テッカ(湯田伸一)の中学受験伴走記

私立・国立中学受験生を応援し続けて35年。
中学受験『エデュコ』を主宰するテッカ(湯田伸一)の応援メッセージ。

「現役進学率の高い学校」=「進学実績のいい学校」とは限りません 

2016-06-01 12:45:29 | 中学受験


 例年、6月・7月は四谷大塚主催の「学校参観」が開催されます(その他にも、学校主催の説明会もあります)。首都圏では103校を対象としていますが、多くの場合、平日の午前中に予定され、施設見学のみならず授業参観の可能な学校が95校に及びます。平日という不都合の半面、授業参観ができることは、在校生の学習活動を確かめられる意義深いことといえるでしょう。

 中等教育期の6年間は、わが子がどのような価値観を持つようになるか、どのような自己判断基準を持つようになるかなど、人格形成にとって最も大切な時期であるのは言うまでもありません。ですから、教師と生徒のとの関係性、生徒間の関係性など学校の文化と言える側面は学校選択の重要な要素です。今後、わが子が過ごすことになる環境を吟味することとしましょう。

 ところで、学校選択の指標として、大学進学実績も重要な要素です。この頃の学校説明会では、現役進学率が強調されるようになってきました。特に、女子校では、「我が校では現役進学率90%です」というような説明が誇らしげにされることもあります。このような説明をどう評価すればいいのか、全国的な統計(「学校基本調査」:文部科学省)を確認してみました。

 統計によれば、平成27年度の大学入学者数は全体で617,507人であり、そのうち18歳:482,613人(78.2%)、19歳101,320人(16.4%)となっており、現役進学が主流、2浪以上は約5%にとどまることが確認できます。また、男女別に見れば、男子の74.7%、女子の82.4%が現役で進学しており、特に女子の現役進学率は特定の学校のみならず、総じて高くなっていることがわかります。
 
 これに対し、保護者の大学受験期に近いと思われる30年前の昭和60年の大学入学者の様相を見れば、大学入学者数は411,993人であり、そのうち18歳(検定等を除く昭和60年卒):250,705人(60・9%)、19歳(検定等を除く昭和59年卒)122,203人(29.7%)となっています。現役進学率は約60%だったのですね。保護者の大学受験期の様相と大きく変わっていることは確かです。

 現役進学率の上昇理由は複数あるはずですが、この統計の流れから見ても、大学の定員増がまず挙げられるでしょう。平成27年の入学者数は、昭和60年の入学者数の約1.5倍になっています。極端な言い方ですが、「選ばなければ、現役で入学できる生徒は多い」といえるでしょう。また、私立大学では付属校からの受け入れ枠拡大、推薦入試、AO入試などの要因も大きく、日本を代表する私立大学でも一般入試による入学者は約5割となっているようです。
 ちなみに、平成27年度の大学入学者数617,507名のうち、私立大学への入学者数が485,916人(78.7%)であり、私立大学の受け入れ拡充等が統計でみた現役進学率を大きく押し上げているとみることもできるでしょう。

 一方、一般入試が主流の国立大学だけの現役占有率を見た場合69.6%と7割を下回っており、私立大学のそれとは少し様相が異なるようです。いわゆる難関大学と称される大学ほど、現役占有率は低くなるようです。例えば、東京大学では66.7%、京都大学では62.3%となっているようで、それぞれ、三人に二人、五人に三人が現役ということになります。

 このように見てくると、「現役進学率の高い学校」=「進学実績のいい学校」と結論付けるわけにはいきません。中学受験家庭の学校選好は「大学進学校」が主流ですが、難関大学を目指す生徒の多い学校ほど、現役進学率は抑制されることになるでしょう。
 つまり、学校の進学指導力を大雑把な数字で判断せず、進学先の質に照らしてしっかり検討する必要があるようです。皮肉めいた見方をすれば、現役進学率が高すぎる場合、生徒の進学志向を汲み取ることをおろそかにし、学校主導で進学先を決めつけているかもしれません。
 学校に進学指導力は求めるとしても、生徒や保護者の進学志向を汲み取った指導をしてくれる学校を選びたいものです。
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