テッカ(湯田伸一)の中学受験伴走記

私立・国立中学受験生を応援し続けて35年。
中学受験『エデュコ』を主宰するテッカ(湯田伸一)の応援メッセージ。

2012年6月6日、「金星の太陽面通過」も観察しよう

2012-05-29 09:10:35 | 中学受験


 2012年5月21日(月)の「金環日食」では、多くの人々が歓喜の声を上げ、楽しんだようです。個人的には、「やっぱりそうなったか…、人類の知見の積み重ねは素晴らしい…」と、改めて感動しましたが、その後、この機会を手掛かりに、日本の研究者たちが、これまで139万1000~139万2300㎞とされていた太陽の直径を、139万2020㎞(誤差±40㎞)と発表したことにも驚かされました。
 また、わざわざ観察ポイントまで出向かなくても、じっくり観察できたことは得をした気分にもなりましたね。
 さらに幸運は続き、2012年6月6日(水)には「金星の太陽面通過」まで観察できるようです。日食グラスも手元にあるはずで、是非観察してみたいものです。
 
 東京地区で見られる「金星の太陽面通過」の時刻(北海道・沖縄であっても±1分内)は、外蝕の始めが7時10分53秒・内蝕の始めが7時28分29秒・内蝕の終わりが13時19分59秒・外蝕の終わりが13時47分26秒(国立天文台ホームページによる)となっていますから、学校でゆっくり観察できる予定がたちます。仮に、天気が悪い時でもインターネット等による確認も可能でしょうし、注意をしておきましょう。

 また、次回の「金星の太陽面通過」は、105.5年後の2117年12月11日と言うのですから、希少性も高く、特に、地学を手掛ける人たちには、「金環日食」を超える垂涎の的かもしれせん。中学(高校)入試問題においても、太陽・金星・地球の関係に関する問題は、よく出題されています。
 
 子ども達には、入試対策に止まらず、天体の動きを身近なものとして考える機会になります。実際の現象をどう理解するか、頑張って考えてみましょう。
 では、エデュコ5・6年生が手掛ける「数の性質」や「旅人算」、「点の移動」のロジックを意識して、「金星の太陽面通過」を授業説明風に整理してみましょう。

①「金星の太陽面通過」は、金星が太陽と地球の間を移動し、地球から見た太陽面を横切る現象を言います。

②これは、太陽・金星・地球が一直線上に並ぶ位置関係が出来た時と考えればいいですね。地球は、太陽の周りを回る(公転する)惑星の一つです。地球のように太陽の周りを回る星(惑星)は、太陽に近い順に、水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星等が知られています。

③これらの星が太陽の周りを回る向きは、地球の北極のはるか北側から見た場合、すべて反時計回りになっています(授業では、同心円に単純化してノートに図を書きます)。太陽を回転の中心にして、金星・地球の通り道(円)を描いてみてください。

④では、「金星の太陽面通過」が起きる周期を考えてみます。太陽・金星・地球が一直線上に並んだときから次に並ぶまでは、金星か地球のどちらかが、太陽を中心にその周りを360°多く回転した時と考えればいいわけですね。「旅人算」の1周多く回る時をイメージしましょうか。

⑤まず、地球が太陽の周りを1周するのを、4年に一度のうるう年があることを考えて約365.25日とします。すると、地球は1日につき360°÷365.25日=0.9856°回転していることとなります。これは、「点の回転移動」ですね。

⑥同様に、金星は約224.70日で太陽の周りを1周するそうです。すると、金星は1日につき360°÷224.70日=1.6021°回転していることとなります。

⑦ここで、1日当たりの回転(公転)角度は、金星の方が地球より1.6021°-0.9856°=0.6165°多いことが分かります。「速さの差」と考えればいいですね。

⑧これらから、金星が地球より太陽の周りを360°多く回るのは(太陽・金星・地球が一直線に並んでから、次に一直線に並ぶまで)、360°÷0.6165°=583.9日(約584日=約1.6年)ごとだと計算されます。

⑨さらに、金星の回転が速いことから、地球から見ると太陽面の左側から右側へ金星が移動していくことも理解できます。

⑩しかし、この現象は約584日(約1.6年)ごとに観察できていません。それは、「地球が太陽の周りを1周する通り道ができる平面」と、「金星が太陽の周りを1周する通り道ができる平面」がずれているからです(約3.4度のずれがあるといわれています)。太陽を中心とする二つの円盤をイメージしてください。ここまで考えてがっかりですが、約584日ごとという条件だけでは、一直線に並ぶとは限らないということになります。

