ロサンゼルス・タイムスのコラムニスト、スティーブ・ロぺスと、孤高のチェリスト、ナサニエル・エアーズの奇妙な出会いが、ひとつの世界を作り出した。
どのくらいの頻度でコラムを書くのかはわからないが、彼にとっては何でもネタになりうる可能性があり、とにかく常にいろんなものに目を配り、これぞ思ったら、ハイエナのように喰いつくことだろう。
そして見つけたのがホームレスの音楽家。ぼろぼろの弦も足りないバイオリンを弾いているが、もしこれが本当に自身がいうようにジュリアード音楽院を出たのなら、ものすごいネタになる。
ナサニエル・エアーズ。やはりジュリアードに在学していた。なぜに彼はホームレスになってしまったのか・・・?
その事実を追う事は、はじめは単なるネタのひとつに過ぎないと、軽い気持ちだったのか。彼には壁があり、人を遠ざけ、寄せつけない。それでも彼を追い、時に裏切られ、時に頼りにされる。しかし、彼の人生を追っているうちに、いつの間にやら己の人生が見えてくる。
コラムの読者から送られたチェロを手にしたときのナサニエルの表情は、長い間分かれていた最愛の恋人と再会したかのような幸せな顔だ。ドキドキしながら、大事そうに、でも一度手にしたからには、二度と離したくないとでも言うかのように、凝視する。
彼にチェロを持たせてどうなるか?ロペスにもわからない。もしかしたらものすごいサクセスストーリーになるかもしれないし、めちゃめちゃな話で終わるかもしれない。
これが物語だったら、適度に失敗して最後は劇的な展開から栄光をつかむ!!ということになりそうだが、そこは現実、そううまくはいかない。現実は厳しく、まざまざと世の中の厳しさと、うまいことは行かない人生を味わう。
それはまるで、庭を荒らすアライグマに翻弄される自分のようだ。
しかし、物語はそこでは終わらない。それが現実だ。ナサニエルは、自分の現状を受け入れ、年齢を自覚し、これからも何とか自分と折り合いをつけて、生きていかなければならない。答えは見つからないし、これがいい・・・と言うのもわからない。でも、人は己の道を歩んでいかなければならない、と言うことが見えた。
ただ、彼には音楽がある。それは何より強いよりどころだ。
もうひとつ、この映画で表されたのがロスのホームレスの姿。エンドで、現在ロスには9万人のホームレスがいると書かれていたが、去年のリーマンショックを経て、さらにその数は増えたと想像する。
その現実は容赦なく厳しいが、オブラートに包むこともなく、ストレートに描いていた。そこは監督がアメリカ人でないことが作用していたように思う。
『ミリキタニの猫』とどこか似たような展開だ。芸術家のホームレスとなぜかかかわりになった人物との交流。通り過ぎただけなら何も生まれなかったのだが、人との出会いが、何かに作用して、別の世界を作り出す。その妙があった。
なんだかんだ述べたが、この映画の一番の見所、いや聞き所は、各所にちりばめられた音楽。最後にナサニエルが幸せそうに聞いていたベートーベンにはぐっと来た。
◎◎◎○
『路上のソリスト』
監督 ジョー・ライト
出演 ジェイミー・フォックス ロバート・ダウニーJr. キャサリン・キーナー トム・ホランダー リサ・ゲイ・ハミルトン
追記
10月5日(月)19:30~、カフェ・フォーラムにて、『路上のソリスト』公開記念、チェリスト増川大輔さんのコンサートを行います。
増川さんは、『おくりびと』の本木さんにチェロの指導をしたことでも有名。
その演奏をじかに聴くことが出来ます。
前売り券はワンドリンクつきで¥1500です。
どうぞおいでくださいませ。
券ほしい!と言う方は、ココに書き込んでもらってもかまいませんので、どうぞよろしく。
どのくらいの頻度でコラムを書くのかはわからないが、彼にとっては何でもネタになりうる可能性があり、とにかく常にいろんなものに目を配り、これぞ思ったら、ハイエナのように喰いつくことだろう。
そして見つけたのがホームレスの音楽家。ぼろぼろの弦も足りないバイオリンを弾いているが、もしこれが本当に自身がいうようにジュリアード音楽院を出たのなら、ものすごいネタになる。
ナサニエル・エアーズ。やはりジュリアードに在学していた。なぜに彼はホームレスになってしまったのか・・・?
