わにの日々-中西部編

在米30年大阪産の普通のおばさんが、アメリカ中西部の街に暮らす日記

ボヘミアン・ラプソディー

2018-11-07 | 映画・ドラマ・本
 近所の劇場では、火曜日は5ドルの日。大スクリーンで見て参りました。平日の夜遅い時間、大きな劇場にもかかわらず、満席でした。帰宅して、YouTubeでライブエイドでのクイーンのコンサートを鑑賞し、さて感想。



 フレディー・マーキュリーは、One and Onlyであるということを、しみじみ再確認する映画でした。

 まず、20世紀フォックスのパンパカパーン、パパパ、パンパカパーンってオープニングがすでにロック。実はこれ、ブライアン・メイとロジャー・テイラーの新録だって。これだけで5ドルのもとは十分に取れた。タイトルにもなっている「ボヘミアン・ラプソディー」はじめ、有名な曲の誕生、レコーディングの再現は、本当に面白く興味深い。何より、クイーンの音楽を映画館で聴ける、大画面で再現されたコンサートを見れる。猫達は可愛いし、フレディーの普段着が着物だったり、自宅の壁に打ち掛けが飾ってあったりは、きっと事実なのでしょうが、日本人的にちょっと嬉しい。何度もお忍びでも日本を訪れてたそうですし。ホント、大画面でみてなかったら後悔してたと思うし、自分と同年代かそれ以上の観客で熱気ムンムンな満員の劇場で堪能できて本当に良かった。息子らにも、必ず音響の良いIMAXで観るよう言った。

 でも、事実と創作が入り混じりすぎて、イマイチ何が言いたいのかわからなかった、というのが本音。映画がPG13枠に収まっているのも、ブライアン・メイとロジャー・テイラーの希望だそうですが、彼らが制作に深く関わったことで、漂白されて、きれいなクイーンになってしまい、フレディー・マーキュリーもお砂糖に包まれ,、劇中で何度も彼を表現する言葉である、flamboyantな輝きを、すりガラスの向こうから見るような気持ちになってしまいました。

 フレディーが、皆に自分がAIDSにかかっているとを打ち明けた後、皆で抱き合うシーンは、この病気のことが知られておらず、触れただけで伝染る、いや、空気感染だ、なんて誤報の行き交っていた時代に、それ、絶対ウソやろ、と。フレディーがバンドのメンバーと対立した理由は、彼がソロで契約を結んだからとなっていますが、これも事実は、最初にソロ・アルバム出したのは、ロジャーやし、で、全くの創作。なんか色々と、死人に口なしやなぁ…

 空港で働くザンジバル生まれのファルーク・バルサラ青年が、仲間と出会ってロックスターに上り詰め、恋人とも充実した生活を送っていたが、自分がバイセクシュアルであることで恋人が去る。仲間との確執も生まれる。孤独を補うために、酒や薬に溺れ、乱痴気騒ぎに明け暮れる孤独な天才は、かつての恋人の言葉で目覚めるが、自分が不治の病に罹っていることを知り、仲間とよりを戻し、最高の舞台へ向かう…って、お話も、テンプレ通り。彼の最後の恋人、ジム・ハットンとのエピソードも創作だし。これは実在のバンドと人物、そしてコンサートの再現を織り込んだドラマであり、伝記とは言えないのでは。

 クライマックスは、あのライブエイドを20数分、丸々再現。当然凄く盛り上がる感動のクライマックス、素晴らしい再現度で泣きそうになったけど、私は映画の中のコンサートにではなく、テレビの中継で見た1985年のコンサートを見たときの自分の感動を思い出して、感極まってたと思うのです。エンドロールで、遂に本物のフレディーとクイーンのコンサートが映し出されるのですが、やっぱ無茶苦茶かっこいいわ。足長すぎやわ。人外やわ。

 フレディー役、ラミ・マレックは、頑張ってフレディーの動きを再現してるんだけど、あの圧倒的カリスマまでは表現できていない。でも、フレディーの色気、強烈なカリスマを表現できるのは、本人をおいて、他にはないと思います。つまり、フレディー・マーキュリーは、The One and Onlyであると。

 フレディーの没後20年、お母さんと妹さんのインタビューを見たことあるのですが、本当に普通の感じの良い人達で、あの不世出の変態(←褒めてます。念の為)が、こんな普通のご家庭から生まれたのか?!と、驚きました。フレディー役のラミ・マレックは、とても頑張っていたと思います。見た目はむしろ、ミック・ジャガー似で、歯は大きすぎて滑稽(メイクさん、もうちょっとどうにかならなかったの?)だし、そのせいか、セリフも妙な訛りがあった。それに、アップのときだけでもカラコン入れてほしかった。

 彼の演技が絶賛されているのは当然の熱演でした。小さな仕草やステージでのパフォーマンスまで、実に見事に再現していましたし、彼自身のチャームポイントである大きな目が、しょっちゅうキョドってるナイーブな青年の不安定さや自信のなさ、孤独を表現していました。でも、それってフレディーのイメージと違う…

 いくら仕草を真似ても、体型が違うので、立ち姿からして違う。まずオープニングで、ライブエイドの舞台に向かう後ろ姿が映し出されますが、ここで違和感を感じてしまいましたし、あの強烈な個性、エキセントリックさが欠けている。なにより、作り物の変態なんです。アメリカでの評論には、配役に対する批判が多いのですが、私も同意せざるを得ません。これは、フレディー・マーキュリーというレガシーに対する、私の思い入れが強すぎる故なので、頑張ったラミくんには申し訳ないんだけど、フレディーが表舞台を去って30年以上、もう思い出の中で神格化されちゃってるんです。




