
綺麗な野菊の花がいっぱい咲いていました

野菊の花を見て私はふと遠い幼い日の秋が蘇りました。
私は小学校5年までは小立岩という小さな山狭(やまはざ)の集落で暮らしていました。小学校の同級生は私を含めて男の子3人、女の子3人の6人でした。小立岩は私の大事な懐かしい古里です。
6年生になって父の仕事で平地の大きな学校に転校しました。心優しい40数人の同級生でした。担任の先生に紹介されて席に着き授業が終わって何気なくうしろの席の新しい級友を見渡しました。そしたら左側の女の子の列の一番後ろの席の女の子とふと目があいました。そしたらどういうわけかか妙に心がどきんとして顔が真っ赤になって慌てて前を向きました。初めての経験です。そのおかしな気持ちが恥ずかしくて誰にも気づかれないように女の子たちには決して近寄りませんでした。
秋になるとその頃は小学校の4.5.6年生は一日授業を休んで刈り終えた田圃の落ち穂拾いをしました。もちろん当時の稲刈りは鎌で刈り取って束ねるのです。ですから落穂は多くて結構たくさん集まって売ったお金で学校で使うゴムまりなどを購入していたのです。
移動性高気圧の秋空の下での落ち穂拾いは授業と違って楽しいものでした。男の子は男の子でまとまって女の子は女の子でまとまって落ち穂を拾うのです。でもみんなは1年から6年まで一緒の仲間ですからなんの分け隔てもなく自由に話し合えるのです。私は初めての仲間入りです。どうも女の子は苦手で顔が赤くなるのでその子のいる仲間には決して近寄りませんでした。でもちらりちらりとその子を見ると嬉しいような怖いような恥ずかしいようなおかしな気持ちになるのでした。そしてそれを人に気づかれないよう必死に気をつけていました。
小学校を卒業すると私は別な学校に進み当然何事もなくてその子たち級友とわかれました。遠く幼い日の秘めやかな思い出です。