テッカ(湯田伸一)の中学受験伴走記

私立・国立中学受験生を応援し続けて35年。
中学受験『エデュコ』を主宰するテッカ(湯田伸一)の応援メッセージ。

保護者の期待を素直に伝え続けましょう

2016-04-29 17:57:27 | 中学受験


 4月19日に小学6年生と中学3年生を対象とする「全国学力・学習状況調査」が実施されました。
 この調査の目的には、「義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図る」等が挙げられていますが、平成25年度実施分に係る、お茶の水女子大学の耳塚寛明氏らによる調査研究報告『平成25年度 全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した学力に影響を与える要因分析に関する調査研究』(国立大学法人お茶の水女子大学 平成26年3月28日)を読み直してみました。

 本調査研究報告書は、家庭の社会経済的背景(SES:Socio-Economic Status)を枠組みにして児童生徒の得点を確認し、家庭の経済状況等による学力格差を克服する手立てとして家庭・地域・学校・施策のいかなる要素が鍵となるのか、といった点について実証的に明らかにすることを狙いとしたものです。
 家庭の経済状況等(SES)による学力格差は教育社会学的には知れ渡っていますから、その得点状況はさておき、階層横断的な「保護者の意識等と子どもの学力」(本報告書 第2章 浜野 隆氏)に示された、特に印象的な指摘を切り取ってみました。
 以下は、具体的要件と小6算数Bの得点率との関係に限定して観たものです。
 
 まず、「生活習慣に関する働きかけと学力」の関係において、「毎日子どもに朝食を食べさせている」という項目では、あてはまる(59.6)―あてはまらない(36.8)となっています。「朝食=学力」ではないものの、「朝食習慣=規則正しい生活による学力形成」は言えそうですね。
 次に、「本・新聞・絵本の読み聞かせと学力」の関係において、「子どもに本や新聞を読むようにすすめている」という項目では、あてはまる(64.4)-あてはまらない(49.4)となっています。このことは、自ら知識や情報を得る姿勢づくりに欠かせないでしょう。また、そのはじまりとして考えられる「子どもが小さいころ、絵本の読み聞かせをした」という項目では、あてはまる(63.5)―あてはまらない(47.4)となっており、保護者がして見せる価値があるということを物語っているようです。
 また、「子どもとの会話や一緒に過ごす時間と学力」の関係においては、「子どもと将来や進路についての話をする」という項目で、あてはまる(61.7)―あてはまらない(49.1)「子どもと社会の出来事やニュースについて話をする」という項目で、あてはまる(62.2)―あてはまらない(49.4)となっており、興味関心づくり、社会とその中の自分を考えさせたりすることは、自覚のある学習習慣作りに欠かせないのかもしれません。
 さらに、「保護者の子どもに対する学歴期待と学力」の関係においては、高校まで(44.7)―大学まで(64.6)となっており、朝食習慣と同程度の関連があるように感じさせられます。
 最後に、「教育意識と学力」の関係において、「あなたのご家庭では、お子さんの教育について、次のことをどれくらい重視していますか」という質問のうち、「子どもが自立できるようにすること」という項目で、重視している(59.4)-重視していない(41.6)、「将来の夢や目標に向かって努力すること」という項目で、重視している(59.9)―重視していない(42.5)となっています。

 いかがでしょうか。このように挙げてみると、思いのほか差が大きいと思いませんか。「そのような教訓めいたことはわかりきっているし、いくらかの関連があるのは自明だけど…」と流してしまってはいけないようです。

 私の立場に引き付けて考えれば、特に「学歴期待」「自立」「努力」の項目に強いこだわりがあります。
 「学歴期待」とは、「偏差値の高い学校に行け」と檄を飛ばすことではなく、「自分の能力を信じ続け、可能性を矮小化するな」というはたらきかけです。決して子どもに対して負荷をかけるということではなく、能力を肯定し続けながら見守ることにほかなりません。前回に続いて、思い上がったことを言わせていただけば、エデュコという小さな塾が大手に伍する実績を出す要因も、まず、エデュコスタッフが射程を広く持ち、子どもたちの可能性を信じ続け、同時に、保護者の皆さんも我が子の可能性を信じ続けているからに他ならないと自負しています。
 「自立」「努力」は、子どもたちに自己肯定感を持たせるこだわりです。子どもたちが、学習面においてもそれぞれが「学習の型」を持つようになること、そのうえで、「頑張ることができる」「確かに変わった」というような自覚を引き出し、「やればできる」という自信を持たせることです。

 感情任せと変わらない脅迫めいたアドバイスを慎み、保護者やエデュコスタッフの期待を素直に表明し続けることで、子どもたちを勇気づけていきましょう。大人でも子どもでも周りから期待されることほど、嬉しくてやる気がわいてくるものはないに違いありません。
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入学式は「親業」を実感させられる機会です 

2016-04-10 20:18:57 | 中学受験


 4月8日(金)には、多くのエデュコ23期生(新中学1年生)と保護者が入学式を終え立ち寄ってくれました。総じて、現在の体格よりも大きめの制服をまとい、「ぴかぴか」のかわいらしさと「今後の成長の予感」を併せ持つ佇まいは、人が新しいステージに立ち羽ばたこうとする雰囲気そのものです。

