★ Serena ★

カナダ暮らしのエスペランチスト、自然愛好家。
エスペラントやカナダの野草、ネーチャークラブの活動など思いつくままに。

野生の生姜

2005-04-27 18:49:49 | 野の花 - 冬から春へ
あれから十日、私の企画で日系人に呼びかけたナイアガラ・グレンへの遠足の日です。
ずうっと芳しくない天気が続いていたので延期は出来ないかという声もありました。私の考えでは私たちは延期できても花は延期してくれないのです。それに、英語で言うGut feeling と言うのが有って天気は大丈夫と信じていましたから。
天気予報は最高15℃、曇りがちの晴れ、夕方から雨なのです。朝のうちは薄ら寒く曇っていて気温は7℃。九時頃から雨が降り出しました。小雨程度なら実行と決めてあったのですが、夕方の筈がもう来てしまったと恨めしい気がしなくも無いのです。それでも、私のGut feeling は大丈夫と言っていました。
駐車場の近くで旅行者風の日本人らしい若者が一人、水仙の花などを写真に撮っていました。もう少し近くて声の届く所にいたら、「一緒に来ない?」と声を掛けて上げられたのですが、彼は私の存在には気付いていないようでした。気付いていても「旅先で日本人なんかと関りあいたくない」タイプの人だったかもしれませんし、敢えてこちらから百メートルも二百メートルも歩いて行って声を掛けてあげようとも思いません。縁があればそういう機会と言うものは自然と起るものですから。
集まったのは私を含めて六人、内グレンは初めての人が三人です。
この程度の雨でも日本人なら傘をさすだろうなァと思いながら80段の階段を降りました。
下りた途端にほっこり暖かい空気を感じました。マイクロ・クライメト(局部的地域の気象)と呼ばれるここだけの特殊な気象の所以でしょう。いつの間にか小雨は止み、次第に空は青空に変わって太陽さえ輝き始めました。寒い寒いと重ね着してきた誰かさんは又それを脱ぐのにお忙し。
咲いている花々は、雪割り草は既に無く、ツノコマクサは見事に満開、野生の生姜も十日前より立派な花になっていましたが、思いがけなかったのは「赤い延齢草」でした。ダッファリン島では未だ固い蕾だったので、まだ早いと期待していなかった花、嬉しい驚きです。ここが東に向いて開いており、西側は絶壁で屏風の役目をしているための「マイクロ・クライメト」が功を奏しているわけでした。やがて白い延齢草(大花の延齢草、オンタリオ州の州花)もたくさん見つけました。
今回のおまけは「緑色の延齢草」です。もちろん異常な現象でいわば奇形児なのですが偶に起るのです。ほぼ満開で咲き誇っていたのはトラウト。リリー、「黄花の片栗」でした。それにスプリング・ビューティ(Spring beauty)、カット・リーフ・トゥースウォート(Cutleaf toothwort) も見つけました。これから日本名を探さなければならない草です。
残念ながら今回はカナダ・コマクサを見つけられませんでした。
2時間強歩いて戻り、ベンチは今日も使えなかったので、草の上でおしゃべりしながらピクニックの昼食を楽しみました。
初めての人も来て良かったと言ってくれたことはとても嬉しかったです。また違う季節に来ようと約束して分かれました。

今日は野生の生姜を紹介しましょう。

Wild Ginger (Asarum canadense)
葉の陰に隠れた根元に一つだけ目立たない色で花を咲かせるので、うっかり見落としていた花です。他の花のように鮮やかでもあでやかでもないこの花に何故か共感をおぼえます。「変った花ね」と言った人の気持ちも同じだったでしょう。
多年草で高さは精々30センチくらいまで。 葉は艶がありハート型で根元部分は柔らかな産毛に覆われてます。
三枚の花びらを持つ壷のような形をした花は直径が大きくても4センチくらいで、茶色を帯びた濃い紫色。早春から春遅くまで続き続けます。葉の根元に隠れたように咲き周囲の枯葉と同じような色で目立ち難く、時には赤っぽかったり緑っぽいものもあるようです。
肥沃な森林を好む北米原産のこの草は根によって繁殖するので、固まって生えていることが多いのです。花の無い時期でも一寸地面に指を入れ根元を引っかいてみると指に生姜の香りが付くので判断できます。
原住民は私たちが店で買った生姜を使うように、食べ物に香りをつけるのに使ったようですが、生姜とは無関係な植物です。悪くなった肉とか毒を含んだ食べ物を食べてしまったような時の毒消し、或いはそういう食べ物を食べたために起こったとされる"呪い"を解く目的などにも食べたのだそうです。疑わしい肉を食べてしまってから病気を防ぐために食べたという話は無数にあるのでその効果の程は証明されそうです。

薬用としてはお腹に溜まるガスなどの消化問題や痛みに貼るハップ剤として使われ、また乾燥した葉の粉末はくしゃみを促すのに用いられたそうですし、堕胎にはかなりな大量を服用したとか。発汗や解熱、喉の痛みや咳止めなどにも使われたのですが、この植物が微生物に対してある種の抵抗力を持っていることを考えると全く根拠が無いことではないでしょう。