不景気で私立中学の選別が始まったといえる折、公立中・高一貫校の人気は高まっていると言えます。一般に、選抜された集団に対し積極的な学力伸長策を施せば、それなりの進学パフォーマンスを伴うはずで、学費の安い公立学校への進学は、かなりお得な策と理解されていると思われます。
しかし、進学実績に限って、個人的にいえば、公立中・高一貫校には、一定の制限が付きまとい、著名な私立中・高ほどの進学実績を凌駕することはないとみています。
その最大の理由は、私立に比べて余りにも集団における学力差が大きいことから、教科学習の指導は簡単ではなく、どの生徒にとっても、自分の求めるレベルの授業を享受できるわけにはいかないとみるからです。
そのような内情は、かつて注目された九段中・高の高校進学問題からも、一般に想像がつくのではないでしょうか。
公立中・高といえども入学試験を課しているではないか?という疑問が浮かぶと思われますが、学校教育法施行規則110条2項で、「公立の中等教育学校については、学力検査を行わない」と規定されており、正確にいえば、「入学試験」ではなく、かなり怪しげな「適性検査」が行われているということになります。
このことについて、規制改革会議は「事実上の学力検査が行われている」と批判してきましたが、当の公立中・高一貫校の側からは、「教科の知識を問う学力検査をやりたい」、「最低限の基礎学力は問う方がいい」という声(ジレンマ)も聞こえてくるのが現状です。
実際、公立中・高一貫校の「適性検査」における、合格・不合格の振れ幅は私立中学の入試におけるそれと比べるととても大きく、入学者集団の学力差は大きいことがうかがえます。
現状の「適性検査」問題を「知識でなく、考える力を問う良問」と見ることもできますが、「学校学習に必要な基礎学力の確認には不十分な問題」とも見ることもできます。
白鳳・小石川の大学進学実績を賛辞する声を多く感じますが、入り口で教科の知識を問う「学力検査」を課す日比谷・西の実績に及ばないことも、冷静に受け止める必要があるでしょう。
公立中・高一貫校にとっては、制度的な問題が立ちはだかっています。単純に、学費が違うだけで、私立中・高と同じ機能・役割を持つと判断することはできません。
それが、エデュコが公立中・高一貫校への進学支援にたいして、慎重である理由になっています。
追記
読売受験サポートの担当コラムを更新しました。