な奥様に立派なお家。上等のスーツを着こなした大企業のエリート達とは対称的な、中小企業の悲哀がゼロだった。

 そのエリートたち、高橋一正さんと、ディーン・フジオカさんの端正さと、一方で岸部一徳のいやらしさ。生き残りをかけて戦う中小企業と、大企業の中でうごめく魑魅魍魎、野心、そしてあえて正しい道を歩もうとする男たち、というストーリーも消化不良だった。なるほど、必ずと言ってもいいほどドラマ化される池井戸作品、今まで映画化されなかったわけだ…と、納得の一作でした。


 ところで、会社の社長さんだけではなく、組織の上に立つリーダーは皆、大きな責任を背負って、難問に日常的に対峙し、常に最良の決定を下さねばならない、そのプレッシャーたるや大変なものだと思うけど、アメリカって巨大な組織の長が、すぐ癇癪起こす3才児、トランプってのは、本当に辛い…

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