迷宮映画館

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ピロスマニ

2009年12月16日 | ロシア映画シリーズ
相変わらず、ロシアの文学にも、芸術分野にも、一切造詣のないワタクシです。
ピロスマニという画家も、まったく知りませんでした。
いやいや、まだまだ世の中には、知らないことばっかりで、いくら生きても、とんと足りない・・・。反省しきりです。

さて、このピロスマニという画家は、放浪の画家と言われる19世紀末から、20世紀初頭を生きた、グルジアの画家だが、どんなふうに生きたのか、詳細は伝わっていない。

独特のタッチで、動物や街の様子、お祭りに興じる人々。それらをリアルではなく、あったかみのある絵柄で、本人が趣くままに書いていた。

商売をしても成り立たない。自分が書きたいと思って書いたものが、意に反して利用されたり、あるいは強制的に書かされたりする。そして、最後はぼろきれのように亡くなってしまう・・・という、人生を振り返る限り、やりきれない生き方だったような気にもなる。

どう表現したらいいのかうまく言えないが、芸術家、特に絵描きさんは、自分の中から沸き起こる『絵を描きたい』というものすごい欲求、あるいは絵を描くこと自体が生きること・・・のように絵筆を動かしているのではないかと思う。

それができることが生きている証になるのだろうが、それで生きていければ問題はないのだが、世の中そう甘くはない。

たぶん、生きるのがものすごく下手。世事に疎く、はたで見ているとじれったいくらいに不器用なのが、彼の人生だったのだろう。



映画は、彼の描いた絵が、そのままの背景になったように写しだされ、その一枚の絵の中から人が動き出し、物語が動く。非常に静かで、これと言った劇的なストーリーもない。それこそ、彼の絵をじっくりと見せるような映画だった。

一週間の終わり、ちょいと疲れた身には、癒しと言うか、ゆったりと言うか、・・・簡単に言うと、眠くなるモンで、それに抗わないことにした。ほよよーーんと、流れる絵に身をゆだねた次第。

さて、いつものように解説をお聞きするのが楽しみなのだが、今回はグルジア映画ということで、作られたときにグルジア語版と、ロシア語版と両方あったそうな。「スパシーバ!」とか言ってたので、ロシア語だとわかったが、ソ連時代に作られた名残だ。

今回の話で「なるほど!」と思ったのが、社会主義体制の中で作成されたために、儲けを一切考えることなく、とにかく徹底的に作ったと言うこと。売るためではない。売れなくてもいい。採算度外視で作れるなんて、作る方からしたら憧れだ。

そうやって作ったリアリズムの徹底ぶりが見れるのが、このロシア文学館シリーズになると思うと、なんかすげーーと思ってしまった。

そのリアリズムの徹底ぶりの話の中で、面白かったのを一つ。ロシアにカザン大学というのがあるが、そこに在学した有名人に、レーニンとトルストイがいるそうな。で、われわれは、レーニンと言えば、あの禿げ上がった頭の彼を思い浮かべるが、この大学にある像は、髪が豊かなのだそうだ。

在学中は、髪があるときだったから、作る胸像もそれに忠実に作ってあるのだとか。なるほど。

「ピロスマニ」

監督 ゲオルギー・シェンゲラーヤ
出演 アフタンジル・ワラジ アッラ・ミンチン ニーノ・セトゥリーゼ


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