 他の配役は、似た役者さん見つけてきたなー、と、感心。ロジャー・テイラー役のベン・ハーディーは可愛い(これ大事。ロジャーは少女漫画に出てくる金髪の王子様でなきゃ)し、ディーコン役のジョゼフ・マゼロは印象が薄くて、ディーコンらしい。なによりブライアン・メイ役のグウィリム・リーは、容貌が似ているだけではなく、素朴な温厚さ、落着きや滲み出る知性までも再現していたと思います。私は、恵まれた音楽的才能と、ギターを自作し独自の演奏法を生み出す創造性を有するのみならず、音楽で成功を収めた後、何十年も経ってから学問に戻って天文学博士号を取得し、天文学者として活躍しつつもコンサートも続ける彼を尊敬しています。ジム・ハットン役の人も似てたな~

 久しぶりに映画で見るマイク・マイヤーズも、面白い役でした。出番は少ないけど良いトコ持っていったよね。好き。男同士のキス・シーンはあるけど、クイーンのボーカルはアダム・ランバートしか知らない世代でも、十分に楽しめる映画になっていたと思います。アダムは、フレディーになるのではなく、彼自身のスタイルでクイーンの曲を歌い、新たな世界を作り出しましたが、この映画は、フレディーを再現しようとしたことで、今一度、フレディー・マーキュリーは、THE ONE AND ONLYであることを、再確認させたと思います。大事なことなので、3度言いました。

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6 コメント

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こんばんは☆ (JUNxxx)
2018-11-08 19:01:22
ボヘミアン・ラプソディーは是非観たいです!
毎日CMもガンガン流れてますし、日々テンション上がってまして(笑)
フレディー・マーキュリーは、One and Only!了解!心して観てきます☆
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JUNxxxさん (わに)
2018-11-09 14:11:22
音響の良い劇場で見てくださいませー!(絶叫)
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The One and Only (マチルダ)
2018-11-13 23:19:35
わにさん、こんばんは。
遊びに来ました。
新作映画が5ドルで観られるなんてうらやましいです。

>事実と創作が入り混じりすぎて
>漂白されて、きれいなクイーンになってしまい

そうですね。そうなんだと思います。

でも、この映画は間違いなく当時ロック大好き少年少女をあの頃の気持ちに戻してくれて、クイーンを知らない世代の少年少女にその素晴らしさを教えてくれた、と思いました。
そして

>フレディは The One and Only 

ということ。


さあ、時間見つけてもう一回観に行きます。



 

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マチルダさん (わに)
2018-11-14 14:54:14
ようこそ、おいでくださいました~m(__)m

私はめったに、同じ映画を劇場に見に行かないのですが(最後に行ったのは「300」)、大きな画面で見られるうちに、二回目に行こうと思っています。二回目は一所懸命お話を追わなくていいので、もっと音楽や雰囲気に集中できそうだから。

>当時ロック大好き少年少女をあの頃の気持ちに戻してくれて
本当におっしゃる通り!そしてクイーンは唯一無二!
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ボヘミアンラプソディー (お母さん)
2018-11-29 11:43:57
見てきましたよ。。。!私はフレディの大ファンなので、心してみました。でも彼の人生についてはあんまり詳しくなかったんで、映画を見てザクッと知れてよかったです。そんなテンションで見てたんですが、ラストで本物のフレディがスクリーンに映ったら、涙がとめどなく溢れてきましたよ。。。車に戻ってから嗚咽です。
フレディが亡くなってから聴き始めたクチですが、フレディのいない世界を憂います。
わにさんはあのライブエイドをテレビで見てたんですね!羨ましい!
音楽に関してはつまらない世の中だって感じてます。どうでしょう、わにさんおすすめありますか?ちなみに私のオススメはエレカシです。
そして今、あのティアドロップのサングラス、タンクトップとジーンズ、角刈りにめっちゃ憧れちゃってやりかねなくて自分が怖いです。
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お母さん様 (わに)
2018-11-29 14:43:37
ティアドロップのサングラス、タンクトップとジーンズまではいいけど、角刈りはちょっと待って!この季節、絶対寒いですよ~!

そう、衛星中継で見ましたよ、オバサンは。音も画像もとっても悪かったわ。でも、ライブエイドを見ている自分に感動してたわ。募金はしなかったけど。そんな乙女(ヲイ!)だった頃の私は、金髪でハンサムなロジャーのファンでした。度胸がなくて、機会があったのにコンサートに行かなかったことが人生における大きな後悔です。

私も本物のフレディーが歌いだしたところで、涙がボワッと。Show musut go onなんか流れたら、もう泣くしか無いやんか、と、思いますよね?家帰って、YouTubeでライブエイドの映像見たら、また鼻ツーンでした。

私は、イマジン・ドラゴンとか、コールドプレイとかって無難なとこを聴いてます。車内では、これまた泣けるリンキン・パークとPMMP(なんで、ボーカルみんな死んでしまうん?)と、中年の星ボン・ジョビですわ。息子らには「つまらん」と言われています。

エレカシって知らなかったので、ちょっくらYouTubeで聴いてきま~す。
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