★ Serena ★

カナダ暮らしのエスペランチスト、自然愛好家。
エスペラントやカナダの野草、ネーチャークラブの活動など思いつくままに。

霧の乙女

2005-07-06 04:08:27 | カナダの民話



カカベカ・フォールスの伝説だけでは似ているかどうか比べられないので、ちょっと長いですが、ナイアガラ・フォールスの伝説も載せましょう。


昔、ナイアガラの滝の近くには平和を愛する『中立インデアン』と呼ばれる部族が暮らしていました。いつの頃からか、誰も記憶してはいませんでしたが、部族の人々が原因不明の病気で亡くなり、埋葬後にはその墓があばかれ遺体が盗まれるという不気味な出来事が続いていました。
もう長いことインデアン達は毎年、滝に住む雷神とその二人の息子達をなだめるためのお供え物としてカヌー1杯の獲物や果物を滝に流していました。それは、この惨事はきっと雷神の祟りだと考えたからです。でも止むことがないので、その程度のことでは満足していないからだろうと村一番の美しい娘をいけにえとして滝に流すようになりました。
毎年村の娘達の中から選ばれた『霧の乙女』はカヌーに乗せられ、獲物や果物と一緒に滝のしぶきの中に消えていきました。そんな悲しい努力を続けていたにもかかわらず、墓をあばかれる惨事はまだずっと続いていたのです。
ある年、酋長の娘レラワラが『霧の乙女』に選ばれました。酋長は娘がいけにえとして身支度させられるのをただ無表情に見つめていましたが、我が子がカヌーに盛ったお供え物と共に流されて行くのを見送ると自分もカヌーに乗ってその後に続きました。二つのカヌーは滝を落ちて行き、それっきり二度と人の目にふれることはありませんでした。

話はここで終わったのではありません。
伝えられるところによると、レラワラは滝壷に向かって落ちて行く途中、雷神の二人の息子達に受け止められました。この息子達二人はレラワラが来ることを知っていました。二人とも彼女に恋をしていたのです。
レラワラは自分が村人達を救うため、死出の旅に出されたのだということを思い出し条件を出しました。この条件に適った方をお受けしましょうと。もし、村人達の不幸の原因を知ることができたら、そして、その原因を知らせに一度村に戻ることが出来たら永遠にこの滝の裏側に住むことを約束しましょうと。
雷神の二人の息子達は秘密を守る誓いをたてていたので、それぞれ自分の良心と闘わなければなりませんでした。誓いを破ってレラワラを妻にするか、誓いを守って彼女を諦めるか二人は悩みました。
ついに弟の方が耐えられなくなって、川の底に横たわっている巨大な水蛇のことを話してしまいました。この大水蛇は年に一度空腹になるというのです。空腹になるとインデアン達が眠っている夜中に村に忍び寄り飲み水に毒を入れていたのです。その毒で死んだ者が埋葬されると、墓をあばいて遺骸をむさぼり食っていたのでした。

レラワラは魂の形で村に戻ることを許されました。そして村人達に大水蛇を退治する方法も伝えました。まず、水は泉の水しか飲まないこと、そして水蛇の現れる夜が来たら、ヤスや斧や弓矢などなんでも手持ちの武器を使って退治するようにと。村人達はレラワラに言われた通りにしました。大水蛇は瀕死の重傷を追い川辺リまで逃げおおせたのですが、滝の縁にひっかかってしまい川の底までは逃げることができませんでした。

インデアンの神様マニトゥは、インデアン達を助けて大水蛇の頭が滝の一方の端に、尻尾がもう一方の端に岩で押さえつけられるよう仕向けました。いまわのきわの苦しみにもがいたあげく、大水蛇はのた打ち回ってその体を歪めたので弓なりに反りかえり息絶えました。その形が馬蹄滝となって今も残っているのです。そして、滝のしぶきの中に『霧の乙女』レラワラの影を見かけることが今でもあるといいます。(ナイアガラに伝わる民話)