拝啓 夏目漱石先生

自称「漱石先生の門下生(ただのファン)」による日記

炸裂する職人魂-『CHRONICLE4』

2009-03-04 16:54:17 | L'Arc-en-Ciel
先月出たばかりのラルクのPV集『CHRONICLE4』の感想を。つーか今時居るのかね?わざわざPV集出すミュージシャン。PVを収録したDVDがシングルやアルバムに、当たり前のようにパッケージされる時代でしょ?PV集なんて完全に前時代の商品だよね。そんなものをラルクが出すのは、当然『CHRONICLE』というPV集シリーズを残す事にこだわりがあるからだろう。PVを収録したDVDなんて付いてこないからね、ラルクのシングルやアルバムには。唯一「Hurry Xmas」クリスマス限定盤には付いてたけど、基本的には「PVを安売りしてたまるかコラ」って事かしら。時代遅れです。でも素敵です。
各曲のPVとPVとの間に挿入される映像が充実してる、というかこの映像に命懸けてるとしか思えない『CHRONICLE』シリーズ。これこそ時代遅れのPV集を作り続ける最大の理由だよね。99年リリースの第一弾は「HONEY」から「Driver's High」までのハイグレード映像美を誇るPV達を、チープなしりとりムービーで繋いだ衝撃作。21世紀を迎えてすぐに出た第二弾は「誰もが思い描いた未来の暮らし」をシニカルに描く。2007年の暮れに出た第三弾はラルクの曲名が付いた珍奇な商品を陽気な外人二人が紹介していくという、深夜の通販番組のパロディー。この中で最高傑作だと思うのは、やっぱり第一弾。初めて見た時「え、え、え~~!?」と絶叫したよ、ビデオデッキの前で(当時はビデオでのリリースだった)。そして感激した。電気グルーヴみたいなセンスをサラっとさらけ出すラルクに。
さて。今回の第四弾は、始まって数分のインパクトは第一弾に近い。いやぁ、驚いた。「CHRONICLE4」のロゴが出たと思ったら、何故か大漁旗に絵を描く職人が、仕事場で熱心に作業してる映像が淡々と流れ出すんだもん。映像に「大漁旗とは、船を新しく造った時に大漁を祈願して作られる飾り旗の事…」「大漁旗の作業行程は江戸時代から変わらない。全てが手作業…」と真面目なナレーションが被さり、職人の繊細な技に迫っていく作りはまさに「NHKスペシャル」のノリ。そして「今日もまた、新たな一枚が染め上がった」というナレーションの直後に出て来たのは、ラルクメンバーの似顔絵と「L'Arc-en-Ciel SEVENTH HEAVEN」という文字が踊る大漁旗を掲げた漁船が海原を疾走する映像、そして「SEVENTH HEAVEN」のPVになだれ込む…!次に出て来たのは銭湯に富士山などの絵を描く絵師。日本に3人しか居ないという銭湯絵師の中で最も古株の職人が、「一番難しいよ、ごまかしが効かないんだ。同じのは二度と描けないね」と言いながら銭湯の壁に富士山を描いていく。完成したのは富士山をバックに「MY HEART DRAWS A DREAM ラルクアンシエル」という文字が浮かぶ壁画。い、行きてぇ…この銭湯(笑)。まだあるのかなこの絵…。
というように、以下、日本の宝とも言うべき伝統工芸の職人とラルクという、異色コラボが延々続いていく。米粒に般若心経を書き入れる世界に一人だけのミクロ工芸職人、仕掛け花火職人、寿司職人、提灯絵付け職人、凧に絵を入れる職人…よく見たらDVDには「petits films a sept maitres japonais」という文字が。フランス語ですね。去年は世界ツアーもやったし、世界中のファンに向けて日本の職人…いや、匠の、マエストロ達の素晴らしい技を見せ付けようということか。いやいや、日本人の私だってこんなの見せられたら感動だよ。しかもこんな凄い人達が誠心誠意を込めて作ったんだよ?ラルクとのコラボ作品を。たまらんよ…。先代から受け継がれた技を、丹念に磨き続けるマエストロ達。それは、こんな時代になっても微に入り細に入りこだわりまくった高品質なPV集を作ったりするような、脇道に逸れるような事を真剣にやり続けるようなラルクの相変わらずマイペースな活動ぶりにも、ある意味通じるものがあるかもしれない。「形あるものに永遠は無い」と言い、変化し続ける道を選んだのは某EXILEのリーダー。でも、永遠が無いからこそ気を抜けば嫌でも変化してしまうものを、長い年月に渡って保持していく事も、充分カッコいいと思うのです。こっちの方が難しいしね。てことでラルクさんこれからも頑張ってください。