テッカ(湯田伸一)の中学受験伴走記

私立・国立中学受験生を応援し続けて35年。
中学受験『エデュコ』を主宰するテッカ(湯田伸一)の応援メッセージ。

公立中高一貫校の進学実績の伸長には限界がある

2012-11-24 19:05:30 | 中学受験


 不景気で私立中学の選別が始まったといえる折、公立中・高一貫校の人気は高まっていると言えます。一般に、選抜された集団に対し積極的な学力伸長策を施せば、それなりの進学パフォーマンスを伴うはずで、学費の安い公立学校への進学は、かなりお得な策と理解されていると思われます。

 しかし、進学実績に限って、個人的にいえば、公立中・高一貫校には、一定の制限が付きまとい、著名な私立中・高ほどの進学実績を凌駕することはないとみています。
 その最大の理由は、私立に比べて余りにも集団における学力差が大きいことから、教科学習の指導は簡単ではなく、どの生徒にとっても、自分の求めるレベルの授業を享受できるわけにはいかないとみるからです。
 そのような内情は、かつて注目された九段中・高の高校進学問題からも、一般に想像がつくのではないでしょうか。

 公立中・高といえども入学試験を課しているではないか?という疑問が浮かぶと思われますが、学校教育法施行規則110条2項で、「公立の中等教育学校については、学力検査を行わない」と規定されており、正確にいえば、「入学試験」ではなく、かなり怪しげな「適性検査」が行われているということになります。
 このことについて、規制改革会議は「事実上の学力検査が行われている」と批判してきましたが、当の公立中・高一貫校の側からは、「教科の知識を問う学力検査をやりたい」、「最低限の基礎学力は問う方がいい」という声(ジレンマ)も聞こえてくるのが現状です。

 実際、公立中・高一貫校の「適性検査」における、合格・不合格の振れ幅は私立中学の入試におけるそれと比べるととても大きく、入学者集団の学力差は大きいことがうかがえます。
 現状の「適性検査」問題を「知識でなく、考える力を問う良問」と見ることもできますが、「学校学習に必要な基礎学力の確認には不十分な問題」とも見ることもできます。
 白鳳・小石川の大学進学実績を賛辞する声を多く感じますが、入り口で教科の知識を問う「学力検査」を課す日比谷・西の実績に及ばないことも、冷静に受け止める必要があるでしょう。
 
 公立中・高一貫校にとっては、制度的な問題が立ちはだかっています。単純に、学費が違うだけで、私立中・高と同じ機能・役割を持つと判断することはできません。
 それが、エデュコが公立中・高一貫校への進学支援にたいして、慎重である理由になっています。


追記
読売受験サポートの担当コラムを更新しました。

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「いじめ」に関する学校の見解が気になります。

2012-11-17 16:51:00 | 中学受験


 あちらこちらの学校で、保護者対象の学校説明会が、頻繁に行われています。エデュコでは、10月下旬から今週までに、計32校の「学校説明会レポート」を配布しました。

 リポーターの主観が入り混じり、一元的には比較できないとしても、学校の覚悟・熱意・誠意には温度差があることが見てとれます。とくに、その印象に強く係ると感じられるのは、「いじめ」への言及です。「いじめには厳正に対応する」という学校がほとんどといえますが、なかには「いじめ」はありません、と言い切る学校もあります。

 説明する際の「いじめ問題」の概念にもよるでしょうが、「ありません」といわれると、「覚悟の足りない学校だ」と感じます。「ありません」と答えたほうがいいとでも思っているのでしょうか。

 そもそも、「いじめ」は学校がし向けて発生するものではないはずです。極端なたとえをすれば、レストランで隣のテーブルの客から「いちゃもん」をつけられたとしも、それはレストラン側がし向けていることではないでしょう。
 要は、「いじめ」は、いつ・どこで発生するかわからず、その事態を想定して、どのような対応をとるか、学校がその姿勢を言明することを、私たち保護者は求めているはずです。

 ですから、「「いじめ」はありません」ですまされると、子どもたちを守る覚悟・熱意・誠意を著しく欠いた学校としか思えません。私には、「「いじめ」が発生することを前提に、指導体制を整えます」という学校の方が、よほど信用できる気がします。
 学校説明会では、学校がどれくらい真剣に保護者に訴えてくるか、かぎ取ってください。