⑪では、「地球の通り道の平面」と「金星の通り道の平面」の交わるところはといえば、太陽を中心とする二つの平面(二つの円盤)の交わりで直線がイメージできます。この直線と「地球の通り道」が交わるのは、6月と12月になり、約0.5年ごとに地球がこの交点を通過するということになります。

⑫そこで、約1.6年の周期と約0.5年の周期が合わさるところで、太陽・金星・地球が一直線に並ぶことが理解できます。その合わさる周期というのは、1.6年と0.5年の「最小公倍数」にあたる約8年ごとということになります。前回の「金星の太陽面通過」が、2004年6月8日でしたから、ほぼぴったりですね。

⑬となれば、2012年6月6日の次は、2020年ということになりますが、残念ながらそうはいかないようです。8年後には、見た目で約0.33°(20分)金星の通り道が今回より高くなり、太陽面の北にずれ、「金星の太陽面通過」は観察できないというのです。

⑭その後もこのような変化を繰り返すため、太陽・金星・地球がほぼ一直線に並ぶ関係になっても、太陽面の見た目の直径が約0.5°(30分)ですから、太陽面を通過する金星にはめったにお目にかかれず、次回は、約105.5年後の2117年12月11日ということになるようです。
(どの様な条件が整えば、「金星の太陽面通過」が見られるか、より正確な理論に近づいてみたい人は、どんどん勉強してください。)

(注)もっとじっくり考えたい方は、国立天文台の次の頁を参考にしてください(小学生には難解です)。
http://naojcamp.nao.ac.jp/phenomena/20120606-venus-tr/index.html

 これまで、実際の中学・高校の入試問題では、「宵の明星・明けの明星としての金星と地球の位置関係」や「金星が太陽と地球の間に来た時(内合)から、数カ月後(3カ月後が典型的)の金星と地球の位置関係」を問うような問題が、よく出題されてきました。
 来年の入試問題でも、天体領域からの出題があるとすれば、金星に関する問題の出題が大いに考えられます。この機会によく考えてみましょう。
 夏期講習の「地学まとめ」講座でも取り扱います。

(追記)読売受験WEB「カリスマ講師の受験術」を更新しました。会員の方には、お馴染みの主張です。
https://yorimo.yomiuri.co.jp/csa/Yrm0402_C/1221808104273
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夏期講習の受講選択その1(3~5年生)

2012-05-23 10:00:53 | 中学受験



 夏期講習のお勧め表を個別に作成し、先週から配布しています。夏休みは、塾の夏期講習に参加することが目的ではありません。1学期を終了し、個別の課題を意識して夏の学習計画を立てる必要があり、エデュコの夏期講習もその一部分と言うことになります。

 本稿では、3~5年生の夏期講習の利用イメージを時間割に照らして確認してみます(6年生はかなり長くなりますので、別稿で確認いたします)。
<3年生~5年生の夏期講習講座>
①7月22日~8月7日までを復習期間とし、5日間ずつに分節化して、復習講座が用意されています。
 3・4年生は、他の夏休み企画や習い事と重ならないようであれば、エデュコの夏期講習を受講して下さい。そうでない場合、6月下旬に提案する夏休み宿題をしっかり手掛ければよろしいでしょう。
 5年生の復習講座は、算数において分野別に設定してあります。とにかく受講するというものではなく、優先順位をつけて受講の選択をしてください。

②8月8日~8月19日までは、それぞれ、復習項目を完成させたり、予習宿題を手掛け始めたりします。お盆の帰省期間中は、あちこち出かけたり、親せきの子どもたちと遊ぶことも多く、教材を持参しすぎると、重い物を持ち歩くだけに終わることが多くなるようで、スリムな計画にとどめておいた方がいいでしょう。
 
③8月20日~8月30日は、予習期間です。夏休み宿題においても全員に課題提案をしていますが、講習講座も予習になります。ちなみに、予習の講座ですから、その内容は、定義説明と解法の基本モデルの説明が主であり、決して難解な問題を手掛けるクラスではありません。
 講習講座の中での優先順位を付ければ、いずれの学年においても、「算数予習クラス」が最優先講座と言えるでしょう。特に、5年生にとっては、該当する週の1週間では時間が足りないと思える重要単元を案内しますので、多くの方々に受講していただきたいクラスです。
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3・4年生の漢字テストは、練習の仕方を評価したい

