迷宮映画館

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ユナイテッド93

2006年08月24日 | や行 映画
非常に複雑な映画を見た。あの『911』、世界に衝撃を与えた日。一生の不覚をとった私はとっとと寝て、あのニュース映像を見たのは翌朝。人間、ここまでのことがやれてしまうんだ、という大ショックを受けた。それと同時に、一体このあと世界は、アメリカは、どうなってしまうんだろう?との物凄い不安に襲われた。あれから5年、一体世界はどうなったか。

世界の警察を誇るアメリカは世界最強でなければならない。そう義務付けられて約50年ほど、アメリカはゆるぎなかった。世界各地に出かけていき、轟音のジェット機を飛ばし、ヘリコプターから機銃掃射をし、全てをナパーム弾で焼き尽くした。冷戦の中、直接の敵・ソ連とは戦火を交えず、代理にさまざまな国をやっつけた。この50年、アメリカはどんな国と映ったのだろうか、世界中の人々に。

イランという底知れない国の脅威を制圧するために、隣の国・イラクに猛然と武器を援助した。イラクはあっという間に軍事国家になった。石油をたっぷりと蓄えたサウジアラビアとは仲良くしなければならない。サウジを怒らせてはいけない。でも主導権を握られては元も子もない。サウジの実力者には目覚めてもらっては困る。

西アジア方面の石油はかなり先が見えてきた。新たに石油を見つけなければ、アメリカの繁栄の大きな躓きとなる。今までのアメリカの繁栄は、すべて石油がなければ成立しなかったものなのだから。世界を歪ませたのがアメリカだ!とはいわない。しかし、アメリカの至上主義がその原因の一端を握っているのは紛れもない。

そこでテロである。テロは絶対に許せない。交戦状態になり、そこで殺し合いをするのは致し方ない。戦争とは人を殺すものなのだから。しかし、テロの狙いは戦争とは無縁の市井の人たち。武器など持たない、戦う気など一切ない、ごく普通の毎日を慎ましやかに暮らす人たち。そんな人がターゲットのテロは何があっても許せないのだが、相手に底知れない恐怖を与えるには十分過ぎる。

私達はビルの崩壊を目の当たりにした。人間が越えてはいけないハードルを越えた瞬間を何億という人が見た。紛れもない事実を突きつけられた。何千という命が散った瞬間だ。しかし、あの瞬間を見て歓声をあげていた人々もいた。それがこの50年のアメリカが歩んだ道の結果だ。

あの瞬間、映像作家たちは何かをしなければならないという使命感を受け取ったはずだ。そして事実を掘り下げていく。これからも続々と同時多発テロの映画が公開されていく。それに対し、私達はまたあーだ、こーだと述べていく。私達がすべきことは事実を知り、どうしてこういうことになったかを理解し、何より大事なのは人の命なのだということを肝に銘じることではなかろうか。安易に人の命が散っていく毎日が続く世の中を送りながらそれを強く感じた。

映画からは作者の信念を見た。そして実際の管制官たちの苦悩と後悔ともどかしさが痛いほどに伝わってきた。ここはあの時小学生の楽しいお遊戯を見ていたブッシュ・ジュニアと、軍関係者に是非御出演願いたかった。

『ユナイテッド93』
監督 ポール・グリーングラス


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3 コメント

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sakuraiさんコメント&TB有難うございます (hide)
2006-08-26 10:43:08
『映画と秋葉原とネット小遣いと日記』のhideです

sakuraiさんコメント&TB有難うございます

>監督の手腕が遺憾なく発揮された秀作だったと思います。



全く同感です。5年しか立っていないので最初この映画化の報を聞いた時は訝しげに思いましたが。このような方法も有るのだと、目から鱗でした。

暴力&報復の連鎖は、これからもやむ事は無い感じが怖いです
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さまざまな (sakurai)
2006-08-26 20:46:02
取りざたがされてますが、紛れもなくあの機に乗っていた人の息吹が感じられました。

これから続々と同時多発テロの映画が撮られるでしょうが、良質なものを望みたいもんです。

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あたしは (miyu)
2008-08-09 23:41:20
当時派遣で働いていたのですが、
帰宅してそのニュースを見て本当に驚愕しました。
翌日実家にいる父親に電話をし、
世界がどうなってしまうんだろう?と不安に感じた
あの時のことは間違いなく日本に住んでいるあたし
でも感じたことでした。
なんかその感覚も薄れてしまっているのですが、
こういった映画を見るたびその感覚が蘇る思いがします。
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