 ちなみに、エデュコ内の様子でみても、子どもたちの間で軋轢が発生します。①机の上の整理が悪く、隣に座りたくない、②やたら人の成績を聞きたがる、話したがる、③人の解答を覗き込み、まねばかりする、④目立ちたがり屋で、一般的な話をしているときにさえ自分の話をしたがる、⑤学習に対する姿勢がいい加減で自分と同列に置きたくない、⑥言葉遣いが粗暴で不愉快にさせられる、⑦やたらと他人の人物評価をする、⑧すぐに泣きだしたりして付き合い方が分からない、等その理由を問えばきりがありません。
 「いじめ」に含まれるかどうかは別として、このような理由による、いわゆる「仲違い」は、存在すると認識しておかなければなりません。

 そして、意図的に相手を貶めるようであれば、「いじめ」「いやがらせ」といえるでしょう。このような場合、理由を問わず、極端にいえば、好意を持ってしたことであっても、人を傷つけていいはずがありません。
 「「仲違い」の真相を理解し相互理解を促す」というような、曖昧模糊とした指導ではなく、「人の嫌がることはしてはいけない」「人を貶めてはいけない」という絶対的な価値を教えなければなりません。
 エデュコでは、「苦痛に感じる」という申し出があった場合、「どうして…」「なぜ…」という水かけ論ではなく、この絶対価値を理解してもらうように腐心します。


追記
 一般的な「いじめ問題」への対応には、「犯罪行為」の概念が持ち込まれざるを得なくなったといえます。
 文部科学省は、大臣官房長・初等中等教育局長名で「犯罪行為として取り扱われるべきと認められるいじめ事案に関する警察への相談・通報について(通知)」(平成24年11月2日)を、警察庁生活安全局と調整済みであることを申し添えて、管轄する各機関の長に発しました。
 通知の概要は、以下のようです(抜粋)。
①生徒の行為が犯罪行為として取り扱われるべきと認められるときは、いじめられている児童生徒を徹底して守り通すという観点から、学校においてはためらうことなく早期に警察に相談し、警察と連携した対応を取ることが重要であること。
②いじめられている児童生徒の生命又は身体の安全が脅かされているような場合には、直ちに警察に通報することが必要であること。
③学校内で犯罪行為として取り扱われるべきと認められる行為があった場合の対応について、日頃から保護者に周知を図り、理解を得ておくことが重要であること。
 改めて、私たち保護者にも、「犯罪行為」には厳正に対応する心構えが求められます。

 一方で、十月から十一月にかけて、法務局から小・中学校を通じて「子どもの人権SOSミニレター」が、子どもたちに配られているかと思われます。
 子どもたちにとっても、自分の問題として、自分で考えて行動する方法が示されるのは必要なことでしょう。
 代表的な相談窓口として、以下の機関が挙げられます。
●「子どもの人権110番」(法務局) 0120-007-110(8:30~17:15)
●「24時間いじめ相談ダイヤル」(文部科学省) 0570-0-78310(24時間)
●【チャイルドライン】(NPO法人) 0120-99-7777(16:00~21:00)
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いよいよ「頑張るときには頑張る」時

2012-11-10 15:30:35 | 中学受験


 東京都教育庁総務部の「平成24年度 公立学校統計調査報告書」【公立学校卒業者(平成23年度)の進路状況調査編】が発表され、「平成24 年3 月の公立小学校の卒業者94,787 人のうち都内の公立中学校への進学者は76,980 人で進学率は81.2%となり、私立中学校への進学者は15,655 人で16.5%、また、都外の中学校への進学者は1,558 人で1.6%。前年度と比較すると、都内の公立中学校への進学率は0.1 ポイント減少となり、私立中学校への進学率は0.1 ポイント増加した」と示されました。

 これを、中学受験の視点で、もう少し勝手に整理してみれば、都立中高一貫校への進学者が1,365人、区立中等教育学校への進学者が144人、国立中学校への進学者が432人、私立中学校への進学者が15,655人、都外の中学校への進学者が1,558人と理解できます。
 ちなみに、都外の中学校への進学の大半を私立中学校への進学と仮定すれば、94,787人のうちの約19,000人(約20%)の子どもたちが、小学校から中学校へ進学する際に、入学試験(適性検査)を経たことが推察できます。さらに、従来の私立・国立中学校の進学率という括りに留めれば、約17,500人(約18%)の子どもたちが、進学したことになります。