 子どもたちの表情や会話は、当然ながら何ら変化していません。一方、保護者の皆さんは異口同音、「感動しました」とお話しされました。入学式というセレモニーに立ち会う保護者の心境は、我が子を応援するのはもとより、「親業」を行う自身の充実感を感じられるものです。入学生氏名を個々に読み上げられるとき、あるいは、入学生入場の時に確かな足取りで入場する我が子を見守るとき、「親業」と取り組む自身への思いが込み上げてきます。改めて、保護者の皆様にエールを送ります。

 この頃、大学入学式への保護者の出席、大学卒業後の入社式への保護者の出席などの是非が言われるようになりました。これらを「過保護」と評価する向きもあるようですが、そのような評価は早計と言わざるを得ません。
 子どもたちにとっては、「わざわざ付き添ってくれなくても結構」なことに違いありません。子どもたちの側が保護者の出席を容認するのは、「親業」に感謝し、保護者に対して敬意を表していることに他ならないでしょう。

 保護者が「親業」と真摯に取り組み、子どもたちが家族・保護者に敬意を持つ家庭を基盤に社会が形成されれば、それこそ素敵な社会と言えるでしょう。
 保護者は、子どもたちに感謝・尊敬される「親業」と取り組み続けなければなりませんね。
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「後生畏るべし」

2016-04-02 22:08:12 | 中学受験


 2016年3月30日(水)、エデュコ15期生の「二十歳の集い」が開催されました。住所確認が取れている15期卒業生75名のうち62名から近況報告があり、35名が本会に参加されました。遠方大学に在籍、旅行、アルバイト等の理由で出席できない方が少なくなかったのは残念でしたが、参加された方々は皆、嬉しそうな顔でいらしてくれました。

 本会は、例年、中学受験算数の問題解答から始まります。中学受験問題の特徴と言える文字を使わない「算法」には、他塾で講師をする有能な大学生たちも悪戦苦闘です。次いで、社会科の「早挙げ」ゲーム。「自分をさらけ出して頑張りあった間柄」ですから、外連味なく楽しめます。個々のキャラクターは小学生時代と重なり、笑いが絶えませんでした。

 その後は、会食をしながら、一人ひとりから近況報告です。自分の専攻分野について話す人、サークル活動について話す人、これまでの珍しい体験について話す人、小学生時代の思い出について話す人…、午後10時30分を過ぎて、こちらから閉会を促すまで楽しい時間が続きました。

ちなみに、15期生62名から頂いた近況報告(在籍報告)をまとめれば、以下のようになります。
15期生在籍大学状況(報告者62名)
<国公立大学・大学校>
東京大学5名、京都大学2名、一橋大学1名、秋田大学(医)1名、東京芸術大学1名、東北大学1名、東京農工大学2名、千葉大学1名、埼玉大学1名、弘前大学1名、埼玉県立大学1名、千葉県立保健医療大学1名、防衛大学校1名、気象大学校1名 
総計20名
<私立大学>
慶應義塾大学9名、早稲田大学6名、日本大学(医)1名、上智大学3名、東京理科大学2名、ICU2名、明治大学3名、立教大学3名、法政大学1名、学習院大学1名、北里大学(獣医)2名、東京女子大学1名、日本女子大学1名、日本大学1名、立命館アジア大学1名、文教大学1名、立正大学1名、武蔵野美術大学1名、
多摩美術大学1名、東京造形大学1名 
総計42名
 東武東上線の志木駅界隈・ときわ台駅界隈という、かなり限定的な地域の子どもたちで形成される「エデュコ」ですが、みんな確かな自己実現へ向け歩んでいることがわかります。
 上記のような集計をすれば、例年、国立大学では東京大学、私立大学では慶應義塾大学の在籍者が多い傾向が確認できますが、15期生の場合、防衛大学校や気象大学校、さらには東京芸大をはじめとする芸術系の大学という、実務に直結する進路選択者が多いことが特徴的です。確かな自己判断基準を持つ方が多い期といえるでしょう。

 あと数年もすれば、親の庇護から飛び出し独立していきます。エデュコ1期~5期の卒業生たちは、もう社会の最前線で活躍しています。人工知能分野の先駆者、子どもの人権に取り組む弁護士、我を忘れて小児医療に取り組む医師など、まさに尊敬できる方々が多くみられます。

 個人的な主張で恐縮ですが、私は塾講師を生業として以来、子どもたちに自身を先生と呼ばせたり(テッカですね)、保護者会などで「卒業生」を「教え子」などと称したこともありません。エデュコ生たちは、疑う余地もなく私たちの年代よりも勉強しています。さらに、成人した卒業生たちは、社会の進歩を担って活躍しています。このような頼もしい子どもたちに対して「先生はね…」と諭したり、第三者に対して「私の教え子で…」などといえるでしょうか。不遜極まりないですね。

 確かに、いつの時代であっても、人々は先達の積み上げた知見で支えられています。とはいえ、後生はその知見を基盤にして、どんどん社会を進歩させていきます。常に、後生の頑張りで支えられるのが社会といえます。
 「後生畏るべし」。
 エデュコ族の皆さん、自分を信じて、誇りを持って、自己確認を果たすとともに、社会に貢献している自負を持って前に進んでください。
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