その事実を追う事は、はじめは単なるネタのひとつに過ぎないと、軽い気持ちだったのか。彼には壁があり、人を遠ざけ、寄せつけない。それでも彼を追い、時に裏切られ、時に頼りにされる。しかし、彼の人生を追っているうちに、いつの間にやら己の人生が見えてくる。
コラムの読者から送られたチェロを手にしたときのナサニエルの表情は、長い間分かれていた最愛の恋人と再会したかのような幸せな顔だ。ドキドキしながら、大事そうに、でも一度手にしたからには、二度と離したくないとでも言うかのように、凝視する。
彼にチェロを持たせてどうなるか?ロペスにもわからない。もしかしたらものすごいサクセスストーリーになるかもしれないし、めちゃめちゃな話で終わるかもしれない。
これが物語だったら、適度に失敗して最後は劇的な展開から栄光をつかむ!!ということになりそうだが、そこは現実、そううまくはいかない。現実は厳しく、まざまざと世の中の厳しさと、うまいことは行かない人生を味わう。
それはまるで、庭を荒らすアライグマに翻弄される自分のようだ。
しかし、物語はそこでは終わらない。それが現実だ。ナサニエルは、自分の現状を受け入れ、年齢を自覚し、これからも何とか自分と折り合いをつけて、生きていかなければならない。答えは見つからないし、これがいい・・・と言うのもわからない。でも、人は己の道を歩んでいかなければならない、と言うことが見えた。
ただ、彼には音楽がある。それは何より強いよりどころだ。
もうひとつ、この映画で表されたのがロスのホームレスの姿。エンドで、現在ロスには9万人のホームレスがいると書かれていたが、去年のリーマンショックを経て、さらにその数は増えたと想像する。
その現実は容赦なく厳しいが、オブラートに包むこともなく、ストレートに描いていた。そこは監督がアメリカ人でないことが作用していたように思う。
『ミリキタニの猫』とどこか似たような展開だ。芸術家のホームレスとなぜかかかわりになった人物との交流。通り過ぎただけなら何も生まれなかったのだが、人との出会いが、何かに作用して、別の世界を作り出す。その妙があった。
なんだかんだ述べたが、この映画の一番の見所、いや聞き所は、各所にちりばめられた音楽。最後にナサニエルが幸せそうに聞いていたベートーベンにはぐっと来た。
◎◎◎○
『路上のソリスト』
監督 ジョー・ライト
出演 ジェイミー・フォックス ロバート・ダウニーJr. キャサリン・キーナー トム・ホランダー リサ・ゲイ・ハミルトン
追記
10月5日(月)19:30~、カフェ・フォーラムにて、『路上のソリスト』公開記念、チェリスト増川大輔さんのコンサートを行います。
増川さんは、『おくりびと』の本木さんにチェロの指導をしたことでも有名。
その演奏をじかに聴くことが出来ます。
前売り券はワンドリンクつきで¥1500です。
どうぞおいでくださいませ。
券ほしい!と言う方は、ココに書き込んでもらってもかまいませんので、どうぞよろしく。
わたしも期待ほどのものじゃなかったなあというのが、率直な感想だったのですが、実在の人物だし、気を使わなければならない病気も抱えてるし、あんまりストレートに描くのも難しいのかもしれませんね。
アライグマと尿には、そんなに深い意味はないような気がします。
この作品は観た時の体調やら、期待しすぎていた部分やらあって…あんまり高評価には至らなかったんですよね。
もう一回レンタルでもしてみようかなぁ…そうすればアライグマと尿の秘密も読み解けるかもしれません。
では、また来させていただきます。今後とも宜しくお願いいたします。
どうぞどうぞ、ごゆっくり。
とても素敵でした。
音がものすごく響いて、浸れました。
と思ったら、またまた小学校の音楽会でも、聞けまして、とっても得した気分。
