★ Serena ★

カナダ暮らしのエスペランチスト、自然愛好家。
エスペラントやカナダの野草、ネーチャークラブの活動など思いつくままに。

可憐な花、サンギナリア・カナデンシス

2005-04-23 19:28:05 | 野の花 - 冬から春へ
Bloodroot (Sanguinaria canadensis)

葉っぱだけは良く見かけていた花です。花を見る機会が無かったのはザゼンソウと同じくらい早く咲く花で私が出歩く頃はとっくに花は終わっていたというわけでした。この花も雪を穿つもののひとつでしょう。名前を覚えたのも花の無い時でした。
アルゴンキン公園で、一緒についてきてくれた公園のナチュラリストが「こんなことはしちゃ駄目よ、僕は特別だけど」などと言いながらその赤い根っこを引き抜いて見せてくれたのでした。葉は蕗の葉に似ていますが、大きな刻みが5-9入っていて、直径は20センチ位、天に向かって平らに開いています。
花は白く、8枚の花びらは4枚が他の4枚より少し長めなので、円形というより正方形です。花の頃は葉っぱはまだ小さく茎に添って花を包むように半開きしています。その様子が袂を胸の前で合わせた少女を連想させるので、とても可憐です。私にもこんな時代があったのだ、という郷愁のような感情がフーッと胸を過ぎりました。
サンギナリア属にぞくす唯一の花なのだそうです。日本にはないということも聞きました。名前にカナデンシスと付いているのはカナダで初めて発見されたという意味だということも。
有るところにはふんだんに有るけれど、一般的に行って珍しい花なのだそうですから、その珍しい花を毎春見られる特権を与えられていることに感謝しなければならないし、出来るだけ多くの人に見せたいです。
生える場所は人出のあまり多くない山や丘なので、こちらから雪解けを待って出かけていかない限り見られません。でも、人は歩くのが億劫だとか、山道は苦手とか中々誘いに乗ってきません、不幸な人たちです。

ブラドルート(Blood/血 Root/根)と言う名はその赤い根の色から付けられたものですが、原住民は生地を染めたり身体に塗ったり、染料としても使いました。生地を染めた場合の仕上がりの色は赤っぽいオレンジ色で非常に堅牢なのだそうです。
かつてジェームスタゥンでは植民地人に原住民が女性を同衾者として提供したことがあったそうです。そのときの女性が身に纏うのはこの染料だけだったとか。疥癬とか皮疹の薬として利用されていたそうですが健康な皮膚に塗った場合はどうなるのでしょう。
原住民は万病の薬として、皮膚癌から咳止めにまで使っていましたがが、危険もあるので現在では薬草として使うことは避けるべしとのおふれが出ています。