佐賀県武雄市の教育委員会が、小中学生全員にタブレット端末を配り、「反転授業」に取り組むという新聞報道がありました(朝日新聞2013年9月24日等)。
「反転授業」とは、“子どもたちが、まず、自宅で授業動画を視聴して基礎的な知識を習得し、学校の授業では、自宅で分からなかったところや応用発展的な課題に取り組む”授業を指すようです。
この学習法は、アメリカで先行実践されており、肯定的な評価に限って言えば(否定的な評価もあります)、「教師の満足度が高い」「生徒の成績向上が見られる」「学習習慣が改善された」というような報告がされているようで、日本国内でも、個々の教師レベルで実践報告があり、やはり、「家庭学習が楽しくなり、学習が習慣化した」という指摘が見られます。
なるほど、ICT技術の進歩で、学習のスタイルが変化しつつあるのを感じさせられます。
ところで、この「反転学習」の内容・狙いを確認したエデュコ生・保護者の方々は、「あれ!」と感じられるでしょう。タブレット端末を「予習シリーズ」に置き換えれば、エデュコが創立(1992年)以来、提案し続けてきた学習スタイルに、ぴったり重なるものです。まさに「エデュコ学習の極意」と言っていいでしょう。
つまり、確かな説明力のある「教材」があることで、基礎的な項目は自学スタイルで習得可能なはずであり、授業では、自学自習で陥りそうな誤解を整理したり、さらに発展的な取り組み方を考える時間を確保するという発想です。このような流れになれば、子どもたちも自己肯定感を持てるようになり、客観的に見ても、「勉強が上手になる」可能性が大きく高まります。
ICT技術の進歩で、このような学習が可能になったと見ることもできますが、もとより、詳細な解説のついた「予習シリーズ」は、非常に説明能力の高い教材であり、「動画」ではないものの、自学スタイルで「基礎的な知識」「基本的な解法モデル」を習得できるものといえるでしょう。
ただし、この学習方法の一般化には、大きな課題も指摘されているようです。
まず、教師(講師)の指導力です。極端ないい方をすれば、「教科書を教える」授業ではなくなり、「教科書を手掛かりにして発展的な指導をする」授業になるわけで、教師(講師)には,幅広い臨機応変な対応力が要求されることになります。
エデュコの講師陣が全員専任講師である理由も、ここにあります。これまで、私がスタッフに対して言い続けていることは、「教えることが目的ではない。子どもの学力向上を支援するいい指導者になろう」ということであり、「より効率的な水路を用意し、子どものつまずきを修正し、意欲的な子どもを育てる」強力な縁の下の力持ちを目指すものです。
次に課題としてあげられるのは、いわゆる自学自習意欲の個人差、家庭環境(保護者の協力)です。エデュコでは、「1週間家庭学習計画」を管理し、保護者の方々にも自宅学習の確認を「定点観測」的に行って頂くようお願いしています。エデュコの授業前日には、子どもの作業を確認し、「頑張っているね」などの肯定的な言葉がけを続けてください。エデュコスタッフによる、授業前の家庭学習確認の目的の一つとも共通します。
最後に、エデュコ流「反転授業」を実践する際の留意点を再確認すると、次の2点を挙げることができます。強く意識してください。
第一に、「予習シリーズ」の説明・解法モデル・問題解説は、丁寧に理解することを心がけてください。計算式だけで済ますのでなく、解法図なども正確に確認し、自分の解答技能として取り込んでください。
第二に、決して「分からないことを分かったことにする」ことなく、常に、自分の解答技法を修正する意識を持ってください。つまり、授業前の家庭学習確認の時間では、講師に対して、「これが分からない…、あと、これも…」と言い続け、授業に対するリクエストをたくさん出してください。「これが…、これも…」と言える子どもこそ、真剣に学習しているこどもです。