しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

アインシュタイン交点 サミュエル・R・ディレニー著 伊藤典夫訳 ハヤカワ文庫

2014-08-06 | 海外SF
2年前に「人間以上」を読んで感心し、SFをちゃんと読もうと思い初めたときに家の近所の古本屋で「ネピュラ賞受賞作品」の本書を見かけて買っていたのですが、なかなか読む気にならずそのままになっていました。

SFマガジン700号記念特大号」の記事で本作、SF翻訳の第一人者である伊藤典夫氏が翻訳に「20年かけた」作品という話を知り興味を持ち手に取りました。

‘12年ローカス誌オールタイムベスト370位、1967年発刊。

内容(裏表紙記載)
遠未来の地球。人類はいずこへか消え失せ、代わりに住みついた異星生物が懸命に文明を再建しようとしていた。ロービーは人の心を音楽で奏でることができる不思議な青年。恋人の死を契機に旅に出た彼は古代のコンピュータ、ドラゴン使い、海から来た暗殺者など様々な出会いを経て、世界の大いなる謎を解き明かしてゆく・・・・・・幾層ものメタファーやシンボルを重ねて華麗な神話宇宙を構築し、ネピュラ賞に輝く幻の名作

伊藤氏が翻訳に20年かけたこともあり(?)、幻の名作となっていたようですがやっと出版された作品のようです。(笑)
(解説によると初読1968年26歳、内容を多少なりとも理解できたのが1971年、訳者に決まったのが1977年、文庫版として本書が仕上がったのが1996年)
現在絶版のようですから、現時点でも幻のような…。

内容紹介を読むといかにも「SF風」ですが、そういうイメージで読むと挫折する作品かもしれません。
ドラゴンも出て来ますし、SFというよりファンタジーという感じで読んだ方がすっと入って行けそうな気がします。

また「物語」を求めて読んでもズッコケそうね…。
解説にもありましたが、詩とか音楽に近く前後関係やらストーリを楽しむというより場面、場面を楽しむ作品な気がします

訳がいいのか、元の文がいいのか(両方なのか)独特な言い回しとリズムのある文章なので読んでいると自分もなんとな~く「いい文章が書けそうな」気になってきたりします。
(実際は...ご覧のとおりです)

お話的にはギリシャ神話のオルフェウスの話を下敷きにしているようですが….どうも私には理解しきれませんでした。
オルフェウスは自分の意志で妻を探しに行くわけですが、主人公ロ・ロービーは最初から最後まで状況に流されるだけで自分の意志で行動できていない。

暗殺者を探しに行くのも村の長老の命令ですし…。
強いて言えば最後の「惑星やら月を旅していこう」と考えるのが自分の「意志」なのかなぁ…。
青年の「成長物語」としてもなんだかあまりしっくりこない。
結局なんにも成長していないような…。

対してドラゴン使いのリーダー スパイダーの何やらものすごくたくましく現実的な、「大人」ぶりは妙に印象に残りました。

「ビートルズ」や「リンゴ・スター」もオルフェウスと同じくらいのレベルで神話化されていますし、ショー・ビジネスにおける「スター」とプロデュースする「大人」というような関係性もあるのかなぁとちらっと思いました。
若者ながら「暗殺者」として自由意思で動いていた若者キッドはロービーを利用して、スパイダーが始末してしまうし...。

ネットで評価を見ると「いろいろな読み方ができる作品」「再読しないと意味がとれない」などという意見が多かったですが確かに色んな読み方ができそうです。

「性的な話」という説もあるようで、作中男性=ロ、女性=ラ、どちらでもない=レという性別が出てきてそれぞれの関係が微妙な暗喩で表現されています。

とにかく最後まで読んでもなんだかわからない作品でした。

巻末の伊藤氏自身の翻訳顛末について書かれた解説も読みでがありました。
(ネットで本作についての伊藤氏へのインタビューを載せているものを見つけたのでリンクしてみます)

私の能力で感想を書くのは難しい作品ですが...。
読んでから、なにかこう頭の中に入り込んだものが読後にじわっとにじみ出てくるような作品です。

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