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アイルトン・セナ ~音速の彼方へ

2011年01月11日 | あ行 外国映画
この世で、一番の無駄ではないかと思っているのが、カーレースだ。膨大な燃料をただ走るためだけに使い、数回周回するとゴミになってしまうタイヤ等々。まったく・・と思いながら、つい見入ってしまう。。

どこかで戒めながら、見ている自分を納得させていたのがセナだった。同じ年代で、若い時からその名をとどろかせていた。二枚目で、でも寂しげな表情がたまらなかった。期せずしてヒール役になってしまったプロストに対して、貴公子という名が、本当に似合っていた。

地球にやさしいなんて言葉はまだなかった。爆音を上げ、300キロを超えるハイパー・スピードで走るスポーツカー。その流線型のフォルムは、貧乏くさい現実を忘れさせるものだった。そしてハンドルを握るセナのなんとカッコイイこと。。。。

自分が大学を卒業するころから、徐々に名をあげ、常にさまざまなところで、その顔、名を目にし、耳にした。レースなどを見るつもりもなかったが、やはり見入ってしまう。

某テレビ局で毎週のように放映していたが、当地では放映がなし・・・。ただし、隣の県の仙台放送ならば入る。きれいな映像でなくても、文句なんか言わない。うちで仙台放送が入るのを知った友人から、毎週ビデオを撮ってくれと頼まれた。友人の家では、仙台放送が入らなかった。

録画が日常になっていたころ、娘が生まれた。読みにくい名前で苦労した私は、いわゆる変な名前は嫌だったが、亭主が強く主張したのが『セナ』!いやーー、悪くはないがセナっすか。。。。あまりにヒーローすぎて、とてもじゃないが、つける勇気はない。そんな名前をいただいて、どっしり娘だったら(当たりです・・)、セナに悪いやろ!!などとも思ったが、いかんせん役所に届けに行くのは動ける亭主。

絶対にやめてくれ!と頼んだ。さすがに私の要望の大仏(?)となったが、もしかしたら大仏の名前はセナになっていたかもしれない。。。恐ろしい。

その後も、まるでシャイロックを思わせるような風貌のプロストとのやり取りや、毎回のレースでの激しい順位争いから目が離せなかった。

そして94年4月。長男が生まれたのが4月14日。シーズンは始まったばかりだった。相変わらず録画は続いていたが、さすがに生まれる忙しさにかまけて、そんなのは二の次。で、長男が生まれた2週間後に祖父が亡くなった。

乳飲み子と娘と抱えて、葬式等々・・。忙しいことこの上ない時に、録画はしていた。セナの最後のレース・・・。

セナという名前を聞くと、自分のあの頃の忙しない日常が思いだされてしまう。そして、その後、F1を見ることはなくなった。セナがいなくなったF1は痛すぎた。レースからいいしれない魅力がかき消えてしまった。

まだ若いセナがヨーロッパのゴーカートレースに出て、こぼれんばかりの笑顔を見せている。お金も政治も何もない。ただ純粋に車を速く走らせること。このことが何より大事で、一番うれしいこと。これを素直に出来てた最高の時期。

そして、F1に参加するようになり、富と名声と重責を背負うようになっていく道のり。。。セナの顔からはちきれんばかりの笑顔が消え、重っ苦しい表情が覆うようになる。世界最高のカーレースを行い、世界最速の男には、ただ走る・・・ということだけでは足りない。いわゆる政治的なもんが加わる。

F1に車を提供するということがどれだけのことになるか!あの頃のホンダの売りは、とにかく≪F1の!≫だった。レースにかかわる膨大な人、労力、究極の速さに安全性、そこにきらびやかなスターが並ぶ。派手で華やかな世界は、なんだか遠い昔のことのように思えてしまった。

あまりに速く走りすぎた男は、神のもとにも速く行き過ぎてしまった。大きすぎる損失は取り返しがつかないが、あの事故のあと、死亡事故はないというテロップがせめてもの救いか・・・。

セナのたどった孤独な道のりを見ながら、やけに鮮明なあのころを思い出した。やっぱセナはカッコよかった。

◎◎◎◎

「アイルトン・セナ 音速の彼方へ」

監督 アシフ・カパディア
出演 アイルトン・セナ アラン・プロスト フランク・ウィリアムズ ロン・デニス ビビアーニ・セナ ミルトン・ダ・シルバ ネイジ・セナ ジャッキー・スチュワート シド・ワトキンス


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6 コメント

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Unknown (KLY)
2011-01-11 21:37:59
アイルトンは全てでした。
彼がいなくなったF1は喪失感しかなかったです。彼が愛したF1だけに、観ようかと何度も思ったのだけれども、失ったものはもう戻ってきませんでした。F1が好きだったんじゃなくて、アイルトンがいたF1が好きだったんだろうな…。
ビデオ、私も某局で始って以来必ず撮ってました。最後のテープはこの作品にも入っていた三宅アナと川井ちゃんと今宮さんの半泣きのリポート。あれから16年ですか。テープはもちろん観てません。
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セナ、F1ではなくセナ (書記長社労士)
2011-01-11 23:09:32
F1を語る以前に、思い出す前提にセナなんですよね。

20世紀のほんとに大きなアイコンのひとりです。

しかし、命名セナ、いいやん!
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こんばんは♪ (kira)
2011-01-12 00:18:29
そういえば子供の「瀬名」「瀬奈」といった名前が話題になった年がありましたね。
ウチの夫はプロスト派でしたので、sakurai家であった問答が羨ましいぐらいです(笑)

これは昨年の特別賞に、とも思いましたが、
内容的にも映像的にも新しいものが入っていなかったので、
加えませんでした。

最後のレース、観ていました。凍りつきました。
中嶋が去り、セナがいなくなり、急速にF1熱は冷めていきましたね・・。
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>書記長労務士さま (sakurai)
2011-01-12 10:52:30
セナありき・・でしたもんね。
ああいう若き命を散らした天才というのは、よっぽど神に魅入られたか、何か別の作用があったのでは・・と思います。
あのときの不安げな表情が焼きついてます。

いや。。。セナにしなくてつくづく良かった。
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http://twitter.com/CINEMATIGER (カムランド)
2011-01-12 23:30:54
主人公はルックスがよくて、フレーズも切れるし、敵は悪人顔で政治力も強い、
あのエンディングまで、彼の人生はドラマの様です。

あけおめ、ことよろです
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>カムランドさま (sakurai)
2011-01-13 20:07:45
今度のHNはこれですか?
今年もどうぞよろしく。

セナの人生を見つめながら、同時期に生きてた自分の人生を思い出すという変な一体感を感じました。
やっぱプロストは、女性陣にはいまいちだったわ。

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