テッカ(湯田伸一)の中学受験伴走記

私立・国立中学受験生を応援し続けて35年。
中学受験『エデュコ』を主宰するテッカ(湯田伸一)の応援メッセージ。

「朝型学習への転換」は慎重に判断しましょう 

2018-09-01 16:56:36 | 中学受験


 2学期を迎えエデュコ生たちも過去問と取り組むようになり、緊張感が高まっていきます。保護者の緊張感は同様かそれ以上で、「学習方法において改善できる点があれば、何でも取り入れる」くらいの意気込みを見せる方も少なくありません。
 その改善の一つとして、よく相談されるのが「朝型学習への転換」です。果たして、「朝型学習は、要領のいい学習方法で、良いものに決まっている」ものなのでしょうか。
 
 これまでに私が目にしてきた事例から指摘すれば、「朝型学習への転換」は簡単ではなく、転換出来た事例はあまりないといえます。さらに、保護者からよく聞かされる嘆きは、「朝だと頭もすっきりして、学習効率がいいはずなのに、早く起こしても、なかなか手を進められない」という、保護者自身の原体験と照らして我が子の自堕落ぶりを指摘するものが多いようです。
 受験学習に関しては、全ての大人が経験者であり、原体験に基づくような持論を展開します。ですから、その持論を否定することはできません。ただ、それは自身の場合に言えた事であっても、我が子にもすんなりと適用できるとは限らず、精神論で片付けず、受験生本人の体質という面を考えてみる必要もあるのではないでしょうか。

 例えば、精神科医・睡眠専門医の三島和夫氏の指摘(「無理に早起きすると、うつ、・心疾患のリスクも…夜型の人に理解を!」YOMIURI ONLINE ヨミドクター 2018年7月19日等)によれば、
①朝型の人は、「早寝早起きが得意だけれど、睡眠不足に弱い」、「夜型の人は宵っ張りで寝坊しがちだけど、睡眠不足に強い」という特徴がある。
②(同氏らの調査では)夜型傾向の人は成人の約30%、特に強い夜型傾向の人は8%、朝型傾向の人も成人の約30%、特に強い朝型傾向の人は6%いた。
③このような睡眠習慣の違いが生じる脳内メカニズムには、生物時計(体内時計)の時を刻むスピードが深く関わっている。生物時計の周期が短いほど朝型傾向が強くなり、長い人は苦労しがちである。
④生物時計が時を刻むスピードは、時計遺伝子と呼ばれる複数の遺伝子が作り出すたんぱく質の機能で決定される。つまり朝型夜型は遺伝子的な影響を受ける(正確には多因子遺伝)。
⑤(夜型体質のために)無理に早起きをすることで、睡眠不足による事故や、うつ病、心臓疾患などの健康被害が生じることも分かっている。
⑥朝型夜型傾向も、身長などと同様に「体質の一つ」。
 などとして、生まれつき頑張っても早起きが出来ない体質の人を、「自堕落だ」「やる気がない」などと責めるのでなく、夜型体質の人への理解を求めています。

 翻って、子どもたちの学習方法においても、同様のことが言えると思われます。これまでも、「朝型学習」への無理な転換を目指し、体調を崩したり風邪を引いたりする事例を多く見てきました。朝から「シャキッとして」学習することは確かにかっこいいと言えますが、単純な計算技能・漢字練習ならほとんどの子どもに可能としても、算数の高難度な応用問題をサラサラと解くことなどは受験生全員に可能とも思えません。
 もとより「朝型学習」に向いている受験生に対しては、「朝型学習」を奨励できるとしても、絶対的な学習方法として全員に、「朝型学習」を強いる必要はないのではないでしょうか。
 念のために言えば、この領域の論については、一一首肯できる論が多くあるようで、仮に、人為的に理想の「生物時計」に近づけることが可能であれば、その努力は惜しむべきではないでしょう。ただ、現時点において、「出来ること、出来ないこと」を判断し、我が子に合った(合っていると思われる)学習方法を保護者・エデュコスタッフが考え、実行可能な学習方法を採用していくこととしたいものです。
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