「ミリキタニの猫」は、絵の才能あふれる日本人のホームレスのおじいさんが、彼を助けてくれた女性と出会って、人生がどんどん変わって行くというドキュメンタリーです。
いい映画ですので、ぜひどうぞ。
ちょっとバタバタしていて遅くなってしまい、すいませんでした。
チェロのコンサート、いいなぁ~!!間近で聞いたことがないので、そういう経験をぜひしてみたいです。
ミリキタニの猫っていう作品は未見なのですが、そちらも見てみたくなりました。
芸術家って、逆に凡人だとなれなかったりするのかな・・・って思う処もあるものの、精神的な病気で日常生活が普通に送れなくなってしまう程の度合いだと辛いですね・・。
いいコンサートでした。チェロを生で聴く機会ってあんまりないんで、とてもいい経験でした。
あの俯瞰は、客観的に見てる・・の象徴のようにも見えました。
淡々と描かれたこの映画、結構好きでした。sakuraiさんも俯瞰の映像が印象的と感じられたようで、なんだか嬉しくなりました。
TBさせていただきました。
一概には当然言えないし、こっちがよかれと思っても、まったくもって逆だったり、なかなか難しい・・ということが映画の表し方にも出ていたように感じました。
チェロコンサートもなかなか素敵でした。
お次は『モアリズム』ですが、あの西川美和監督です。
またまたコメント遅くなりました!
う~んこの病気の方は日本でもかなり
増えているようです。色々な症状が
あるので、難しですね。
ナサニエルのことを良く理解しないと
ロペスの二の舞いなんでしょうね。
興味本位や下手に親切するのはヤバイ
かも・・・・。その辺はあまり描かれて
いるように感じないので微妙かもです。
チェロ・コンサートですか!
sakuraiさんもパワフルですね。
西川監督って「ディア・ドクター」の
西川美和監督??
あんなもんでしょう。
事実をそのまま描こうとした・・・なんて話らしいので、あえて感動作にしようとした、ということではないのかと思います。
でも、音楽はよかったです。
ぜひ、おいでくださいませ。
お待ちしております。
西川監督お墨付きですから。
彼らのコンサートに、ふらっと来られることもあるそうです。
来てくれないかな・・・・と期待してるんですがね。
もっと感動する映画なのかと期待していたのですが、いまいちでした。
一番館結構混んでいて、いちばん前で少々寝込んでしまって少しイビキをかいていたようです(汗・笑・ゴメン)。
やっぱり実話ですから、感動作に作り上げることはできなくて、淡々と描くほかはなかったのでしょうねえ。
期待が大きかっただけに、落差が大きく残念でした。
コンサート、両方行きますが・・・、
10日の方が期待大!です。担当桜井ですからね。楽しみです。
なかなかデリケートな素材なので、描くのも難しそうなのですが、監督の異邦人としての立場がいい具合に作用したように思えました。
どうです?はるばる山形まで。
第一回目のコンサートなんで、格安です。
ものすごく近くで聞ける思うんで、楽しみです。
ネタのためなら、どんなことでも・・・みたいなんでしょうね、実際。
で、救いを与えてやれるんだ・・・という自己満足もつぶされてしまった。
そんな事実をことさら感動作にするわけでもなく、淡々と描いたということでいいのでは、と思います。
これはそうゆうところがなかったですものね~。
ところで追記の生演奏1500円とはお買い得っすね~!
もちろんあたしは行けませんが、たくさんの方が来られて
盛り上がるといいですね♪
とにかくロペスの上から目線が凄く気になって
しまいまして。偽善者にみえました…。
で、それに対する救いがないままに、いきなり
友人だといわれても何か釈然としなく。
実話ベースだということですが、事実は小説よ
り奇ではなかったということなのかなぁと。