拝啓 夏目漱石先生

自称「漱石先生の門下生(ただのファン)」による日記

名著?珍著?ラルク本(2)

2009-03-02 19:15:19 | L'Arc-en-Ciel
(1)に引き続きラルク本を紹介。

■『L'Arc-en-Ciel kenのアイアン・メイケン』(ぴあ、2008年2月)
コレはラルク本の中でも超イチオシ。情報誌『ぴあ』に地味に連載されていた、kenとキューンレコードに所属するミュージシャンとの対談を単行本化。チャットモンチー、HOME MADE 家族、FLOW、RHYMESTER、HIGH and MIGHTY COLOER、ポリシックス、Puffyなどなど、同じレコード会社に所属していながらラルクと全く交流の無かったミュージシャンが集結しております。あと電気グルーヴが居たら完璧なのになぁ。で、彼らとkenが「ヘヴィメタル」をテーマに対談する、と。kenがメタル好き、ということでそんなテーマが設定されたらしいが、蓋を開けてみれば特にディープなメタル談義が繰り広げられているわけではなく、色々なジャンルの音楽についての楽しげな会話が中心。kenが事前に対談相手の新譜を聴いて予習して、相手の引き出しを良い感じに開けてあげるという紳士的なスタイルに、「本能のアナーキスト」tetsuの『哲学。』には無い読み心地の良さを感じる。ポリシックス・ハヤシとの対談なんて、ほぼ全編ハヤシのギター遍歴だぜ(笑)。ハヤシは最後に「うわ、何か自分のことばっかりたくさん話しちゃってすみません。ありがとうございました。あー、楽しかったぁ」と締め括った。ken、インタビュアーに向いてるかも…つーか聞き上手なんだろうね。
相手を立てるだけじゃなく、ken本人のオモロ話もチラホラ。チャットモンチーとの対談では「ライブ中に特効で客席に飛ばす銀テープに打たれた事がある」という珍体験を告白したり。「あれ、思いっきり飛ぶでしょ?打つ時にアレの前に立ってたんだよね。そしたらバーンって当たって。近くに銀テープが50メートル分ぐらいグシャグシャと…(笑)」との事。そういえば記念すべきパリでの初ライブでも銀テープに打たれてたね。ちなみにチャットモンチーはラルクの「AWAKE TOUR 2005」に行き、「L'Arc-en-Ciel」のロゴ入り銀テープを拾ったんだってさ。いいなー、私あの手のモノ、未だに拾った事ないよ。
読んでて一番楽しかったのは、ヒップホップという、ラルクとは完全に畑違いのアーティストであるRHYMESTERの宇多丸との対談。色んなジャンルが巧妙に混ざり合うラルクの音楽だが、ヒップホップはラルク的には完全に異物だよね。しかも相手は宇多丸師匠だよ!RHYMESTERは私が聴く数少ないヒップホップ畑の人達だし、「第三会議室」「ウィークエンドシャッフル」ファンである私的に、この対談は夢の共演。
kenと宇多丸…完全に同世代のはずなのに、互いの趣向に全く共通点なさげなのが面白いわ~。EMINEMが流行って初めてヒップホップを聴いたken、思春期にメタルどころかロック自体殆ど聴いてなかった宇多丸。単に趣味の違いってのもあるだろうけど、生まれ育った場所も影響してるのだろう。ヒップホップの人に東京生まれが圧倒的に多いのに対し、ロックの人は東京生まれが超少ないの。関東近郊はゴロゴロいるけど。滋賀県出身のkenに対し、東京都文京区出身の宇多丸。二人が青春時代を過ごした80年代、滋賀にはヒップホップどころかダンスミュージックを楽しむ風潮は無かったのだろう。だからこそ、ken×宇多丸対談はとても面白い。「ドクタードレー、暴力的でかっこいいなぁと思って。それと同じ感じをRHYMESTERの新譜にも感じて」とkenに言われ、素直に喜びまくる宇多丸。これは正直私も嬉しかった。「わぁ、kenが私の好きなRHYMESTER褒めてるよぉ?」的な、よくわからない嬉しさってあるじゃない?
また、ヒップホップの知識が殆ど皆無のkenに対し、その方法論や代表的なアーティストについて宇多丸が自身の音楽遍歴を交えて解説したり、宇多丸が抱えるルサンチマンの原点と言えそうなディスコでのトホホ話、チークタイムを巡る論争など、ワイワイ喋る二人の姿が目に浮かぶ程、対談は盛り上がりまくり。宇多丸は対談を振り返り、ブログで「ナイスバカ会話!」と述べていた(あと、「やっぱこの人はモテる、と思った」とも)。聞き上手のkenと「説明の鬼」宇多丸、二人の相性も良さ気だぞ。この二人で対談の連載とか持ったらどう?ロックの名盤とヒップホップの名盤を交互に紹介しあう、みたいな。
他にも、DISCO TWINSからテクノを学んだり、ガチでメタル小僧だったMCUとハードコアメタル談義に花を咲かせたり、二回り近く年下の女性シンガー相手にジェネレーションギャップを感じまくったり、kenならではの愉快な対談が満載。良い本ですよぉ。