しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

桜田門外ノ変 上・下 吉村昭著 新潮文庫

2016-07-10 | 日本小説
まだ「SF」という気にならず本書を手に取りました。

吉村昭の歴史小説は高校生時代に結構読んでいたのですが最近とんとご無沙汰でした…。
(2011年に「ポーツマスの旗」を読んで以来)

「しばらくぶりに読みたいなぁ」という気持ちのある中、ブックオフで見かけ108円だったので購入しました。

1990年8月刊、2010年10月映画化されている作品です。

映画化の印象がありもっと最近の作品のイメージだったのですが結構前の作品だったんですねぇ、意外でした。

内容紹介(裏表紙記載)
上巻:
安政七年(1860)三月三日、雪にけむる江戸城桜田門外に轟いた一発の銃声と激しい斬りあいが、幕末の日本に大きな転機をもたらした。安政の大獄、無勅許の開国等で独断専行する井伊大老を暗殺したこの事件を機に、水戸藩におこって幕政改革をめざした尊王攘夷思想は、倒幕運動へと変わっていく。襲撃現場の指揮者・関鉄之介を主人公に、桜田事変の全貌を描ききった歴史小説の大作。
下巻:
水戸の下級藩士の家に生まれた関鉄之介は、水戸学の薫陶を受け尊王攘夷思想にめざめた。時あたかも日米通商条約締結等をめぐって幕府に対立する水戸藩と尊王の志士に、幕府は苛烈な処分を加えた。鉄之介ら水戸・薩摩の脱藩士18人はあい謀って、桜田門外に井伊直弼をたおす。が、大老暗殺に呼応して薩摩藩が兵を進め朝廷を守護する計画は頓挫し、鉄之介は潜行逃亡の日々を重ねる……。


徹底的に史実にこだわる吉村昭作品ということで、桜田門外の変前後の事情が細かく描写されています。
水戸藩と彦根藩の確執、幕閣と御三家たる水戸家の確執などなかなか興味深かったです。
「幕府」とはいえ徳川一家の親類、配下で構成されているんですから、まぁ人材難になりますよねぇ…。
老中やらなにやらといってもまぁ基本中譜代藩のお殿様なのだから非常時の危機管理能力など出るはずもないですよねぇ。

さて物語は主人公に設定されている水戸藩士・関鉄之助の視点から描かれています。

吉村昭の時代物の共通なのですが、主人公はじめ登場人物は標準語で思考し話しているように記述されます。
これは意図的とのことですが((前に著者が何かで書いてあるのを読んだ)雰因気は出にくいですよねぇ。
司馬遼太郎的に坂本竜馬に「ぜよぜよ」しゃべらすのも事態を正確に表すのには向かないとは思いますが....。

言葉も影響しているのか主人公にはそれほど野心や色気がないように感じられます。
その辺も事件を客観的に記述したいという作者の意図を感じます。

まぁそれはそれでいいんでしょうが、実際はどうだったんでしょうかねぇ?

本作の主人公の場合は江戸に妾を囲ったり、最後の逃避行でも水戸藩内の豪商との付き合い方というか癒着というか…お金のもらい方もかなり派手なのでそんなに小人物的な人ではなくてそれなりに野心があったんじゃないかなぁ…という疑問は浮かびました。

野心もないのに命を懸けて国事(藩事)に奔走しなきゃいけない武士階級ってなんだか損ばかりなような....。
大きな歴史的な流れでは「水戸藩」は維新の捨石的な立場になってしまったようなところもあるのでこのなにやら乾いた感じも違和感はないのですが、個々人はそれなりにウェットだったんじゃないかなぁなどと感じました。

主人公、国元の家族は地味な暮らしをしていそうなのに、諸国を旅して結構いいものを食べたりしているので特にそんな感じを受けました。

あと吉村昭の小説には珍しく、維新期の有名人である坂本竜馬がちらっと登場したのが「おっ」と感じたところでした。(ひたすら地味な登場、「ぜよぜよ」いっていません)

維新前後の話は好きなので、吉村昭は本作の舞台の後の水戸藩の動きを描いた「天狗争乱」や「生麦事件」など維新あたりのマニアックなテーマの吉村作品もそのうち読みたいところです。

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