2012-05-18 12:30:39 | 中学受験


 新学年になったエデュコの授業も、多くの子どもたちが要領を得て、安定してきたと感じます。通塾を開始したばかりの新3・4年生も、家庭学習を含めた1週間の学習スケジュールをこなす習慣がついてきたようです。
 5.6年生なら、毎週土曜日に実施されている、算数の「エデュコ・ウィークリ―」テストが週間学習の確認指標になっていますが、3・4年生にとっては、授業中に行われる「漢字テスト」が同じ位置付けになっているようです。

 中には、その点数を眺めて、「やばい…、お母さんに怒られる…、どうしよう…」と言いながら、困惑の表情を浮かべる子もいます。
 そんな時、「あんまり怒られるようならテッカに教えて、少しは味方になってあげるから」と、声をかけています。
 確かに、エデュコで毎時間、漢字テストが実施されるのですから、まず、漢字そのものを覚えることに執着してしまうのは、仕方がないことかもしれません。施す側のこちらも、漢字テストという共通の課題を通して、子ども達の横繋がりの次元で、エデュコ学習を活性化させようという狙いもあります。
 
 とはいえ、エデュコの漢字学習の真の狙いは、例文全体を、具体的イメージを付けながら記述することで言葉をどんどん習得していくことにあります。漢字テストで満点を取ることを一番の目的とするのではなく、用例の一文を記述する練習を続けることで、語彙を増やし、読解力・表現力の向上を図らなければなりません。
 例えば、出題漢字10問に対して、4~5問くらいの正答率に止まる場合、もう少し真剣な取り組みを求める意味で叱咤激励するとしても、満点でなければならないということはないでしょう。
 評価基準は、テスト結果ではなく、漢字学習におけるノートの様子、つまり、正確な一文を書く練習になっているか否か、に求めてはいかがでしょう。

 追伸:「一文を練習する意義」については、5月29日予定の読売受験WEBの担当コラム欄でも、申しあげます。
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個人情報の保護

2012-05-09 10:53:37 | 中学受験

 
 一般に、良かれと思ってとった他人への施しも、その人をひどく傷つけてしまうことがあることは、心がけておく必要があるでしょう。いわんや、個人情報の保護に関わる言動は、主観的な判断基準で行っていいはずがありません。

 エデュコも設立来、「個人情報保護」については極めてナーバスに対応してきました。例えば、合格者一覧における氏名公表において、教室内の壁掲示のレベルから、正確に文書でその承諾を得ることなどは、会員の皆さんに承知いただいている例です。

 実を言えば、日常の具体例には事欠きません。
①「いつもわが子がA子さんに仲よくしてもらっているようです。ご挨拶もしたいので、A子さん宅の電話番号を教えてもらえますか?」
②「我が子が、隣の席に座ったB君のテキストを間違って、持って帰ってきました。本当に申し訳なく、お詫びしたいと思いますので、B君宅の電話番号を教えてもらえますか?」
③「我が子が、C君からいたずらされると言っています。許せません。C君宅の電話番号を教えてもらえますか?」
 いずれも、答えは当然「(申し訳ございません。)ノー」です。
①の場合は、信頼関係の成熟から子ども同士で個人情報の相互交換ができるまで待つこと、②の場合は、「エデュコの手を煩わせるのは…」という配慮をお示しくださっているわけですが、エデュコが、代わってご連絡を差し上げ、解決策を見出す、というようになります。
 ③の場合は、個人情報の保護ばかりでなく、エデュコの管理責任も相まっての「ノー」になります。確かに、塾の席はレストランの席と同様、異なる性格の人々が隣のテーブルに座る状況に近く、お店へのクレームとは別に、直接の指摘をしたいという思いも理解できます。ただ、お店と異なるのは、エデュコは固有の子育てコミュニティであり、そのコミュニティの文化(おおげさにいえば掟)は、エデュコが創出し、維持していかなくてはならないもの、つまり、エデュコの責任と考えなければなりません。

 では、「イエス」の例はと言えば、ありません。
④「こちらは、○○駅ですが、□□■■さんの会員証が届いています。」
⑤「こちらは、○○交番ですが、△△▲▲さんのIDカードが届いています。」
 ④・⑤であっても、「本人にエデュコからお伝えし、後ほど本人からお電話を差し上げます。お電話番号をお教え願いますか。」と対応し、本人への連絡を経て、その結果を④・⑤の担当者へ伝えています。○○駅、○○交番に間違いがないかの確認も兼ねています。
 
 個人情報保護の要諦は、どの様なケースにおいても、厳格に本人意思を尊重することに尽きると思われます。エデュコも、常に様々なケースを想定し、確認を続けなければなりません。
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