 要するに、東京では、およそ5人に1人の割合の子ども達(保護者)が、用意されている中学校への進学ではなく、自らの選好にこだわり、積極的に学校を選んだということになります。エデュコ会員の保護者にとっては、何も今さら確認することではないですが、子どもの学校を選ぶという決断をしているのですから、改めて、かかる負荷を覚悟したいものです。

 20期生にとって、残された期間は約11週。いよいよ、子ども達の合格願望も高まります。その一方で、子どもの周辺では、受験をしない子の方が多いわけですから、会員の子どもたちも、受験勉強という負荷から逃げ出したくなる時が、何度もあります。
 このような際には、自分たちの価値観に基づく『優先順位』を話し合ってください。すべての事象には【作用・反作用】があること、平たく言えば【犬が西向きゃ尾は東】と。もちろん、勉強が人生の最優先順位でないことは疑いの余地もありません。
 人には、それぞれの考え方や意志があり、行動は必ずしも皆一緒ではないこと、他の人と関係なく「頑張るときには頑張る」ことが尊いことを教えたいものです。

追伸
・教室受付にはスプレー式の消毒液を置いてあります。入室の際には、必ず、消毒してください。もちろん、この狙いは、学校・家庭における、うがい・手洗いの意識喚起にあります。
・次週(11月12日以降)より、教室内の空気清浄機のすべてを稼働させます。
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感染症の予防と罹患後の対応をしっかりと

2012-11-03 19:57:10 | 中学受験



 急に、冬を感じるようになりました。例年気を揉むインフルエンザはもとより、マイコプラズマ肺炎の流行も気になります。2月の受験日においてさえ、限られるエデュコ生だけでも、保健室受験者の見当たらなかった年はありません。
 極度に、恐れる必要はないとしても、抜かりない予防意識と罹患した際の対応策を持っていたいものです。

 外出後の手洗い・うがいは一般的な感染症予防の基本と言われています。毎日、必ず、実行しましょう。
 取り巻きの保護者・塾は、手洗い・うがいの励行はもとより、室内の湿度管理等を心掛けなければなりません。ご家庭では特に加湿を意識し、エデュコでは特に空気清浄(入れ替え)を意識する必要があるといえるでしょう。
 もちろん、体の抵抗力を維持するために、規則正しい食事と睡眠は欠かせません。受験日が迫ってくるにつれ、無理をしがちになりますが、体調維持のための一線はひいておくべきでしょう。

 ワクチン接種は、例年、エデュコ受験生のほとんどの方が行っています(我が家の受験でも、例にもれず接種しました)。その効果については、議論もあったと記憶しますが、「重症化防止に少しでも役立つのなら」という思いで接種しているようです(実際、ワクチン接種をしても罹患する受験生は毎年見受けられますが、重症な例はあまり記憶にありません…個人の感想です)。

 インフルエンザ等の症状を自覚した時には、迷わず医療機関へいってください。仮に、インフルエンザに限らず、罹患した場合、十分な休養・栄養・睡眠をとることを心がけてください。体調の回復に時間がかかるほど、受験準備には大きな損失となります。
 インフルエンザは学校保健安全法施行規則に示される第二種の感染症で、「発症した後五日を経過し、かつ、解熱した後二日(幼児にあつては、三日)を経過するまで」、出席を停止しなければなりません。その趣旨は、学習塾への通塾にも当てはまるはずで、ゲリラ活動的な発想で通塾する場合、周りの方々への大変な迷惑となりますので、通塾は自粛してください。
 マイコプラズマ肺炎は同法同規則にいう第三種の感染症で、具体的な出席停止日数は定められていないものの、医師の判断(感染の恐れがないと認めるまで出席停止)によることになっています。

 何よりも罹患しないことが大切なわけですから、日頃のうがい・手洗い、温度・湿度管理、栄養・睡眠の確保、ワクチン接種などの予防策に抜かりがないように努めましょう。

 なお、感染症に関する詳しい情報は、国立感染症研究所感染情報センター東京都感染症センターのホームページを参照してください。

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